身体の一部がパソコンかアモンならいいのに

 パソコンの調子が悪い、というか壊れたかと思った。一応今は使えているが、これ以上酷使するといつ駄目になるかは分からない。でも新しいのを買うのは当然として修理に出すのも様々な意味で厳しい。

 自分がいかにパソコンに依存した生活をしていたのかを思い知らされた。毎日十数時間つけっぱなし動かしっぱなしだもんな、だめだこりゃ

 数日、パソコンを控えると、少し頭に余裕が出来たような、そんな気分になった。情報を垂れ流しにするのではなく、怖くたって、いつだって立ち止まることが大切なのだと、改めて思い知らされる。

 ってことは、この習慣も中断した方がいいかもしれない、のだが映画を見る。中でも、というか鉄板ネタとして予想はしていたのだが、やはり素晴らしかった、谷崎原作(未読ですけど)で市川崑監督『細雪』。四姉妹を始めとした役者が名演揃いで、特に長女役の岸恵子の演技がすごい。因習に囚われながらもどこかかろやかで本当に微かな色気を出すたたずまいは「いけず」なお人だった。

 因習に囚われる人々の中のさらにそこにある階層関係に諧謔や嫌味を込めつつも美しく切なく織り上げていく作品の作りは正に日本映画の王道といってもいいものだと感じられた。映像も金かかっている感じで豪華が。ただ、音楽が、そして音質も悪いのはどうにかならなかったのだろうか。そこは残念。

 あと吉田喜重の『情炎』が。

 この監督は美しい、スタイリッシュで、いちいち画面の構図が決まっているのはとても素晴らしいのだが、一方で台詞があまりにも駄目というか、単純に言葉が古びているという問題ではなく、通俗小説がちょっと文学的表現を使ってみましたよみたいな応酬がかなりきつかった。それに引っ張られて、せっかくの美しい映像がちょっとクドク感じられたり映像の遊びというか一息つくコマがなくずっと気のきいたシーンとお寒い台詞の繰り返し(この話自体が単純な筋なので余計)に思えてしまったり。でもそこが気にならないならとても美しい映画だ多分。多分、またこんど他の映画を見ることになるだろう。

 今更だが、というかまあそんなの山ほどあるけど、先日デビルマンを読んでかなりおもしろかった。スゲー熱い、わくわくする漫画だった。有名策だし、ネタばれ書くのもどうかと思うので内容は置いておいて、なんか俺、ああいうヒーローが好きだ。

 主人公の不動明はちょっとラリった感じの熱血キャラで、今はあまりこういうキャラっていないというか、あんまり流行りじゃないとか好かれていないのだろうか。色々細分化が進んでいるからダークヒーローや狂気のキャラクターとかはそこそこ出ていると思うが、不動明みたいなダークヒーローと熱血バカのいいとこどりみたいなキャラって結構少ないと思う。

 デビルマン関連書籍はかなり出ていて、面倒で楽しい事が増えたのだが、その中の一冊で、永井豪についての(本人はそこにいない)座談会を行っており、そのメンツが寺田克也、韮澤靖、雨宮慶太とかなり豪華で(彼ら以外にも有名人が多数コメントしているけど)、中でも寺田克也の意見がおもしろかった。寺田克也ってちょこちょこインタビューとかやったりするんだけど、面白い発言が多い。それはきっと、彼がラクガキング、画について、描くことについてすごくこだわっていて、真剣に、ずっと取り組んでいるのが発言の中でも見えてくるからだろ思う。

 個人的には永井はデッサン力とかはないけれど、という話の流れで、

「子どもの頃から大人の価値観に毒されていって、リアルな絵がよかったりするじゃないですか。こっちが上とか、わけわからないのに言ったりして。ところが、そうじゃない、割り切れないものを見て混乱した感じが、僕が見る永井さんの絵にはずっとあって」

 と発言しているのは俺もなるほどなあと感じた。確かに絵のうまい人ではないと思うのだが、勢いはすごい。そこらの人じゃあ真似できないというかこのテンションの漫画は描けないと思う。

 それと永井豪の絵というか漫画でいいのが、キャラクターが色っぽいけれどいやらしくはないところで、永井自身が自分はノーマルな人間だと言っているのも関係しているかもしれない。男や女の裸や身体がぐちゃぐちゃになるものを描いてもどこかカラリとしていて、フェティッシュにこだわるというより痛みや業を背負うということに関して、とても敏感な人なのかなという印象を受けた

 そういえば手塚は色っぽさとは無縁というか、劇画とかの台頭にかなり頭を悩ませていたそうだが、最近再び読んだ『ルートヴィヒB』や『ネオ・ファウスト』とか先が気になるのが未完なのは残念だ。手塚って未完の作品が結構あったはずだが、あれだけ描いてるからしょうがないってことなのだろうか。

 あと対談でうけたのが、最後にエールをという編集の言葉に最初は仏のようだとか偉ぶらないとか褒めていたのに、

「壊して欲しい」
「不幸になればできる」
「とりあえず美人の奥さんと別れて(笑)」
「会社つぶれて借金にまみれて。そういうときの漫画を読みたいです。いや、俺は永井さんの本質っていうのはそういうところにあると思っていて、心の叫びなんです。叫ぶ漫画を読みたい(寺田)」

 という話の流れが良かった。あくまでリスペクトがあっての発言で、怒りとかって、やっぱすごい大切だ。疑問がなくて生きているなんて信じられないと思う俺は、そういう性格なんだ。

 でも「地獄に落ちろ 人間ども!」とか言えないし今もパソコンが厭な音を立ててとても厭な感じなので、ファッキンパソコンの気分で、もう少し、ファッキンにお付き合い願うパソコン。