ムムムムーンサイドの君へ

 何だか久しぶりに学生さんですか、とか言われることが二、三度あり、というか俺は声がガキっぽいし、短気なくせにそういうのは顔に出さないでへらへらしているし初対面の人にはかなり阿呆に見えるのかなとも思う。

 高校一年の時に初めて美容室に行ったときに、住んでいる場所を聞かれて、それにこたえると「いいとこ住んでるじゃないですかーキャバクら行ってもてますよー」とか言われて、

「あ、はい。高校一年です…」とか言って多少気まずい空気になった。

 十代のころはタッパがある(しかも長髪でブリーチとかしてた)せいか、よく二十代、酷い時には三十代にみられることすらあったのだが、ここ数年はわりかし若く見られるというか、単に俺のガキっぽさがダレダレニなっているだけなのかもしれない


 今日、初対面の年下の人と同じ人と仕事をしていると、向こうから自分のことを色々話しかけてきて、俺も最低限返答をしていると、

「来年三十でこんな仕事していて大丈夫なんですか?(彼は学校に入りなおし、就職に前向きらしかった。)」

 と初対面の人から言われて、カルチャーショックだった笑。

一応「初対面の人にあんまりそういうことを言わない方がいいよ。」「自由な時間がほしいし、正社員になりたいと思ったことは一度もないよ」と半笑いで言っておいたのだが(相手に、悪趣味ではあるが、悪意は感じなかったから)そのあと「大学は出たんですか」「どこの大学ですか」と変な質問をされててしまって。てきとうにはぐらかし、微妙な空気に。いやー普段こういう人と友達になったりしないので、新鮮だった笑。

 どうやら彼は正社員とか生涯賃金とかそういうのを大事にしているらしかった。いや、別に俺も金が嫌いではないけれど笑。むしろ、金がねーし、もういいや、みたいにもなる時あるけれど笑。でも、好きなことがあるとかそういうのがとても幸福だと思うから。その為に、時間を割くべきだと思っているから。


 最近「あなたのプロフィールを見て興味がわきました。 今ハマっていることはなんですか」

 と知らない人からメッセージがきた。意識高い系(笑)で仕事をしている感じだった。俺のことを微塵も興味がないというか接点がない感じで面白かった。

 数年前にもこういうメッセージをもらったことがあったのだが、こういう人は(有料)セミナーか何かの勧誘がしたいのだろうか。被害にあわれた方からの報告が聞きたい。お金もうけや社会的成功が絶対だと信じているのだろうな、というのは感じるのだけれど。

 会社員のひとに対して嫌悪とかがあるはずもないのだが、どちらかといえばその日暮らし、いや、日々楽しそうにしている感じの、楽しもうとしている感じの人が好きだ。どういった職についている、いないにせよ、自分が損をしないようにとか自分さえよければ他人のことはどうでもいい(つまりそれが善良ということだ)そんなのばかりの人は単純にカッコ悪いというか、友達になれないし、無理に話すことはないなと思う。

 それぞれに価値観があるのだ。俺は好きなひとや場所に時間を費やしたいと思うし、他の人だってそうすればいいと思う。俺は自分の価値観が絶対だなんて思っていないから、自分が誰かにとって全く無価値でも(基本的には)平気だ。最低限の礼儀さえあれば。

 色々な人にとって、色んな事が無価値であったり、(一時的に)輝かしかったりするのは、とても刺激的ではないだろうか?

 

 中学生までだろうか、俺はアニメを見る子だった。特に好きというわけではなかったのかもしれないが、テレビを割とみていたし、習慣だったのかもしれない。特に理由があるわけではないのだが、高校に入るころか、ほとんど見なくなってしまった。

 二十代の半ばだろうか、見ようかなという気になって、年に数本だが、アニメを見るようになってきた。アニメは全話見るのに十数時間かかったりするので、短気で飽き症な俺には結構なことだった。ゲームなら一応ボタンを押すことができる、介入、参加することができるのに、アニメはだれかの物語だった。誰かの、しかもどちらかといえば俺とは違う世界の「価値観の世界の」物語。

 好きなヒーロー、というのは結構いるというか、俺は簡単に好きになるけれど、そこまではまったりしない。多少の誤解をおそれずに言うが、アニメキャラにアイドルにハマル、没入する、多額の金銭を払うというのは、要するに自己愛の問題なのかなと思う。
 
 自己愛が悪いのでも(アガペーではなく笑)エロスが悪いのでもない。でも、それよりも好きなことが沢山あるということだ。

 ぼんやりと音楽を聴いているとき、本を読みながらふと、その文章に刺激を受けて物思いにふける時、そんな抜け出す感じが好きだ。別の生を受ける、かのような。

 飽き症というのが悪いとは思えない。のだけれど、大切な物は大切に。

 日々さようなら、もおー久しぶり(会ったことないが)というのは大切なことだと。