君は花園の犠牲者

春疾風で桜がちらほらと葉桜に成り代わっていて、満開の桜も圧巻ではあるが、こういう散り際の桜や、側溝に溜められ捨てられる花びらたちや、東京の淀んだ川の上を滑っていく花筏もとても好きだ。

 散り際、今わの際、という言葉も結構好みで、

 そういえば先日新宿で、坊主頭の欧米人が頭に日の丸の鉢巻をしていておまけに「神風」と書かれていて(渋谷のセンターがいに売っている…)
「それお前の国に突っ込んだ日本兵じゃね?」と思ってマジうけた。散り際? 違うか

 でも、こういう間抜けな外国人はとても好きだ。サムライニンジャ日本バンザイ。 漢字タトゥーが流行っていて、 侍、的なタトゥーを入れているつもりで「浪人生」というタトゥーを誇らしげに見せている外国人とかマジうけた。日本の英語プリントシャツみたいなノリでしょうか…

 六本木のサントリー美術館で行われている『若冲と蕪村展』に行く。日本画の展示を見に行くのは久しぶりだなーと思いながら好きな二人だし期待して向かったのだが、とても満足のできる素晴らしい展示だった。

 若冲は数年前からか色んなメディアでひっぱりだこというか、色々登場しているのだが、それは彼の画がイラストレーション的にもとてもポップで、雑誌の表紙にしても何の違和感も無いほどのクオリティがあるからのように思える。大胆でそれでいて、それでありながらも余白もある画面作りはカラヴァツジオを想起させる。というか、単に俺の好みだからだけど。

 彼の画を見て楽しいのは彼が動物や植物をとても愛していたのだなあと伝わってくるからで、大きくデフォルメされた動物や野菜のユーモラスな形状も、原色が美しい派手で写実的な画風も併せ持つバランス感覚の良さや、画風の広さも頼もしい。

 一方で蕪村の画は対照的であるかもしれないが、中国、朝鮮の画から影響をうけたらしい、虎の画はとても好みだ。センテンタイセイ、孫悟空のような趣すら感じられる。特に良かったのが、鹿の屏風画で、背景の山水画的な荒々しさと鹿の毛並みも感じられる柔らかい筆致との対比がとても美しかった。

 それと銀箔の上に書かれている山水画がとても美しかった。美しい状態で現存しているのも素晴らしいが、多少地味ともいえなくもない山水画が、銀箔で鈍く光っている様は、その大きさも相まって十分な迫力や、儚さも感じられるものだった。

 二人の展示もどちらも素晴らしく、見に来てよかったなーと素直に思えた。行くまでは3度寝の後で、結構ぐずぐずしていきたくねー見たいなテンションだったのだが、やっぱり外に出てなんぼだなーと思う。

 paris matchミズノマリが歌ってキリンジ堀込高樹が作詞作曲というすごく素敵なポップソング「春の嵐」を想起する


 街を歩きながら、素敵なポップソングを聴くと、なんだかどこまでも歩いていけるような気がしてくるのだ。それは素敵な、魔法のようなつかの間の出来事で、そういう出来事があると季節や様々な物事の移り変わりも軽々と歩いて行けるような気がして。