チョコレートダイアモンドはお好き?

足を怪我してしまって、悪化させるのもいけないし単純にいつもよりも疲れてしまうからと、外に出るのが億劫になってしまう。

 でも出ないわけにはいけないこともあるわけで、外出すると足に血がたまり、しょうがないから自分で針で血を抜いていたのだが、三回もそんなことをしているとさすがに「これまずいかも」と再度病院に。

 自分で針を刺して血を抜く、って字面では楽しそうだけど(そうか? 実際は楽しさと微妙な不安感が混じった気持ちになる。俺の右足ー大丈夫かよ〜みたいな。まあ、化膿止めとか飲んでるから大丈夫か、とか楽観視していて。

 で、病院に行く途中に、というかいつも一人で外出する時はipodで音楽を聞いているのだが、突然右側からだけ聞こえなくなった。買ったばかりのイヤホンが壊れたのかよと嫌な気分になったけど、仕方なく新品のイヤホンを買った。でも、やはり右側だけ聞こえない。

 右足を怪我して、ipodも右側だけきこえない。
 てか、俺がもってるのは ipod classic 160GBで、販売終わったから、プレミア価格になってしまっていて、気軽に買えないのだ。

 病院帰りにブルーな気分で、コンビニでチョコレートアイスを四個買って、歩きながら全て食べた。


 で、家に帰って調べてみると、クラシックだけ、アップル修理料金三万五千円也!!! なんで修理代金が他の奴の何倍もするんやー 本体オクで買えるやんけー

 てか三万五千とか、俺の魂四個分やん。俺、今世紀で買えないよ。死のうと思いました。でも調べたら、一日で治るし、6000円でしてくれるipod修理業者がありました。
六千円くらいなら心臓売れば手に入るので、腹をくくることにしました。

 マジ満足に金稼げないのに、金がどんどん出ていくなー とか思いながらも、さすがにipodは生活必需品なので、しゃーない。俺の身体も、生活必需品なので。しゃーない。

 それにしても、俺の傷だらけのipod,八年くらい酷使していたのだから、逆に今までよく元気だったなあと思うべきかもと思った。

 イヤホンをしないで街を歩くと、色んな音が聞こえてくる。それにはっとすることもあるけれど、俺にとっては音楽がとても大切なもので、なくなってしまったら、一人ではいられないかもしれない。

 『百年結晶目録』という漫画を買って読んだ。本の帯には砂漠のダイアモンドと呼ばれた功績を食べる、虹の瞳を持った人 と書かれていた。

 宝石、鉱石を探す研究科の男が、普通の人なら入らない洞窟で不思議な青年と出会い、その青年は鉱石を食べることで命を維持していた。青年は瀕死状態で、また、常識が一般人とは少しずれているようだ。彼に興味を持った研究科は、鉱石の「匂い」で位置がわかる男性にともに旅に出ようと提案をする

 というような出だしで、物語は淡々と進む。

 研究科の献身的な態度で、隠れ潜んで生きていた青年が旅とともに少しずつ普通の生活に触れていく。しかし青年は金になる種族で、さらわれてしまい…

 といったような筋だが、かなり物語は穏やかな起伏で、少し物足りない反面、丁寧に書かれたこのっ物語の中に引き込まれる。

 それにしても美しい物を、石ころだけを食べて生活ができる、生活をしなければならなんて、とてもロマンチックなことだと思う。 鳩山郁子も似たような題材を扱っていたように思う。たまたまかもしれないが、女性作家にとっての「青年」というものが硬質な、鉱物のような存在としてそんざいするのは、なんだかわかる気がする。

 でも、実際の「青年」といえば、金井美恵子が「少女というのは男か老女の妄想の中にのみ存在する」というようなことをいっていたかと思うが、「侵されることのない青年」というのもまた、似たような存在のように思う。

 或いは、一瞬の、脆い少年少女を、誰かは持っていて、たまに、それらが身体の中から光りだすのかもしれない。

 少し前に見たウィリアム・クラインの映画のセリフを思い出した。『イン&アウトオブ・ファッション』という自伝映画で、モデルの一人が独白する

美しさとはすごく不公平なもの

それは

まさに不公平なの

わたしは得しているけど


 すごくキュートで、虚しいセリフで、気に入っている。モデルの賞味期限は短く、美しさも移ろう。でも、フォトジェニックな、カメラの前の彼女は確かに美しいし、これからも、きっと、そこそこ、そうなのかなと思う。

 外面の美しさも、精神性の美しさも、どちらも素敵なもので、また、絶対のものではない。なんだかんだで代わりがあるのだ。どうしても辛くっても、代わりを創りだしてしまうのだ。でも、それでも、彼/彼女達は、美しい。

 鉱石を食べることは出来ないけれど、美しい物を記憶することが、『百年結晶目録』ならば、人間にだってできる。

 俺はバカみたいな、糞ガキの食事をしても太ったりしないが、すごく疲れやすい。だるい。

 (摂り過ぎると)からだに悪いものが、とても素敵なのが悪い。のだけれど、多少はましな食事をしなきゃ、これからも多少元気に馬鹿なことをするために。