印画紙の上の星座毛皮刺青それ以外

天気がいいから外に出よう。やらなきゃいけない、と思い込んでいることはあるのだけれど、どうせ家にいてもやるとは限らない。だったら日向を歩く方がいい。

 休日の渋谷は人が多く、人混みみの中でじっとするのは苦手だけれど、活気がある繁華街というのはとてもいいものだと思う。様々な人々がいる街はどこでも好きになる。

 エレキシ(DJやついいちろう×レキシ)-トロピカル源氏

 この人お笑いが本業なんだよね? すごくセンスよくてクラブミュージック関連の人かと思った(ラムライダーの検索でひっかかって、CDを借りたので)。

 というか、松本伊代のセンチメンタルジャーニーのリミックスがほんと良かったんだ。その動画なかったけどさ。

 ビットチューンにオタク掛け声(コール)を入れたミックスがマジ俺のツボだった。

 アイドルソングは好きだけど、大してアイドルに詳しくないし現場に参加したことがない俺。だから最初はオタク、男ファンの野太いコール文化というのにびっくりしてしまったけど、あれ、ライブ映像とかで見るとめっちゃ胸に来る、ことあるよね。チョコレートかけたポテトチップスのような相性の良さ。 アイドルの歌ってこうやって完成なのかな、なんてファンでもない人間だけど、了解してしまうんだ。

 休日にアイドルソングは、オタクの叫びは、楽しい。

田村ゆかり「14秒後にKISSして♡ 」Short Ver.

 田村ゆかりは本当にすごい。アイドルのお約束なんて関係ないというか、何歳だってアイドルが成立できるんだって証明してるのかっこいい。いくつになってもいつまでも、甘すぎる衣装で曲で歌詞でいいじゃん。

 プロデュースしてる清竜人もいい。というか、清竜人が女の子に提供した曲全部とても良い。はっちゃけてるのにすごくポップだ。休みの日には、やっぱりポップソングがいい。

 歩いていると、青山のファーマーズマーケットが目に入る。土日に、こどもの城の横でやってるんだよね。一年位前、ここで乾燥しているのではない、ラベンダーを買ったのだが、香りがとても良かった。芳香剤のラベンダーは苦手なんだけど、そのラベンダーは匂いが強いのにすごくリラックスできる香りだったんだ。

 たまにここを通る度に覗いてみるんだけど、売ってるお店には出会わない。

 ほどよい人混みの、青空の下の市場というのは歩くだけでなんか気分が良くなる。少し、値の張る野菜、果物、花、食器。日の光を浴びて並べられたそれらはとてもおいしそうだし、美しい。ただ、垂れ幕で「エビデンスのある野菜を」ってかかれてたんだけど、それ、俺は書かない方がいいと思うんだけど、どうでしょ(そのコピーが間違ってるとかいいたいんじゃなくて)

 久しぶりに、青山ブックセンターに行く。ファッション雑誌を適当に見て、写真のコーナーへ。すぐに目について、手に取る本。

 中平卓馬、氾濫

 1974年のインスタレーション作品の書籍化、ということなのだが、それを目にして、正直これはあまり良くないのでは……と思ってしまった。俺は日本で一番好きな写真家が中平卓馬なのだが、この本ではいまいちぴんと来なかった。ただ、後ろの方に実際のインスタレーションとして並べられた写真も(全体像の撮影なのだが)あって、それを見た時に初めて、あ、いいかもと思った。写真集に収めた、ではなくあくまでインスタレーションとしての全体を映したものだ。

 不思議だ。一部分で良さが分かることもあるし、じっとしてないと分からないこともある。音楽だと、最初の数秒聞くだけでそれがいいものかそうでないのか「独断、偏見」の判断を下せるけれど、美術とか文章だと、たまにそうでないことがある。

 好きな物は一発で分かる。感じる。そう思ってはいるけれど、数年後に、やっぱり気になることだって、自分がその美に感応できることもある。

 欲しくない、いや、彼の本なら何でも欲しいよ、でも、三千円、出せないなあ。だって、俺はコレクターになりたいわけでもなれるわけでもない。でも、欲しい。大体図書館や書店で目にしてしまったけど、それでも欲しい。なのに買わないんだな。

 あと、中平卓馬タブロイド判写真集 

 が売っていて、判型A3で、大きなフリーペーパーみたいなの。だって、16ページしかないんだよ! それで二千円! なのに、すごく良い。撮影は2006、2008年ということで後期のなんだけど、ああ、いい。としか言えない。一目見て、中平卓馬だと分かるんだ。(氾濫は分からなかった)ただ、風景や人が写っているだけなのに感動できるなんて。

中平卓馬『自意識を解体すること、それをすすんで引き受けること、それが私の考えること、その自意識の解体と再生を自らすすんで引き受けること、それが写真家として止む事なく私が考え、引き受けつづけることである』

 文章だけでも素敵だ。買わなかったけど。

 それで、適当に棚に並んだ人たちのをぱらぱらと。写真集って(外国人の)、5000~10000位するからさ、気軽に買えないんだよね。ケチ臭いんだけど、俺、数千円の本を買うのにめっちゃ悩むからね。数年悩んで、それなのに買ってない本だらけだよ。だってさ、一冊買って終わりじゃないし。欲しいのばかりだよ。全部欲しいよ。だけどそんなの無理だし。

 ぼんやり見る、ライアン・マッギンレーやティルマンスの写真集は、何だか俺にも優しい。カメラの前にいる生々しく、優しい人たち。センスが良く、親密感のある写真がそこにはある。彼らの写真にはよくタトゥーを入れた人や裸体が多く出てきて好きだ。俺がとても好きな人はしばしばミニマルな感じだけれど、エモーショナルを情動を親密さを持った彼らの写真は幸福な気分になるんだ。好きな人をすきなように撮るという幸福。

 素肌には刺青か毛皮を。なんて、ヤンキーセンスの俺。で、上品ヤンキーのドルガバの本、読みたかったのにシュリンクされてた。二万円か三万円した。俺がこれを買える日はこないだろう。転生しても買える気がしないぞ。

 で、棚にあるペーパーバックの、ラリークラークの処女作タルサ。これ、俺、彼の中で一番好きな写真集で、家にあるんだ。ペーパーバックなのに定価四千円越えかよ、と思ったら、ネットだと一万超えてる。なんでだ?

 クソガキが撮った、犯罪者達。ラリー・クラークの憧れの人は皆ワルガキとか娼婦。どっかのダメな人。なんだけど、愛情を憧れをもってるなら、それが勲章になるんだ、注射器も拳銃も刺青も裸体も誇らしい。

 棚ごと欲しいのに、結局何も買わないで店を出る。ネットで注文した本、あるし読んでない本もあるし。

 本屋から出ると、小さな魔法から溶けたような気分になる。昼の陽光から、肌寒い温度に変わっていることに気づく。

また、来なきゃな。今度は何か買わなきゃなと思う。小さな無数の魔法がなくっちゃ、明日とか昔とかのこと考えてしまう。今、どうにかしなきゃいけないのにさ。だから今、とりあえず、どうにかするんだ。

 

 

雅夢愛はかげろう

 

 しんみりした曲なんて聞いてないで、ポップソングでも聞きましょうそうしよう。