亡霊を一押し

片寄明人リツイートでトータスのサードアルバムの、全曲再現ライブの存在を知って、聞いてるんだけど、ほんとすごい。ほんと良い。俺はトータスはファーストが本当に本当に好きなんだけど、というかサードアルバムはそれに比べると、とか思ってたけど、これ聞くとやっぱいいわ。スゲー好き。

 

トータス(Tortoise)は今年2月、アルバム『TNT』(1998年)の発売21周年を記念した全曲再現ライヴを実施。当日のフルセット・ライヴ映像約64分が公開されています。この全曲再現ライヴは、2月16日に米シカゴのシカゴ美術館で行われた<Pitchfork Midwinter 2019>で行ったもの。ライヴ演奏は久々の楽曲もあり、海外のセットリストサイトsetlist.fmによると、「Four-Day Interval」「Almost Always Is Nearly Enough」「Everglade」は1998年以来、「The Equator」は2004年以来のライヴ演奏です。

 今日も都心のドブ河みたいな気分だったけど、心が都心の一見きれいに見える河くらいまで浄化された。トータス、というかジョン・マッケンタイア、とその仲間たちの音楽はとても豊かでずっと聞いていられる。足りないのはダサいとこくらい、俺が好きなユーロ、ディスコ、アイドル、エレポップ……ってつまりそれ以外はありまくるんだ。

 ロックミュージックって、音楽ってこんなに豊かなんだって、高校の時彼らのファーストアルバムを聞いて、始めて知ったんだ。音響派でもポストロックでもオルタナティブでも何でもいいけれど、かっこいいならそれでオッケー。かっこよくて心地良い。ゴミみたいな文章書こうと思ったけどやめるわ、もうほんと、音楽聞いてたら幸せなんだそれだけでいいんだ、だけど、せっかくだしゴミみたいな文章も書こう。

 300円のCDを買おうとしたんだ。そしたらさ、最終的に会計が五千円を超えてたんだ。駿河屋が悪い。

中古洋画DVD ジャン=リュック・ゴダール+ジガ・ヴェルトフ集団 DVD-BOX1 新装版(@2800円)

 だってよ! 安すぎない? これの収録作品大体見たし、いらないのに買っちゃったじゃんかバカ! そして魔が差して、他にもDVDが欲しくなる。見たことがあるやつ。見たことがある映画何度も見たい。

 パゾリーニの『テオレマ』と『豚小屋』と『アポロンの地獄』見たいなー。でもパゾリーニの映画、疲れない? やだよねあんな悪趣味なの好きな人の気が知れないよ、ああ、見たいなあパゾリーニ。人が正気を失う瞬間が沢山。気狂いなんてファッション気狂いなんて見ていてもつまらないよね(本人はそうじゃないんだけれど)。俺は超健康優良児だし、健康的な人が好きだなー。でもさ、あの人が映画の人が健康的な人が気をちがう、道を踏み外してしまう瞬間って、瞬間、その時だけを捉えられるとしたら、キュートだぞくぞくするんだ、たまに。たまにはね。気狂いは健康になろう。健康的な人は道を踏み外そう。人生が豊かになる。気狂いに健康に居直るなんてろくなもんじゃない。

『テオレマ』の説明文、“聖性”を秘めた青年があるブルジョワ家庭の下に現れ、やがて家族全員と性的に結び付き崩壊へと導いていく。しょうもない、豪華な偉大な踏み外し。映画の中だけじゃない、実践しなきゃね、俺もね。自分に聖性なんてなくても。

 アニエス・ヴァルダの『 5時から7時までのクレオ』を、なぜか、注文していた。ほんと、好きな映画。ヴァルダの中で一番好きで一番美しい(と思う)映画。アマゾンで千円で買えた。なんでだ。安すぎないか?

 ってさ、俺、手元にDVDあると、あんま見ないんだよね。それに、どうせ色々嫌になって売り払うんだ。いっつもお金に困ってる、だから、レンタルで十分。なのに、たまにむやみやたらに欲しくなる好きな人のあれやこれや。どうせ売るのに積んだまま放置するのに、でも、無駄遣いしなくちゃ生きてる意味ないじゃんか。

 でも、十年以上前からめっちゃ欲しいオムニバス映画『パリところどころ』の値段が今も一万近く! これ、見たんだよ。見た映画に一万も払えねえよマジ、でもマジでジャン・ルーシュの『北駅』見て鳥肌立ったんだ。オムニバスの中の一作で、たった十数分なのに胸に来る痛ましいドラマ。

 見たいのに、見られないものがあるのって、それなりに幸せなんだ。でも、どうせ手の届かないものだらけだからなんだから、たまには手を伸ばさなきゃ。

 映画、見たいのたまってる。映画見るのってそれなりに体力いるからなー。俺、飽き性で集中力幼稚園児レベルだからなーでもまた再見したいデレク・ジャーマンの映画色々。あと久しぶりに初期のトリュフォーも見返したいし市川崑の『黒い十人の女』見たいなーって、俺どんだけモノクロ映画好きなんだよって話なんだけど好きなんだ。白と黒の世界、ということで、では全くなくてレンタルの返却期限が迫っていたから見たくもない映画を見るんだしかも見たくもないくせに見るのは二度目か三度目になる、フィリップ・ガレル『白と黒の恋人たち』

 以下あらすじとネタバレ

P・ガレル監督自身が、60年代末に運命的な出会いを果たしたヴェルヴェット・アンダーグラウンドの歌姫・ニコとの愛の日々をモノクローム映像で綴る。映画の製作資金に窮していた若き映画監督の下へ舞い込んだ資金提供の条件は、何とも皮肉な内容だった。

劇中劇として撮影されている映画のタイトルは『残忍な無邪気さ』
これは今作『白と黒の恋人たち』の原題
劇中で流れるのはヘロイン撲滅映画なのに、監督は資金提供の為にヘロインの運び屋に手を染める。そして、主演女優がヘロイン中毒で死亡。おわり!

 なんでこんなの繰り返してみてるんだろうと思うんだ、でも、これもモノクロの映画なんだ、きれいだろ、モノクロの映画。

 ガレルの画面はゆったりとしていて、俺に優しい。登場人物のさりげないしぐさや、間をきちんと撮る。だから、スキャンダラス、ドラマチックな題材よりも、けだるさの方が印象に残る。

 ガレルの映画は、あまり好きではない、はずなのに俺はたまに彼の映画を見る。好きな理由は、けだるいから優しいから。何で好きじゃないのか、それは、ロマンチックな気がするから優しすぎる寄り添い過ぎている気がするから。監督が役者を登場人物を突き放していない気がするから。かれらにおとずれる不幸や悲劇なんて関係ないんだ、監督が人間を塵芥のように放り出し、しかしだけれども愛する欲する、かのような映画監督のことが俺は好き。

 まあ、そんなの俺の主観でしかないし、監督の撮った映画によっても異なるだろうけれど。映画を見る、として画が、画の連続が美しいとしたらそれでオッケーそれだけでも十分すぎる。だって美しいんだぜ、でも、何だか優しすぎるというか寄り添い過ぎている監督に感じる居心地の悪さ。俺にとってそれはフィリップ・ガレルヴィム・ヴェンダース。あんま好きじゃないのにさ、見ちゃうんだ映画撮るのうまいから。ずるいよ。

 昔、仲が良かった人が、フィリップ・ガレルのことを愛の映画だって言ってた。というか、きっと誰かにとっては誰かが何かが愛に、愛の映画になるだろう。

 なのにさ、その言葉が頭から離れなくって、ガレルの映画を見るたびに思い出してしまう。俺は、なんだか居心地が悪いんだ、ガレルの優しさとセンチメンタル。でも、それは薄汚い、なじみの毛布のように俺を苛立たせ、俺を優しく包んでくれる。

 映画を見て、もう会うことがない人のことを考えて、うんざりする。ベッドの上で動けなくなる。どうすればいいんだろう。映画を見たくないなら、映画をみるしかない。結局いつもこんな生活の繰り返し。

繰り返す悪夢/Recurring Nightmare?

 いやいや、そうなんだけど、でも、そんな中でも豊かな音楽で、好きな人好きでもない人のおかげで俺も正気に戻れるたまゆらそして。結局の所正気を失う、かのような衝動。うんざりする。でも、悪くない。映画が音楽がある。それだけで。俺は正気で健康優良児だから愛なんてよく分からないし大体知ってるふりをすることもある。だから、愛の話しは困ってしまうけれど、映画と音楽ならまだまし。愛の映画なんて、あるとしたら困っちゃうよね。うんざりするよでも、思い出してしまうんだ誰かのことを映画のことを。