目隠しも上等、きらきらも上等

せっかく受かった仕事をすぐに辞めてしまった。根気のない俺も勿論悪いのだが、その職場が結構なブラックな感じで、例えるなら、昼休憩以外ずっと、一人で「ぐしゃぐしゃになっているトランプを順番に並べる」だけをひたすらやらされて、色んな細かい説明とかないという虚無。

 いやあ、仕事ってそんなもんだよなあ、と自分を納得させようとしたけど、無理だった。一応そこそこ大きな会社のはずなのに、新人ほったらかし。それにやることは、無言でひたすらトランプ並べをやるだけ。たまに隣の人に数時間以上やっても終わらない量を「早くできた?(速さの基準が分からない)」とか言われる。それだけ。これ、おっさんがやるには辛いなー。高校生の初めてのバイトとかなら耐えられるかなー。って感じだった。

 合わないならさっさと見切りをつける、という意味では俺の判断は間違ってないのだが、会社勤めをしている人はこれの何倍、何十倍ほどの理不尽を乗り越えて、或いは感じないでいられるだなんて、マジ異世界の人だと思う。異世界の人達、ちょっとうらやましくて、ちょっと距離を感じるんだ。

 

 帰宅して、ずーっと次のバイトを探してたら、パソコンの前で8時間以上経過していた。何故か家にあったリポビタンd飲んで、徹夜して幾つものサイトで仕事を探すのに、できそうなのが無いというか、俺、バイト数十やったりやめたりしてるから、自分にできそうか、やりたくても落ちるか、ってのがわりと分かってきていて、あれ、俺、ないのかな? って思った。

 

 ないのかな、俺。できないのかな、俺。

 でもさ、何かしらしなきゃなって。当たり前だけど。世体も金もなくて、家で寝て金がじりじり減るだけなんて、怖いんだ。何も書けなくて、只老いておいつめられて、だなんて。

 一つ、ネットで応募をしたら、数時間後に面接の電話が来た。とにかく、しなくっちゃ。家にいるとつい、何も考えたくなくてゲーム動画見ながら、ラブプラスと黒猫のウィズをやってしまう。

 俺、ゲイだけど、ラブプラス楽しいよ 寧々さんの声が超好きな皆口裕子さんというのも大きいが、最新の恋愛ゲームってこんななのかーみたいな気分で興味深い。恋愛ゲームやアンドロイド、ヒトガタ、そういうのに興味あるんだ。のめりこめないくせにね。まがい物の愛なのに、たまに、キラキラしてるんだ。

 俺は恋愛対象は男だから、ゲームの寧々さんとは恋人? ではないような、不思議な感じだが、それでもコミュニケーションツールとして面白いのかもしれない。

 誰かと話すの楽しいよ。人でもロボでもプログラムでも人形でも。

 あと、黒猫のウィズはオートモードが採用されてからまたはまってしまった。でも、最高レアリティのレアがわりと簡単に手に入るのがいいのかわるいのか……(良心的に決まってるのだが)。前はまってたグラブルでは大好きなあのキャラ出すんだ! 出てくれ!みたいにしてガチャが楽しかったなー。

 あ、アイマスははまると怖いという理由でいまだに未プレイ。初期のアイマスの曲大好きだけど、デレマスの曲も好きで聞いてる。わがままファッションガールズモードにはまった人間だから、アイマスにははまらないようにしている……

 全然読書ができていないというか、文章を書く、まともな自分の為の小説を書く、というのはとても精神力がいる作業で、毎日そのことが頭をよぎるのにできていない

 せめて読書くらい、と思うのだが、どうしてもいろんなことから逃げてしまって、疲れ切っていて、そんな中で読み返す森茉莉のエッセイ集『贅沢貧乏のお洒落帖』。彼女のエッセイは、とても大好きだ。本当のお嬢様の、自分の美の世界をおもいつくままにつらつらと書き連ねるのがたまらなく愛らしくも稀有な存在で、彼女独自の傲慢で可愛くて光る感性を味わうことができる。

 着物についてのエッセイがとても素敵なので、一部引用する。

 

 

 

父が選んだのは、たった二色の友禅縮緬の着物に、白(白と言っても、上等の織物によくある、象牙色を含んだ、牛乳がチイズになる過程を、その儘固まらせてたべる、プチ・スイス・チイズ=巴里では砂糖やコンフィチュウル、森の苺なぞを添えて食べる=のような白である)地の西陣の帯である。着物は白と濃い紅とに大きく染め分け、白地のところには紅で、紅色の所は白ぬきで、燕の列が、柔らかい曲線を描いている柄で、

 

 という文章は、茉莉のくいしんぼうぶりも含めてとても可愛らしく、美しい文章だと思う。俺は彼女がバターのことをバタと表記するのがとても好きで、バターよりもバタ。の方がおいしそうだと思うのだ。

 それに、一番とか上等のことを、「一等」なになに、と書くのも好きで、真似している。

 きっと、芸術家には、芸術家が生き延びるには、感性を、美意識を守るには、パトロンか理解者が必要だ。茉莉が「御茉莉は上等、御茉莉は上等」と何をしても父鴎外に溺愛されていなかったら、こんな文章は生まれなかったかもしれないのだ。

 でも、まあ、そういう存在がいるなんて、まれなことだ。だからか、まがい物に、きらきらも見つけられるんだ俺。

 ところで君、楽しそうだね。オシャレさん。黄色が好きなのかな。せっかくだから写真撮っておいたよ。

 

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 こんなさ、どうでもいい写真、沢山とっていきたな。どうでもいい、きらきらやめかくしで、いきていけるんだよってことにしておいて。