神様に近づけないなら、せめて悪魔に

無駄遣いばかりしている。ラグタグオンラインでアホみたいなねだんになった、自分では身に着けられないアクセサリー(定価二万のが数百円になってるのを見ると、いいのかって思うマジで。)を幾つも買う。レディースのアクセサリーは豊富で、(セールでは)安くて面白いんだ。身に着けることも女性になりたいわけでもないけど。

 きらきらぎらぎらしているの大好きなんだ。ため込んでいるんだ安物ばかり、たまに、ブランド物。ぎらぎらの輝きは同じ。大好きだ、きらきらひかるの。鴉かな?

 他にもおもちゃとかマジックザギャザリングとか本とか買うのが止められない。プレインズウォーカーになりたいなー俺もなー。

 でも、心に灯がともるだなんて(ゲームの世界ではそうやって覚醒して第魔導士になるんだ)アンドロイドもどきの俺には無理かもしれない。

 焦燥感が無駄遣いに繋がるんだ。財布の中身やクレジットの総額を見て、現実に戻されるけれど現実を豊かに錯覚するためには、無駄遣いしかないんだきっと。

 写真集を幾つか買ってしまった。理由は安かったからとかいういつものことだが……それに、家にいたらすぐに寝てしまう。写真集とか見ていた方がましだ。俺はいつになったら読みたい本が読めるんだ?

 『奥羽の自然 西和賀大地』という本を読む。

岩手県でも有数の豪雪地帯として知られる西和賀地方。ここを第二の故郷とする著者が、季節のうつろいの中、四季折々に見せる自然の美しさを紹介する

 とのことで、四季の花々の写真がとても良かった。この人は移住をして何十年も岩手の写真を撮り続けているそうで、その熱意に胸を打たれる。勿論、写真は岩手の広大な自然の一部分でも、伝えてくれるもので、ひねくれものの俺にもよく響いた。

長谷寺の四季』

春は桜、初夏には牡丹と「花の御寺」としても知られ、四季折々、美しい花々が境内を彩る長谷寺。さまざまに変化する長谷寺

 とのことで、花の写真がとても多くて、それだけでもよかったし、お寺の写真も当然あるのだが、ふと、何もない空間の、静謐とした時間におもいを馳せる。牡丹の花々が特にお気に入りだった。立派なんだ、綺麗なんだ。

エミール・ガレ 光の魔術師』を読む。彼の作品は超絶技巧なんだよねって感じでろくに見ないでいたが、じっくり一冊の本で通して見ると、いかに彼が自然を愛していたのかが伝わってきて、素敵な一冊だ(手軽な値段と大きさの本なのだ)

 技巧は、イマージュの為にあるのだと、彼の作品を見て感じられたのだ。美しい花々も、おぞましくも奇妙な動植物も、等しく作品に昇華しているのは素晴らしいなと思った。

『別冊太陽 日本の島』その名の通り。別冊太陽は値段がする(定価税抜き2400円)けど、中身がしっかりしているのが多く、読みごたえがある。海とか島とかの写真を見るのが好きなんだ。あと、そこで生活している人達。中平卓馬が沖縄の写真を撮っていたけど、俺も沖縄行って写真撮りたいな。

 なんて夢想を打ち砕くのは、現実、支払い、不採用の通知。生活をする才能が本当にない、けれど家無しではないのだから、自分なりにくらいついているのだこれでも。

 たまに、肉体労働で日銭稼ぎ。体力が落ちているのを実感するし、ふと、身体を動かすのもいいものだと思ったり、ふと、もうこんな肉体もじんせいもうっちゃってしまえと思う。

 いらないものが多すぎて、捨てられないものも多すぎて、でも、摩耗していくんだ、天使もぬいぐるみもある部屋で一人。

 仕事終わり、大きなリュックに、メット、安全帯、安全靴、小汚い作業着でふと、四谷へ。久しぶりにキリスト系ショップで色々買ってしまった。家にさ、十人以上いるんだキリストも天使も。

 だけど、壁にいた木彫りの35000円のキリストと目が合ってマジで超ほしすぎて何度も店内をうろうろしたけど、駄目だ。買えなかった。買ってどうするんだよ俺。でも、沢山欲しいんだキリスト。全部欲しいよメシア。家の中、キリスト、天使、おもちゃ、本、そういったものらがごみ溜めになってる。ヘンリー・ダーガーの部屋みたい。全く嬉しくない(彼の作品は好きだが)

 結局お値打ち価格のキリストを買った足で、久しぶりに教会へ。中に入り、椅子に座り目を閉じる。仕事の後で疲れ切っているんだ、というか、いつも疲れてるんだ。近所に合ったら毎日のように通うよ教会、だって俺、いっつも、音楽とか雑音がないと不安で、しかしそのせいで心が休まらないから。

 教会でぼんやりしていると、バッハの曲とはまた違った良い効果があって、俺はそれを調律だと感じるんだ。世界とチューニングを合わせる為、俺には神様が神様の声が神様の真似をする人が神様を愛する人が神様を愚弄する人が必要なんだ、神様に近づけないなら、せめて悪魔になりたいな。

 でも、悪魔になるだなんて、困難過ぎて途中で気が狂ってしまうだろう。地獄の門、くぐれるのはつくりだせるのは、きっと世界でも数人しかいない気がする、けれど、あきらめちゃいけない。駄目だって、思ったらおしまいだから。制作者ならば傲慢でなければならない(つまらない)し、その報いも受けねばならない。血のインクでサインをしない人生なんて!

 拾い読み、雑に読む本や、書きとめる言葉の欠片や文章。俺は健康と神様と悪魔が好きなだけなのに。色々とうまくいかなくて、処方箋を貰って、白い錠剤を幾つか飲んで、おやすみ。せめて、悪夢と友達になれますように。