ブラッディ・マリーと花々

 駅でブラッディ・マリーを二杯飲んで、恵比寿へ。ブラッディ・マリーの名前を目にする度、髭の超名曲、ブラッディ・マリーに気をつけろを思い出す。

 もういっかい殺してくれ来週ー って歌いたくなる。歩いていると椿が目に入る。くったり、と疲れている表情が好きだ。

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 恵比寿の山種美術館で 上村松園美人画の世界 見に行く。上村松園は、というか綺麗すぎる、誰が見ても好感を持つような画って、そこまで好みではないんだよなーとか思いながら現物を見たら、とても良かった。

 

「牡丹雪」の空間を感じさせながら、女性の凛とした美しさを表現しているのは見事。とてもいい。

「新蛍」という作品が、個人的には一番好き。縦に長い構図で、うちわを口元に寄せた、藍鼠の着物を着た女性が、薄竹色の簾からちらと顔を見せていて、楚々とした表情ではあるが、どこか清冽な艶めかしさを感じる、品のある魅力を感じられる作品だった。

 あと、村上華岳の 裸婦図 も展示されていた。岩場に薄着の女性が座っている画で、教科書とかにも載っている超有名な奴。誰もが一度は見たことがあるはずの作品。別に今まで好きでも嫌いでもなかったのだが、実物を見てみたら、すごかった。女性の不自然な丸みを帯びた顔や身体つきは、神仏というよりも、俺にとっては球体関節人形を想起させるもので、神々しい。

 また、その肉感的な身体のマッス、量感が印刷(本で見るの)では全くわからなかったが、実物はすごかった。そんな肉感的な、ひとがた、神仏的な女性が、幻想的な岩場にたたずんでいるという、とても神秘的な存在感のある画で、現物を見られて本当に良かった。やっぱ美術館行かなきゃなーって思った。貧乏人でも気力が無くても無理やり美術館行こう俺。

 恵比寿の公園に寄ると、もう桜が咲いていた。

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 もう、春なんだなって。俺は桜は散る時が、花筏になっている時が、葉桜になりかけている時が特に好みではあるが、桃色の桜を見ると、やはり嬉しくなるのだ。

 で、渋谷のまんだらけにいつもの様に寄って、馬鹿のように買ってしまう。図書館で10冊借りて消化している途中なのに!! 十一冊購入する。買い物依存かな? って、全部100円だったからだけどな! って、これが100円でいいのかよってのも沢山ありました……

チベット密教美術展

バリ島絵画展

花鳥風月展

赤瀬川源平山下裕二雪舟の本

バイロンとブレイクの詩集(いえのどこかにある)

安野光雅の大人向け絵本

津野裕子と鳩山都子の漫画

ムジールの愛の完成

写真の雑誌

 家に置き場がないのに、俺は何をしているのだろうか、しかも家で読んでない本がたまり続ける!! なのに買うしかない人生!!!

 先日フランシス・ジャムの詩集が良かったから、彼の短編、『野兎物語』を読む。数十ページしかない短い話だが、ほぼ全文詩情を感じられるというか散文の美しさに満ちていて、輝かしい小品とでも呼ぶべき良作だった。感受性を世界に向けて言葉を紡ぐと、何もかもが美しく映るんだっていう、当たり前のことを思い出させてくれる。そして、それを形にするってのは、その人の日々の努力の結晶なのだ。

 すぐに疲れたり駄目になる俺だけど、綺麗な物、だれかのものを、みていたいな、それで、自分の言葉で喋れますように。