好きになってしまったから仕方がない

終わらない。東京に住んでいて、住宅街の近くなので、商店街がどの時間帯も人が多い。夜しか気軽に買い物できない。夜は薬局やお菓子屋とか百均がしまっているのがつらい。

 夜は夜で、散歩の楽しみはある。でも、さすがにそろそろきつくなってきた。寝て、読書。或いは腐るだけの日々。外に出て何かを吸収しなくっちゃ。新しい本を手にしなくっちゃ。通販は好きだけど、時間がかかるし、現物見たいんだ。本だな、本がたくさん並んでいるのを見たいんだ。

 とはいえ、色々再読して、改めてその本のことを知る機会を得られたのは、良いことだ。マイナスがあまりにも大きいけれど、そればかりに目を向けて体調を崩すよりかはまだ、読書の時間を。

 

雑記。

高峰秀子の対談集『いっぴきの虫』読む。相手が、東山魁夷松下幸之助森繁久彌市川崑……。だが、女優高峰は一歩引きながらも、相手と対峙して怯まない。
木村伊兵衛との対話の際、白をバックに写真を撮ったエピソードから、晩年の成瀬も同じことを言っていたなんて、高峰しか書けないなあ

マリヴォー『愛と偶然の戯れ』読む。初めて会う許婚者を密かに観察すべく、それぞれ召使いに扮した男女。召使いに扮した上流階級の人間も、その身代わりになった下男下女も、恋に落ちてしまう、喜劇。登場人物の喜怒哀楽が激しく、口が悪くテンポが良く楽しい。18世紀の作品なので、身分差が上手く機能

j・g・フレーザー『火の起源の神話』読む。世界の火の発生に関する物語が収められている。神様や動物からもらったり盗んだりする話もあるが、摩擦で火を起こす、雷が木に落ちて火事になり、そこで火を発見した。と、バラエティ豊か。火は、人類にとって必要だから、話が多いのか。俺はプロメテウス好き

白洲正子『花にもの思う春』再読。俺は和歌に明るくない。だけど、彼女の文章は、品と芯があり、心地良く読みやすい。

紀貫之の句

桜花散りぬる風のなごりには水なき空に波ぞ立ちける

現実にはあるはずもない大空の波立ちを、現に白く波立っているように詠んでいるからこそ美しいのです

ガンアクションをテーマにしたtrpgガンドッグ・リプレイ ストレイ・ドッグ』昔の国産だけど、アメリカのアクション映画みたいな雰囲気でワクワク。カーチェイス、銃撃戦、爆発する船から脱出! 主人公が元軍人バツ一ちょいヘタレ33才。珍しいし、好み!

辻惟雄『奇想の図譜』再読。彼の本は全部面白い。それは、奇妙なものに素直に感動し、解説もしてくれるから。若冲白隠北斎……といった有名所から、日本人の意匠に関する「あそび」「かざり」について語る楽しい一冊

歌物語『オーカッサンとニコレット』読む。韻文と散文が交差する、作者不明13世紀フランスの作品。王子と女奴隷の可憐な恋。旧字体と古めかしい訳だが、シンプルな筋だからわりと読みやすい。品がある。天国を拒否して恋人となら地獄でも、と言うのは、中世では大胆。若さと愛のロマンチックな作品。

sweet poolクリアした。世界観も、キャラも好み!基本皆病んでる中、某キャラのたくましさにぐっときた。ただ、ストーリーがかなり短い!あれ?もう終わり?あの設定は?
とか、もうちょい絡みが見たかったとか……
選択肢もあってないような感じ。
良作なだけに、そこだけは残念

ジャン・コクトー『おかしな家族』読む。文とデッサンの童話。俺はコクトーの小説も詩も映画も好きだけど、絵はイマイチ……と思っている。中身は、太陽と月は結婚して子供を作るが育児放棄。犬の先生は駄犬で解雇、星を教育係にして、はいよし!

って、こんな童話やだ!笑 皮肉はきいてるけどさ

マルコ・フェレーリ監督『ひきしお』パンフ読む。島で暮らす男と犬。そこに流れ着いた女。女は嫉妬から犬を殺し、女自身が犬になる。原始的な楽園生活。だけど、二人の楽園にも終わりが来る。二人とも所詮現代人なのだ。ドヌーヴや海の美しさと、甘い倦怠。楽園なんてないのだという切なさが残る

夜になったから、やっと外に出られる。今日届いたserphの別名義と tomgggの曲聴きながら暗闇歩くとめっちや楽しい。serphの別名義は電子フォークロアダンスフロア、って感じで、まじ上がる!tomgggは安定のお菓子の世界で癒される。夜と音楽は相性最高。でも、昼間も歩きながら聞きたいな

朝から廃墟のことを考えてた。人は何で廃墟に惹かれるのだろうか? 不在の光景の中に、生活感を見つけるから? 甘いディストピアへの憧れ? 

それはそうと、魔神転生2のジャケ、狂う位好き。ゲームや音楽も大好きだが、瓦礫と廃墟の中、逆光に照らされる悪魔使いなんて最高すぎる

ロウ・イエ監督『二重生活』見る。一人っ子政策があった頃の中国の話。不倫、暴力、殺人。泥沼。ただ、屑色男も子供には優しかったり、女性達もいじらしくも残酷だったり、複雑な心理を上手く描いてる。不鮮明で薄暗い画面や寄りも生々しくて良い。でも、ミヒャエル・ハネケみたく疲れる笑(褒め言葉)

ポーの短編集と廃墟写真家サイモン・マースデンの『ポーの黒夢城』読む。やっぱりポーの短編は面白いなー。廃墟写真も、雰囲気合っていて良い。ポーの怪奇小説の魅力は、危険と魅惑とを詩的表現で、破滅へと誘ってくれる所にあると思う。
禁じられた小旅行へいざ。

アポリネール詩集再読。口説き文句と皮肉。何より軽やかで、子供のような愛や鋭敏な哀愁を感じさせる。
若くして凶弾に倒れた彼は、何を思いこの詩を書いたのだろう

わびしい監視兵

ところで 僕の心臓よ
なんでそんなにときめくか
塹壕の中のわびしい監視兵
夜と死を見つめ続けるためですわ

 

バタイユ『空の青み』再読。猥雑と死が骨子。性に禁止もタブーもないのだという考え(現代人)の俺には、サド的な性描写の退屈さ(おぞましさなんて、あるのだろうか?)を感じるが、女性への淫売聖女オブセッションはその病が深いと言う点で興味深い。猥雑を求め浴びなければ生きられないなんて!

金子光晴『どくろ杯』再読。三十代の放蕩を七十代の自身で綴る。同じ所にとどまれず、無軌道なその日暮らし。結婚して子をもうけるが、その子を置いて、妻と金も保障もない中国への旅へ。遊人であっても、冷静な描写、自らをも刺す冷酷な眼差し。しぶとさと、豊かな詩情。名作。

 

 何もない日は、本を一、二冊読めているような気がする。幾ら本が好きとはいえ、やっぱ何か新しいことをしなきゃ駄目になる。書きかけの小説で手をつけてないものがあり、ずっと気になっているのだが、色々感じて、刺激を受けてから続きを書きたいんだ。でも、今は難しい。

 色んな人の悲しみや不安や無念、或いは罵声や怒りが流れて行っている。それ自体を否定することはできないけれど、俺は何がしたいって、きっと、好きな物を見て、触れて、感じて、表現したいんだ。そういうシンプルな感情。素直な感情に目を向けると、少しだけ心が落ち着く。

 元々過敏なのが、今回のことで悪化したり、意外としぶとい自分にきづいたり。今回のこととは別に、定期的に、あ、もう駄目なんじゃないか、という思いがよぎる。でも、悲しみも喜びもひきずるくせに長くは続かない、難儀な性格なのだ俺。

 自分ができることもしたいことも好きなことも、学生の頃から変わってなくて、俺の話を喜んで聞いてくれる人なんて、大学教授位しかいなかった。百年前、数十年前の詩と小説が一番好き。今の時代に、必要とされていないとしても。好きになってしまったから仕方がないのだ。