冬の入り口で少し

夜、少し窓を開けるとひんやりした空気が部屋に入ってきて、吸い込むと真夜中の温度。そのまま寝てしまって、目覚めると布団をかけているのに程よく肌寒く、異国の温度。毛皮が欲しい。毛皮を着て、寒い風を全身で受け止めたい。

 後二ヵ月で今年が終わると思うと、何だか何もしていなかったような気がしてしまう。コロナ騒動と、新しい職探しでかなり負担が大きかった。それでも、一応自分の小説を書き終え、新しい小説もちょいちょい書いていることを考えると、自分なりにできてはいるのか、とも思う

 俺は色々と問題やら不安やらが多く、常に自分のあれがこれがそれが出来ていない、と考えてしまう性格で、その判断が正しいとしても、あまり自分を苦しめて疲れてやる気がなくなるというループは止めなければと思う。

 あと、どの位頑張れるのか、と頻繁に思う。早く楽になりたい。そんな思いを振り払うのは、外に出るのがいい。何も解決しなくても変わらなくても、音楽を聞きながら歩いている時間は幸福なのだから

久しぶりにDir en grey聞いたらめっちゃ上がる。90年代V系の密室暗黒血鎖翼退廃薔薇天使とても健康に良い。プラスティックトゥリーや黒夢やラファエルとか今も好き。大袈裟で攻撃的で装飾過剰は人に幸福をもたらす。

ラファエル聞くと失われた天使が補充される(?)
天使力高いバンドは他にいるのかな。是非、ミカエル ウリエル ガブリエル。メタトロンサンダルフォン君たちは神様の奴隷なんて辞めて、哀れな子羊の為にお化粧バンドデビューして欲しい

雑記

 

泉鏡花作 金井田英津子画『絵本の春』読む。泉鏡花が語る、日々の生活に潜む怪異、幽冥。魅惑的で怖ろしい瞬間に瞬間に立ち会ったと思ったときには、それらは奇術のように姿を消してしまうのだ。金井田英津子氏は知らなかったのだが、鉱物のような静けさを持った画でとても良かった。手軽に楽しむ怪奇

 泉鏡花は本当にいいなあ。でも、読むと体力が持って行かれるので、さくっと読める短編はとてもありがたい。泉鏡花は、二十代の頃食わず嫌いしていたんだよなあ……もったいないことをした。って、今も読んでいない作家リストが沢山……それを消化する作業を思うと楽しくもうんざりする。

一生、読んでいないリストを積み上げ続けるのか。

 

いしいしんじ『みさきっちょ』読む。著者が三浦半島のさきっちょ、港町、三崎で暮らした記録。三崎の人達が、街を生活を楽しんでいるのが分かるから、読んでいて豊かな気分になった。どうしようもない人も、どうしようもないことも受け入れる寛容さ。生活と出会いは人を強く、優しくする。

 昔いしいしんじ町田康が本を出していた。いしいしんじ町田康も、人がいいなあと思ったんだ。これは誉め言葉だ。彼らの真面目さ素直さはっちゃけっぷりが、人をひきつけるし、いろんな出来事に参加するんだ。

 ただ、俺はむやみやたらに神経質でぐらぐらふわふわいらいらしていて、そういう人の文章やら作品やらが一番好きなんだ。今生きている映画監督で言うと、ゴダールとかハネケみたいな。めんどくさいジジイの作品が胸に刺さる。

 本を読むのだって、一応交流ではあるけれど、誰かとの交流を気軽にしている(ように見える)というのは、すごいなあと思う。自分にはできない、と思い込んでいること。

 根性ひん曲がったおじさんたちの作品が好きだけれど、健康的に生きて正常な判断力で作品について考えたり作ったりしたい。困難だけれども。

映画『25名画の秘密』見る。有名な絵画を数分で、早めのテンポで紹介。一部を強調したり、題材を消したり浮かび上がらせたり、映像で見るべき点や主題についてレクチャー。高校の美術の授業の前に数分間流せばいいのでは?と思った。日本のそれとは違い、余韻より効率!な感じで好みは分かれそう

『ドイツ菓子図鑑』読む。お菓子のレシピと写真が載っているが、図鑑ということで、お菓子の由来も記載。

ドイツのフレンチトーストはアルメリッター 貧乏な騎士

ゲッターシュパイゼ 神々の食物 と言う名前でシンプルなゼリー


リーベスクノッヘン 直訳は愛の骨で エクレア 読んでいて楽しい

八雲立つ出雲』読む。写真を植田正治、文章を古代史研究家の上田正昭が書く。神秘的な写真も素晴らしいが、神話と現実を通じる道を開く文章もまた良い
海からきて海へ去る神々が出雲神話には語られている。夜見(黄泉)のくににいたる入口は海辺に求められている。神が訪れるのも人が死んで赴くのも海

 

ドキュメンタリー映画グレン・グールド エクスタシス』見る。クラシックに詳しくないのだが、集中したい時は、グールドのバッハをかけっぱなしにしている。彼が歌いながら鍵盤の上で手を踊らせる姿を、映像として見られたのは嬉しい。学生の頃は、彼のCDを聞いて唸り声が入っていて恐いと思った

年をとり、色々聞いてそれなりに音楽には詳しくなったが、クラシックは鬼門だった。名前が覚えられないし、飽きてしまうのだ。そんな集中力のない俺が大好きになったのが、バッハ、そしてグールド。彼に関する本は沢山出ているが、読んでいない。クラシックの知識も情熱も欠けている。いつか読むのかな

高峰秀子 松山善三 著『旅は道づれツタンカーメン』読む。女優とシナリオライターの夫婦の、旅行記。軽快な掛け合いが楽しい。エジプト、ということで生死や生まれ変わりやら猥雑な町等に二人は思いを馳せる。対照的な所もあるが、二人は互いに強い敬意を抱いているのが伝わり安定感があるのだ

 

筒美京平の訃報を聞く。悲しい。
スーファミいただきストリート2は、全曲筒美京平作曲なのだ。ものすごく豪華だなあ。そして、捨て曲なんてなくて、何度聞いても飽きない。とびきりポップでちょっぴり切ない彼の曲は、日本人好みの楽曲のような気がする。

 冬の入り口で少し戸惑う。毛皮のことを体温のことを思って触ってやりすごしていかなければ。