目を見開いて

色々とあった。色々とボロボロになった。いつものことじゃあないか、誰でも大なり小なりそうじゃあないか、とは思うけれど、ちょっと、自分の中では様々な問題が重なり、駄目になるかな、と思ってしまった。

 でも、今日小説のなおしを終えて(本当はまだまだ不安だけど)ポストに出した。少し、気分がすっきりした。前に進んだような、気が抜けたような。

 俺が元気に、色々出来る時間って限られていて、色々やらねばと思いながらも、できずに病魔に依存する日々。でも、とりあえず小説はかけたんだ。それが何かを生み出さないとしても、俺にとっては大切な作品だ。

 小説の中で画を描く少年を登場させ、俺もまた、画が描きたくなってきた。小さい頃の夢は画家だった。でも、すぐに諦め、今はずっと小説を書いている。

 俺はそんなに器用でもお金に余裕があるわけでもないので、教室に通って道具を揃えて、なんて夢のまた夢だ。それに、本を読んで、書いて。それだけでせいいっぱい。

 でも、画を描けないまま死ぬことを考えたら、やっぱり描いた方が良いよな。

 最近、たまに前向きになった時、友達が欲しいなって思う。でも、俺が好きな美術や文学の話なんて、誰も求めていなかった。好きな話を楽しそうにする人たちが羨ましかった。

 だから、俺は小説の中で芸術家を登場させる。

 誰かと、会話をしているような、そんな幻覚をみられるから。

 それに、色々とやばいな、って自覚が強くなってから、多少は美術にもっと向き合えているような気がしないでもない。知れば知る程、自分の無知や記憶の欠落などに気付く。でも、それだからこそ立ち向かう意義がある。

 花を神を天使をけだものを宝石を思う。俺の人生、そういうので飾れたら。

雑記。

先日買ったハマースレイの水仙ティーカップで、ウェッジウッドのイングリッシュブレックファスト飲む。カップは縁が波打っていて、薄く唇に優しく、紅茶はとても飲みやすいのにコクがあり、幸せな気分。いつも飲んでる、百個で400円のリ⭕トンに戻れなくなるな

 

 

サントリー美術館 美を結ぶ開く 展行く。古くからの技法や西洋文化を取り入れた作品が展示されていて、見所たっぷり。丁寧なキャプションも理解を深める。伝統的な技巧も西洋や中国の文化を取り入れた物も、様々な作品は奇妙であったりモダンであったりして、今も古びない

 素晴らしい陶磁器を見ると、俺も作りたいなあ絵付けをしたいなあ、なんて思う。無理だけど。

バグルスのファーストはほんと好き好き大好き愛してるって言わなきゃ殺すって話なんだけど、セカンドもいいよな。最初は正直ファースト大好きだから、うーんって思ってた。でも、聞くうちに魅力に気づく。力強さがプラス。永遠の未来のサウンドがあるー

小説を書いていると、他の人の創作物、特に小説が読めなくなる。他人のよいものを受け取るって、パワーがいる。でも、誰かの作品見てないと、自分がスカスカだと思う。久しぶりにクリフォード・コフィンの写真集を見る。昔のヴォーグの写真。古典絵画のようなエレガンスな構図とキュートさにうっとり

狭い家の中に本や雑誌が多すぎる。金も気力も無いし、まとめて処分しようかと、昔のナショナルジオグラフィックめくったら、カラフルなインドのゾウのお祭りについて書いてあった。こういうの、切り抜いたりネットで見たりするより、一冊の中にあるから好きなんだ。本が好きなんだ。捨てられないんだ。

映画『君の名前で僕を呼んで』今更見る。とても評判が良い作品で、みたらその通りの優等生的な良作だった。根性ひん曲がった俺は、登場人物ほぼ全員善人、シンプルな筋(なぜ恋に落ちたかもう少し描写しても?)が気になった。でも、後半の主人公の若さ爆発のはしゃぎっぷりが美しくも切ない。良い役者

agnes b.STYLISTE』読む。アニエスベー自らがアートディレクションを手がけたメモリアルブック。40年の歩みと制作の秘密を、貴重な写真やスケッチとともに振り返る。とのことで、アニエスベーについてあまり詳しくない俺が見ても楽しめた。お茶目で優しくてロックな人柄が生み出す、楽しい洋服たち。

谷崎潤一郎『陰翳礼讃・刺青』また読む。彼の作品は、好きで嫌い。神経質助平ジジイの同族嫌悪だと思う。でも、美意識が、美文があるのは素晴らしいことだ。
『私は、われわれがすでに失いつつある陰翳の世界を、せめて文学の領域へでも呼び返してみたい。文学という殿堂の檐を深くし、壁を暗くし、見えすぎるものを闇に押し込め、無用の室内装飾を剥ぎ取ってみたい。それも軒並みとは言わない、1軒ぐらいそういう家があってもよかろう』

村上華岳 京都画壇の画家たち』見る。山種美術館の展示をまとめた一冊。ここで、俺は村上華岳の『裸婦図』の現物を見て、本当に凄いと思った。有名だから何度も本では目にしたけれど、現物の肉感、神秘性、女性とも仏とも言えないような魅力に絵の前から動けなかった。やっぱり、美術館行こう!

裸婦図、もそうだが、雪舟もそうだった。印刷では分からなかった。現物を見て、打ちのめされるという幸福。すごい人間が作品があるんだって、それだけで、本当に俺は救われるんだ。

市川圭子『アンティークショップレース 16世紀から20世紀の美しく繊細な手仕事』読む。レースはとても時間も技術も必要なもので、素朴な物から細密な花々まで、物語の一部分を見ているような、華やかで豊かな気持ちになる。色褪せたもの、再現がむずかしいものもあり、デザイン、歴史としても貴重な本

小さい頃、幼稚園で読んだ気がした絵本。『三びきのやぎのがらがらどん』カワイイ絵柄で、古本で安かったから買ったけど、なかなか暴力的な話だった。でも、昔話ってそうじゃなくっちゃなーとも思う。絵本の世界も恐くて魅力的だ。

めっちゃかっこいいな。花柄の物は大抵好き。大人になったらギャルソンの服、沢山着られると思ってたけど、学生時代が一番服に金を使っていた。ほんとはさ、全身に花の青刺入れたいんだけどさ、数年前に百合を入れたっきり。沢山花のことを考えたい。そういう時間をふやさなきゃな

『世界のクラウンジュエル』読む。その名の通り世界のクラウンがページに大きく印刷されていてとても美しい。王錫やティアラや、その年代ごとのジュエリーの紹介もあり、うっとりしてしまう幸福な一冊。自分のために用語を引用

ロココ:フランス語のロカイユ(小石や貝殻による装飾)に由来する言葉で、転じて貝殻モチーフの装飾品などをさすようになり(中略)ジュエリーでもパステル調にリボンやブーケなど曲線を多用した女性らしい優美なモチーフが好まれた

アンピール:帝政という意味で、19世紀はじめのフランス、ナポレオン帝政時代のスタイルをいう。装飾過剰なロココの反動で、比較的シンプルなデザインが好まれ(中略)古代ギリシア・ローマやエジプト遠征の影響によるエジプト様式のリヴァイヴァルが流行した。

なんか、体力無くて読めなかった『ダブル3巻』野田彩子読む。映画に出て、一気に人気者になった多家良。彼の危うくもしなやかな足取り、成長が見られる。相変わらず演者の顔の説得力が上手くて、気になってしまう不思議な人気俳優、が存在しているのだ。次号は友仁にスポットライトが当たるといいなあ

林芙美子原作、成瀬巳喜男監督『めし』また見る。周囲の反対を押し切って結婚した夫婦、しかし今では倦怠期。そこにワガママな姪が転がり込んできて、夫婦の生活に波紋が広がる。原節子が、日本家屋に立っているとスタイル良すぎて、しかしすぐ慣れるんだけども。小さな哀しみや退屈の繰り返し、

そうだとしても、日常を、連れ添う人を愛するという、胸に来る映画。原節子の決断、特に最後のナレーションは反発したくなる人もいるかもしれないが、添い遂げる人の幸せが自分の幸せという生き方も、本人が納得しているなら素敵なものかなと思う。おっさんになってから見ると、成瀬の日常映画はくる

過日、肉体労働者(俺)は、電車の移動中に谷崎潤一郎の食についての本を読んでいて、ほんと、くずだなあ、でもやっぱり文章は嫌悪と魅力があるなあと思った。
最近、所得がヤバすぎる自分が、似合いのマズいものばかり食べていることに危機感を覚えるようになってきた。

本や美術品(美術館で見る)なら、どうにかなるし、それに使うなら食費は抑えざるを得ないけれど、たまに、そこまで値が張らなくても良いものを口にすると、ああ、しっかりしなきゃなと思う。感覚が死んだままじゃあ、何も生み出せない。息を吹き込む為には、幸福な食事も必要だって、分かってんだけどな

谷崎潤一郎文学の着物を見る』また読む。谷崎の作品に登場する華やかな着物を再現。ぱらぱらと見ているだけで楽しい一冊。当時の流行や、流入した西洋文化も、文学に、色彩に影響を与えた。化学染料が本格的に輸入され、鮮やかな青がうまれる。それが新橋の芸者が好んだ、新橋色、だなんて洒落ている

『魔術師 谷崎潤一郎妖美幻想傑作集』読む。初期の耽美、怪奇、私生活的な小品を集めた一冊。俺が好きな川端康成泉鏡花と大きく違うのは、彼が傲慢で欲望に忠実な所か。嗜虐も被虐も、ご主人(谷崎自身)に捧げられる供物。若い傲慢さと不快さを美しい調べで魅せる、軽やかな小悪魔揃い

ピーター・スタンフォード『天使と人の文化史』読む。天使が見える人の話が冒頭にあり、読むのをやめようかと思ったが、聖書、学問(天使学!)、芸術の中で登場する天使の役割、その変遷を辿る一冊。中でも、この本では天使の役割は守護天使、神(知覚できない神秘)と人間の間にある存在として

肯定的に、日常の一部のように語られている。本文の中に、ある調査ではイギリスで礼拝に参加したことがない21%と無神論者を自称する7%が天使を信じているという。俺も、存在を信じていないのに天使がいたらな、と思う。それに、様々な作品に登場する天使達は、守護ではなくても輝きを与えてくれるのだ

『美しいアンティーク生物画の本 クラゲ・ウニ・ヒトデ篇』読む。18-20世紀に刊行された出版物から、テーマの物を集めた一冊。海の生き物って、よく見るとグロテスクな印象を受ける物もあるが、この本に収められている絵には、華美な装飾物のような美しさがある。俺にとっては本物よりも絵の方が好き

数年前に渋谷で見た『印象派への旅 海運王の夢 バレルコレクション』の図録買う。会場で本物見た後に図録を見るとね、なんだけども、改めて図録を見ると当時の思い出が蘇り良かった。海や人々の生活に近しいモチーフの絵画。空間の広がりや温もりを感じて、気分が楽になる 。

若冲の描いた生き物たち』読む。若冲の画に、描かれた動植物(空想、その時代の日本では見られなかったものも指摘)の写真をつけて詳しく解説。若冲の突飛で素晴らしい画に、丁寧な解説がついて理解が深まる。若冲本は沢山出ているけど、その中でもトップクラスに読み応えがある良書。

渋谷Bunkamuraミュージアムで、ロベール・ドアノー写真展見る。歌と踊りと、倦怠と喜び。一般人も有名人も変わらない。昔の日本人が憧れた巴里の時間がそこにはあった

 

 色々ある。これからの不安も大きい。でも、前を向いて。俺の好きな本の題名、目を見開いて。