中年男性はプロメテウスがお好き

色々とあり体調を崩す。それでも生活の為に日銭稼ぎ。頭の中にはいつも完成させていない小説のことがあり、神経が休まらない。

 いつまでこんな生活を続けるのか。まだやれるようなもうそろそろ終いにしたい、なんてことを考えながらもすり減らす日々。

 過日、やっと小説を書き終えた。まだ推敲や直しが多々あるにせよ、一応はラストまでこぎつけて、ほっとした。あと何本小説を書けるんだろうって、そんなことを考えるようになってしまった。現実を、幻想で幻覚で目隠し。こんな生活に嫌気がさしているけれど、俺を救うのはきっと幻想。誰かの幻想。或いは、お手製の幻想。真実に眼を向けたら狂ってしまう。それよりかは内なる虎や一角獣の肌を牙を思う方がまだ健康的だ。

 雑記

 小説を書くことができていて、本も読めている。やりたいことは沢山あるのだが、詰め込み過ぎて、疲れて寝てしまう。小説を書いたり、他人の作品に入り込むと、とても満たされたような気持ちになる反面、人とあったり労働するのがとても恐くなる。労働しても正気って、不条理小説みたいで奇妙で恐ろしい

ルフレッド・ド・ミュッセ『ガミアニ』読む。謎に包まれた妖艶な伯爵夫人は、令嬢を寝室に誘う。そこには既に夫人に惹かれた青年がいた。軽妙洒脱な戯曲とは異なり、スキャンダラスな性愛小説。刺激の多い現代人が見るとやや退屈かも。それでも、最後まで読ませる筆力は見事。

金子信久『江戸かわいい動物』読む。権力や宗教のためではなく、江戸時代では人々の楽しむ為の絵画も花開いていた。空想やデフォルメ、或いはリアルな動物の姿。とてもかわいい。それは、画家の動物への温かい眼差しによるものだろう。好きな物を自分の美意識で真剣に描く。愛のある物はカワイイ。

解説・監修 海野弘『日本の装飾と文様』読む。彼の監修したシリーズの本は大好きで十冊以上持っている。のだが、この本はどうだろうか。範囲が縄文から江戸としているせいか、広く浅く。とてもハイセンスな学校の教科書というか、有名な物を集めたカタログのような。見て楽しいが、驚きは少ない

渋谷の本屋で本棚を見ていたら、隣に歩いて来た女性二人が会話をしていた。
「ねえ、今度ザリガニ釣りに行かない?」
「えー。男釣るなら行きたーい」

渋谷は今日も平和です。皆さんは何を釣りたいですか?
俺はファミコンのソフトを釣りたいです。

昔DSのでコンタクトというゲームがあった。色々できるアクションロールプレイングゲームで、釣りをするコマンドがあり、バスタブに釣り糸を垂らすとファミコンのソフトみたいなのが釣れて、ドキドキした。

沖縄にファミコンを釣りに行きたいな。

宗教に関する本を読むと、救い、帰依する人の救われたいという心情等が出てきて、毎回引っかかる。俺は神様がいて欲しいし(信じてないが)宗教美術とか好きだが、救われたくない。というか、何で神様が人を救うのか理解できない。
人を救わない、人間に有用ではない神様や悪魔や天使のことを考えると、気分が軽くなる。ゲームのバグのような、天災のような、無慈悲すら与えてくれない、残酷な知覚の外部について思いを馳せ、憧憬の火が灯ると、怠惰な俺の身体に血液が循環する。悪魔や天使や神様、人間のことを愛さない彼らのことを思うと健康になると思う。トマトジュース飲んで彼らを思い健康に

『「琳派」の迫力と美しさ宗達光琳』読む。子供向けの本だけど、大人が読んでも楽しめる。俵屋宗達の生没年不明➡古い時代の有名な画家の記録は貴族や寺のために仕事をした人のが主。琳派の繰り返すモチーフや真似る実物の説明、実物大の絵画の画像等琳派の魅力を分かりやすく伝えている一冊。

蓮實重彦『光をめぐって 映画インタヴュー集』また読む。ゴダールビクトル・エリセとの対話が特に好きで、(ゴダールとの対話でも上映時間についての言及がある)蓮實がエリセに貴方の映画は二本とも一時間半で、いま一時間半の映画を撮れるのは貴方とゴダールだけ、と発言していて、とても好き

ゴダールの全方位悪罵が気持ちいいのは、的確である(ように感じられる)こともそうだが、彼自身が文化を映画を愛し闘っているから。蓮實に『パッション』の映画監督は光が撮れないと悩むが、あの映画の光は素晴らしいと言われ、カメラのラウル・クタールの照明が見事だから残すというやりとり好き。

ローベルト・ヴァルザー『ヴァルザーの詩と小品』読む。スーザン・ソンタグの「散文によるパウル・クレーだ」という文に惹かれて読んでみると、確かに繊細で臆病で子供っぽさのある作品達。だが、読み進めると、作者の憂鬱、どこまでも忍び寄るオブセッションに、アンナ・カヴァンに近しい恐怖心

があるようで、彼女よりはユーモラスな作品なのだが、解説で精神不安で嘲笑の声が聞こえたり自殺未遂したりして療養、という文を目にして落ち込む。茶目っ気があって臆病で素直な眼差し、子供のようにな感受性を持つ作品の魅力に通底する精神不安。アンナ・カヴァンもだけど元気な時に読むべき本かも

林綾野『画家の食卓』読む。画家が描いた、口にしたであろう料理(モチーフ)を再現。自分には無い視点で物を見ている。楽しい。宮廷肖像画家のリオタールの描いたチョコレートを運ぶ少女の絵に蜂蜜も砂糖も描かれてない、画家はストレートのままが好きでは?等細やかな視点が絵を見る時の魅力を増す

『別冊太陽 円山応挙』読む。画が上手いとか画力があるというのは、褒め言葉ではないこともある。しかし、応挙の日本画は、写生は、上手すぎる。物を捉える画力が実物以上の魅力を引き出していると言っても過言ではないはずだ。俺は大胆な画やデフォルメを好むけれど、応挙の画を見ると完成された構図

の素晴らしさに清冽な心持ちになる。無駄の無い絵。俺は写実や写生をわりと軽く見てしまう所があるのだが、彼の作品を見ると見たものをかくというシンプルな行為に思いを馳せる。応挙だって、実物を見ていない虎はデフォルメが大きく、見ていて楽しい。しかし、見たであろう動物の画が本物以上にすごい

菫のチップが入ったチョコレートを食べる。チョコレートはやや甘さ控えめでおいしい。菫の味や香りは弱い。食べ終わった後に口の中に僅かに残る。その主張の弱さも、菫らしいというか、菫のチョコレートと言うだけでかわいらしいというか、とにかく俺はかわいい物や菫に点が甘い。

図録『古径と土牛』読む。師弟関係(兄弟弟子)にあった二人の作品が収められている。日本画と西洋画のどちらの影響も受けた彼らの絵は、とても心地良い。真面目な、物を見て描く絵だ。この印刷では分からないかもしれないが、実物は古径はぽってりとした塗りの暖かさ、土牛は柔らかな線の魅力を感じた

https://youtu.be/AjlSyiCGm9k
心がやさぐれ、ミレニアムの素晴らしいアルバム聞いていて、there is nothing to sayが本当に素晴らし過ぎて震える。超好きなgreat3もカヴァーしていて、そちらもめちゃくちゃ良い。アキトの甘く優しく寂しげなヴォーカルがたまらない。良い曲は一瞬、世界を変える。

ウィリアム・モリスのフラワーパターン ヴィクトリア&アルバート博物館コレクションを中心に』読む。手に取りやすいサイズの大きさだが、図版が大きくプリントされているから、モリスのデザインを見るのに丁度良い。植物の曲線と主張がありながらも調和した構図は、見飽きない魅力がある。

『浮世絵でめぐる江戸の花 見て楽しむ園芸文化』読む。浮世絵は江戸時代に花開いた町人の絵画の文化。また、江戸時代は植物栽培がとても盛んで人々の生活に根付いていた。歌舞伎も人気。浮世絵の中に描かれた花の説明や、当時の風習への丁寧な紹介が有難い。勉強になるし、浮世絵への理解が深まる。

人に渡そうかなと、相撲特集の芸術新潮を買い、中を見たら中平卓馬の名前があり、あ、渡せないやと思った。聞き手・文 大竹昭子とクレジットがされており、その文章は本で読んだはずなのだが、見たことがない写真が見られた。嬉しい。記憶を失った彼が撮った、息子の写真についての下りがとても良い。

『クリスチナ・ロセッティ詩抄』また読む。画家でラファエル前派の、兄ゲイブリエル・ロセッティのモデルにもなっている。彼女の詩は神や自然や思い人に捧げられたもので、その多くが哀しい色を帯びているようだ。しかし、品があり、強さを感じられるからか調べは美しく胸に迫る。野の花のような詩人

蓮實重彦 山根貞男編『成瀬巳喜男の世界へ』また読む。関係者へのインタビューや監督らのエッセイを集めた一冊。やっぱり蓮實の文書がとても良い。二間、狭い日本家屋や光について執拗に書いている。ある監督ならば、映画は男と女と光で作れてしまう。庶民的な、というより辛い立場に置かれた女性の生き様が描かれる成瀬巳喜男の映画。息苦しさや逃げ場がない(逃げ続ける)中でも、女性の強かであったり必死な姿を見ると、多少の痛ましさと共に美しさを感じてしまう。それは、作られたセットや光(そこからの脱出)によって作られている。陰影と明暗に注視して、また彼の映画を見たくなる。

ジョン・エヴァレット・ミレイ ヴィクトリア朝 美の革新者』読む。ラファエル前派の作品だけではなく、アカデミーでも成功を収めた彼の様々な作品が収められている。大きな図版に加えて、一部分も大きく並べられてい為、筆致も感じられ見ごたえがある。可愛らしい子供の絵も多数あり楽しい。

フィリップ・ガレル『内なる傷痕』また見る。一時間という短さが良い。映画というより、ニコのMVでは?ともおもうけどそれでも良い。彼女の叫びや嘆きの様な歌声が痛ましくも心地良い。言葉はあっても一方通行で、入口も出口もないような風景が続くのも好きだ。広漠とした景色で見るものも迷子になる。

アンドルー・ラング『書斎』読む。19世紀の小説家であり詩人の著者による本への偏執的なこだわりを披露。とはいえ、読みやすい文で押し付けがましくなく品もある。美しい本を愛するのは訳者の生田耕作にも通じるか。俺は読めればいいけど、麗しき本の奴隷になれるのは、きっと紳士だけ。

渋谷Bunkamuraザ・ミュージアムマン・レイと女性たち』見る。彼の作品はちょくちょく目にしているが、一度に彼だけの作品を見るのは初めて。惹かれた女性と新しい表現を続ける姿は知っている作品が多くても楽しめた。ランプシェード?をモチーフにしたイヤリングをしたドヌーヴ美人過ぎる!

ビクトル・エリセ監督『エル・スール』また見る。好きな映画なのに、何て感想を言ったら分からない。色んな美しさや微笑ましさがあるけれど、ずっと不安が物語を包んでいる。しかし、それに対峙する覚悟があるから、単にセンチメンタルな映画なんかではない。人の生活の楽しさや哀しさを思う。

宇山あゆみ『夢のこども洋品店 1960-1970年代の子供服アルバム』読む。題名の通りの本なのだが、見ていてとても幸福な気持ちになった。それは、我が子に素敵な洋服を着せようとする親の暖かさが伝わってくるからか。紹介されている洋服はどれも可愛らしくて品がある。小さい頃の記憶が蘇る一冊

いつものエレガントで使いにくいカップではなく、シンプルなノリタケのマグカップを買った。ノリタケは値段がお手頃価格なのに品があって使いやすそうなのが多くて有難い。マグカップ毎日使おうっと。

ゴダールの『イメージの本』また見る。88歳の映画監督がまだ新しい表現を探りつつ挑発的な映画を撮ってるってやっぱり凄い。様々な引用とコラージュ。必ずしも好みではないものもあるけど、音(無音)の使い方が一番上手い映画監督ではレベルで心地良いし、また見たくなる。

ヘルダーリン詩集』また読む。現実の生活よりも自然や古代ギリシアの神々を見て讃えていた詩人。三十代で病気になり、後の人生を塔の中で過ごす。古き時代の、見えない神への愛が人を狂わせるのかと感傷的な思いがよぎるが、彼のロマンチックな詩は品があり美しく、それだけでいいのかなとも。

デパ地下で立派な桃買う。とても大きくて、いい匂い。
冷やして食べてみる。あ、まだ固いぞ。もっと熟してから食べれば良かったと思ったが、柔らかい部分はとても甘くて美味しかった。見た目が良い物を口にすると、ふんわかほわほわした気分になる(平和なべ)

花の本を読んでいて、ゲーテの菫の詩を思い出し、ふと、花の口づけというキャンディの味を思い出す。まろやかで甘酸っぱくて、何よりネーミングが良い。海外だとflower kiss candyとして売られているそうだ。とてもかわいい。

三井記念美術館、『自然が彩るかたちとこころ』日本画茶道具等見る。
特に二つの作品がめっちゃくちゃ良かった。本阿弥光悦 黒楽茶碗 銘雨雲。黒い茶碗に靄のような、雨雲のような模様が入っており、器の形も飲み口は薄く少し歪んでいるのに全体が調和していて品がありとても素晴らしかった。

中でも本当に凄かったのが円山応挙 雪松図屏風。印刷されたものではなく、対になった大きな屏風を見ると圧倒される。本当に新雪(描かず地の白で表現)が量感をもって迫ってくる。松の葉の広がる力強い表現。その上に白い雪が広がる姿はこの世の物とは思えない、円山応挙の卓越した『写生』の力を見る

 日本画って印刷されたものではなく、実物を見なければなあと、素晴らしい作品に出会う度に思う。屛風絵、家に飾りたいが置けるスペースがない。金もない。

https://youtu.be/GbmsUw0-Ogw
いえにこもってバッハのハープの演奏で、不健康な人間が不健康な小説を書く。たまらずに外に出ると、雨の中でも民家のラベンダーの香りに出会う。気分が良くなり、歩きながらグールドのバッハのイタリア協奏曲3番聞く。脳を愛撫されるような幸福。家でも外でもバッハは万能薬

A・アルトー『タラウマラ』読む。メキシコのタラウマラ族との出会い。ペヨトル(薬物治療)/ダンスの儀式によって受ける啓示のテキスト。精神病院に何年もいた昔の芸術家が薬物と未開の地の儀式でラリった。って書くと安っぽくなるし、そういう見方も必用だと思うが、アルトーの思想への理解が低い俺

ではあるけど、彼のテキストは胸を打つ。それは本気であること、ポエティックな美しさとダイナミズムを感じるからだとおもう。本書でのキリスト教に関するアルトーの言及は、錯綜しているような。俺の理解が低いのか。143pの愛と神について語っている部分は美しい。神に近づこうとすると気が触れるのか

youtu.be/0sDleZkIK-w
バッハ関連のYouTube流しっぱにしていて、アンドラーシュ・シフの演奏が上品な優等生って感じでずっと聞いていられた。情緒不安定な小説制作のお供に、優雅だが控え目なピアノはとても助けになった。有難い。

城一夫『日本の色のルーツを探して』読む。色にまつわる文化や歴史を紹介。金色で琳派婆娑羅という項目で傾く日本文化紹介楽しく読める。中でも中国の水墨画での技法、墨は薄めると「焦 濃 重 濃 淡 清」の5つの諧調を作り、この「墨の五彩」で有色に劣らない世界を表現する。ここ深く知りたい

 

 おっさんになり、そろそろ身体と精神にガタがきているのを日に日に感じるようになってきた。芸術家が気がふれる、というエピソードを見る度に明日は我が身だと思う。それと同じ位、ヘンリー・ダーガーのように低賃金労働を続け、自閉的な作品で自分を慰め死ぬのかなとも思う。

 でも、まだ作りたいものがあるから、それまで正気で。つーか、変換で最初に瘴気って出たんだ。おそろし。