みんなの心に無人島を

ドナルドでむしゃむしゃしておりまして、また、携帯電話をなくしまして、やべえやべえ思いながら慌ててゴミバコの中を漁ったのですが発見できずに「オイマジヤベーよ」てな感じだったんですが、ふと、ポケットに入っていたことに気づいて「あーじゃあ仕方ないよねー」と思った俺は現代社会で生きるにはちょっと「あいたたた」なのでそうだ無人島に行くしかないよ! ということでは全くないのですが『キャストアウェイ』という映画を見ました。以下ネタバレあります。

 恋人がいて仕事もできるサラリーマンが飛行機事故で一人無人島に流れ着き、そこで四年暮らし、戻ったら浦島太郎状態、でも俺は生きるさ、という内容で、メガテンのDSをプレイしながらぼんやりと瞳に映していました。

 そもそもこれを見ようと思ったのが、きっかわこうじさんがテレビで無人島生活をしていまして、この映画に影響されたから、とのことで俺も見てみたいな、と思ったのです。

 てか、俺、無人島、というものがすごく好きで、無人島が主題なら駄作でもオーケーというかむしろ駄作凡作(俺の心に響かない)佳作の方が頭空っぽで見れるから好ましいというか、まあ、現実逃避に違いないんですけど、そんなことはどうでもよくって、無人島!ってわくわくしません?あ、そう。

 その映画もDSの二週目のゲームをプレイしながら鑑賞という品のない消費のしかたをしたけれど、俺にはそれが合っている。同時に幾つかのことをしながら頭半分、意識散漫、ふとした瞬間に目に入る映像がそれまでの筋を把握していない頭に新鮮に映るのは刺激的でもある。

 数年前にパゾリーニの『アポロンの地獄』を見た。その時は映画だけを目にしていた(当然?)のだが、俺は好みの映画やとてもつまらない映画を見ている最中に考え事をする癖があり、細部を見逃すこともしばしば。『アポロンの地獄』を見ている最中にふと、既視感に襲われた。主人公の逞しい青年が旅をする道中を目にしながら、同じシーンを目にしたような、していないような。しばらくして、運命の悪戯で結ばれることになってしまう、母親との再会のシーンが映し出され、ようやくリモコンの変な場所をいじってしまったのだと気づいた。この映画は意地の悪いパゾリーニらしい素敵な映画だと思うが、俺にとっては繰り返す悪夢のような短い時間の、個人的な体験が心に残っている。突然、何の予告もなく、いつまでも繰り返してしまう旅。

 無人島、漂流をテーマにすると、カタルシスが訪れる脱出がクライマックスとして演出されるのが当然だといえる。『類推の山』が作者の死亡で中絶となった、「類推の」山頂を誰も拝めなくなったのが最高の幕引きとなったような、幸福な延長は滅多に訪れない。面白くも楽しくもなかった、『キャスト・アウェイ』が戻ってからの生き様を提示したのは、刺激とは無縁だ。映画の身震いする瞬間とは、迷い込んでしまったかのような、追想が思考が泉のように湧き出し霧散するような、あの瞬間にある。あくまで個人的な体験として、「繰り返す悪夢」は刺激的なものだった。しかしこれを再現すると一発芸にしかならないだろう。小説の270ページから先は同著の30ページから先と全く同じ内容です、なんてしたって、頭がいいと思い込んでいるセンスの無い人から褒められるだけだ。

 丁度同時期に『ゲームセンターCX』のDVDを片っ端から見ていた(DVDとしてのはこの時始めて目にした)。これは都合がいいことにほかの事をしながら鑑賞する用といってもいい位ゆるい内容(ありのとADがゲームをプレイする様子がまとめられている)で最高に面白かった。特典映像のあるDVDBOXを買おうかしばし悩んだほどだった。

 このDVDがヒットした理由は何と言っても、当時友人と遊んだ感覚を共有できるからだと思う。お笑い芸人が年下のADと一緒にプレイする様子は想像以上にゆるく、面白い。一回りも歳が離れた若者の行動にゆるいつっこみを入れる有野はかなり冴えている、というかこれを見て少し有野のファンになった(人は俺以外にもいるはずだ)。

 隔離されたテレビ局の一室で、お菓子と冷えピタを手に、仲間からの協力や歓声を受けるなんて、理想的な、終わらない夏休みのような、強引に日記の内容に擦り寄らせると「終わらない無人島生活(期間限定)」が味わえるなんて、とても素晴らしいことだ。

 丁度一年位前に、俺は社会でこの先しごとが無理なら古本喫茶、もとい古本酒場を作って自分で経営すればいいじゃん、本当は古本屋がよかったけど、それだけで収入を確保するのが超絶望的だと分り一杯のビールで顔真っ赤になるのに客単価が高くなるアルコール販売をしようともくろんだ、けれど開店資金の500万を用意(普通はこれよりずっと高くなるけど、かなり安くすることも可能でしょう。その気になったら2、300万程度でも出店できるでしょう。その位なら俺でも作れるかもと思ったんす。まともな店になるかどうかは別として)する段階で借金はどうか、と思い実行力のない俺にしては珍しく不動産巡りまでしたけれど楽しい妄想の時間としてうっちゃっておいた、

 けど、何かあった時に、「自分用の無人島作ればいーじゃん」と思えば、気分が楽になることもあるだろう。きれいな、汚い、ノイズ・ミュージックを流しながら、ぼんやりするのが仕事なんて! 最高の無人島生活だ! (その代わりすぐに潰れる=無人島における死亡、だろうが)

 金のかかる無人島よりずっと安上がりなのが、友人の家に集まりファミコンをプレイすることなのだけど、さすがに世間では俺みたいにふらふら生活している人は少数で、しかも「なーこんどてつやでファミコン大会しよーぜー」って、小学生でも言わねえよ! でも、最悪、電波力(は?)を高めれば「ひとり大会」でもいいわけで、いいのかしら、いいんです!(カビラ)。いや、まあ、楽しみが増えるのはいいことですよね。うん。そういうことにして。