徒花人生

新しい仕事がはじまった。覚えることがとても多いという注意を受けていたが、かなり参ってしまって、毎日辞めるかどうか考えていた。五日勤務中、帰宅後四日間も気づいたら寝落ちしていた。

 腐りきった身体と頭にはきつい。でも、今の所を辞めても行く場所は無し、支払いは待ってくれない。頑張らねば頑張らねばと思いながら踏みとどまっている。

 まあ、薬飲みながらだけど、なんとか本や映画を見られるようになってきた。でも、ずっと焦っている。何も小説が書けていない。書きたい物語はある。でも小説を書くには、精神の安定と共に自分自身の自己肯定感が大切だと思う。

 俺が作る話、それに出てくる登場人物は俺とイコールではないにせよ、傲慢、狡猾、情緒不安定、自信過剰、愛情過多、そういう人物像を「作り上げる」或いは「演じる」には自分もそれなりにテンションと気分が高ぶってないとできない。俺ってダメ人間、なんて拗ねた気持ちじゃあ作り出せない人物像はある(そういう登場人物だけが求められる物語ならそれはそれでよいけれど)

 気持ち悪い言葉だが、自分を好きになるということが制作には大切だ。俺は、持て余しているというか、よく分からない。恐ろしいことに。それに感情の波に自分自身でついていっていないのと、金欠と生活の不安から色んなやりたいことを抑えている。

 でも、やりたいこと少しずつやっていかなきゃな。最近それなりに映画を見ているが、見るだけでも少しずつ精神が回復している気がしている。映画の中の豊かな世界、かりそめの偽りの二時間以下の輝かしい幻。

 そういうの、俺も作っていきたいな。

雑記、感想

ダグラス・サーク監督『風と共に散る』また見る。石油会社の社員と道楽者の若社長は親友。若社長は美人秘書をものにする。主人公は親友のために恋心を諦める。若社長のの妹は主人公が昔から好きで、叶わぬ恋のために大きな嘘をついてしまい……

正直、ストーリーはあんまり好きではないし、登場人物が(俺にとっては)あんまり魅力的ではない人ばかりできつい。にもかかわらず感動してしまう、サークの凄さ!相変わらずの構図の美しさ。ご都合主義的メロドラマに引き込まれる。主人公のロック・ハドソンは、見た目はカッコいいけど、わりと

冴えないというか、やるときはやるけどメロドラマの主人公としては魅力に欠ける気がしないでもない。とはいえ、男前だがあんまり演技も上手くない(と思った)のが役柄にハマりまくり。若社長の迫真の破滅ッぷりとは対照的でこれはこれで良いのかも。この内容を90分台に収めてるのもすごい!

酒井抱一 誹諧と絵画の織りなす抒情』読む。大名家で生まれながら市井で生涯を終えた抱一。彼の作品と歴史を誹諧を通して紐解く一冊。抱一が傾倒していた其角について、前に少し目にしたかな位の俺にとってはかなり難解な箇所も多かった。しかし、琳派の中でも派手で煌びやかとは少し違う

立ち位置であることを丁寧に説明してくれている。出家しているのも知らなかった。墨梅図、と言う作品においては、琳派に特徴的なたらし込みではなく文人画を彷彿とさせる筆致を重ねた墨絵で表現。かつて光琳の『風神雷神図屏風』の裏に表装されていた抱一の代表作『夏秋草図屏風』について詳しく解説

華やかな金の琳派、というよりも銀の枝垂れる野性の草木というアプローチは琳派という枠でくくれない物悲しさと広大さを感じられる。不勉強でちゃんと本書を理解していない面も多いが、抱一の魅力に触れられる良書。カラーページに小さくある白蓮図、大好き過ぎる。

ジャン・ルノワール監督ジャン・ギャバン主演『フレンチ・カンカン』また見る。幸福な映画。ルノワールは人々の生々しい動きを捉えるのがとても上手いので、乱闘やダンスのシーンが本当に魅力的で目の前でショーがくり広げられているような迫力がある。多くの登場人物が恋をするのに、

結ばれずに終わる。

ラストでヒロインがギャバンに裏切られてもう出ない!

俺は客を喜ばせるのが仕事で、辞めるなら優秀な演者を失ったという意味で残念

やっぱり踊る!踊るの大好き!恋をしましょう!

の流れが映像の素晴らしさと共に、フランス映画の恋と無常さと幸福といった魅力つまっていて大好き

オクトパストラベラー2ようやくクリアした。1がとても面白かったが、一からさらにパワーアップしていて大満足。三でたら是非やりたい。最近はコンシューマゲームほとんどやらなくなったけど、こういうスーファミおじさん世代に刺さりまくるスクウェア黄金時代rpg本当に好き。

以下ネタバレ含む雑な感想 

 最初は一の方がキャラはいいなーと思っていたが、ソローネとキャスティがとても良かった。

親を知らずに殺しを教わってきたソローネ。でも組織を抜け出し「ファザー」と「マザー」を殺して自由になってみたい。という流れなのだが、ファーザーとのやりとりはとても良かった。それだけにラストは少しがっかりかも。ファンタジーだから長命の存在がいても普通だけどね。生臭い人間ドラマの中に不死に近いのが出てきたのでどうかなと思ってしまった。

 逆にキャスティは最初は謎解きにそこまで興味が無かったのだが、エイル薬師団という自分が組織していた薬師団は何? というのを導いてくれていた人物が命の恩人であり団員で、彼らを「固有コマンド」で、自らの手で(プレイヤーがそのコマンドを入力して)眠らせるというのはぐっときた。ゲーム的な演出としてすごく好きだし優れていると思う。

 ストーリーに介入しているような気分にさせてくれるし、キャスティの「眠らせる」という固有コマンドはあまり使わないのだが、ここでつかうのかーとぐっときた。そういう意味ではパルテティオのラストの買い取るも良かった。暗いストーリーが多いので、パルテティオの物語は商人奮闘記!って感じのエンタメで良かった

最初はオズバルドで初めて、最初はわくわくしたのだが、それ以降は想定内過ぎる内容で、楽しめたしキャラ的にも好きだが、強い感銘は受けなかった。

逆にテメノスは皮肉屋の石田彰ボイスかよ、と最初は小食気味だったのだが(石田彰の声も演技も好きだが、石田彰なら謎の口が上手いキャラでしょ、みたいなのをアニメに詳しくない自分でも何度か目にしてしまったので)、あるキャラの死から少しずつ彼自身も変わっていって、最後の一枚絵はお墓の前ってのも切なくて良かった。

あと、1よりかなり戦闘が簡単になっていた。1だと雑魚敵ですら少し強いのと戦うと全滅したし何度も全滅した、が、今回はニ三回全滅だけ拍子抜けした。まあ、それでもこの位が丁度いいバランスかも。

物語としては1のプリムロゼのが悲劇の復讐劇って感じで一番好きだった。でも、2は遊びやすさもストーリーもパワーアップ。感想を書きたくなるゲームなんて久しぶりだった。ゲーム、やってかないとなー。俺の好きな昔のコマンドRPGとか死にかけだけども

めっちゃ面白いゲームが終わった後の虚しさと充実感って、なんか久しぶりに味わったな。ゲームって何十時間も自分で操作するから、ゲームやりまくってると、いつしか終わりが怖くなる。でも、新しいゲームやらなきゃ、ゲームの乾きは癒されない。たぶん。

映画『トップ・ハット』見る。アステア&ロジャースのラブコメミュージカル。ストーリーに何も言うことはないけど、久しぶりに二人のダンスを見て、上手すぎて目が釘付けになる。オリンピックとか見ないのに、何故か映画の彼らのダンスは上手くて素敵で感動してしまうのだ。

不思議なのは、俺はフィギュアスケートとか舞台のダンスとか、特に興味が無いし生で見たら違うのかもしれないが、映画だと、物によってはめっちゃくちゃ感動してしまうのだ。何でだろう。編集で美味しい所だけ(シーンだけなら)数分で収めているから?(俺は集中力がとてもないので)

『作家の食卓』読む。様々な作家の好んだ料理や店等と本人の作品も紹介。コロナ・ブックスのシリーズで、写真がすごくセンスが良い。器とか小物にもこだわっている。個人的には永井荷風森茉莉のエピソードが微笑ましさと物悲しさを感じる。単に好きな作家だからか。宇野千代とか檀一雄とかは

食べることへの幸福さが伝わってくる。作家の小さなエピソードによって、色んな想像、空想がわく。物を食べるって幸福なこと。そんな当たり前なことをそうかなあ考えてしまうのは、俺が微妙な状態だからか。

朝の満員電車で心が腐っている。セロニアス・モンク聞きながらぼんやりしていたら、近くの人の腕にダリアらしきタトゥーが入っていていいなって思った。いつもどこでも花を。

研修始まったばかりで腐った脳みそに講義の中身が入らない。ここを首になって、どこにいくのか。行くところはない。 theピーズが脳ミソが邪魔だって歌ってる。正しい。正しくなくても荒々しいロックは気持ちが良い

『かわいい こわい おもしろい 長沢芦雪』また読む。わりと薄い本だけど、芦雪の魅力たっぷり紹介されていて何度読んでも楽しい一冊。彼は円山応挙の弟子で、写実的なのもかけるし、ユーモラスなのも一筆書きのスピードがあるのもデフォルメしたのも恐ろしいのも何でもかける。ここまで

芸達者というか、様々なスタイルを試みてやってのけた日本画家ってとても少なくて貴重だと思う。美術館で虎図を見てからずっと彼のファンだ。見飽きないかわいさ、迫力。45歳という若さで亡くなったそうだが、もっと生きたら彼は他にどんな物を残しただろうか。彼の作品をもっと見たいな。

メンタルグラグラで、帰宅。ルーリードの声が優しい。ヘ口インをきめているひとはみんな優しい、わけはないがルー・リードは優しい、かもしれない。まあ、声と音楽良ければそれでよし!単純な世界幸福な世界!

デレク・ジャーマン監督『エンジェリック・カンヴァセーション』また見る。映画というよりは、イメージの断片をシェイクスピアソネットの朗読とけだるく心地良い音楽で楽しむ感じ。彷徨う男、濡れる男、重なる男、タトゥーがある男を他の男が洗礼しているようなシーンが好き。休日に見るのにピッタリ

デレク・ジャーマンの映画ぼんやりみていたら、フィリップ・ガレルの映画をまた見たくなってきていて、(ニコの影響下、出演してるやつ)見なきゃ。でもさ、そういう映画とか音楽見たり聞いたりしてたら勤労意欲ゼロに近くなるの、俺だけ?元からか?。労働は悪。なんにせよ悪に惹かれる定め(は?)

 薬飲んで寝るかギャンブルという屑生活よりかは、仕事で苦しんでいる方がまだ健全なのか。世知辛い(は?)。

いつおかしくなるのか分からない、のをいつも俺は怖がっていて、それといつも作品を書けていない描けていないと自分を責め続けている。これを止めるには誰かの作品にふれる、そして作るしかない。徒花人生も40近くになるとさすがにきつい。ドライフラワーというよりも腐りかけの花。でも、それだって花は花だ。だろ?