great3のライブで救われるんだよ俺

やっと受かった仕事だった。でも、薬を飲みながらでは、無理だった。副作用の眠気と集中力低下。それと戦いながら、毎日速さと正確さを求められる、という煽りを受けてメンタルがやばくなっていくのを感じた。

 週五勤務で、帰宅後気づいたら寝ていて数時間経過していたというのが四回あった。目が覚めたのも一時とか三時とか、シャワーを浴びれずに出勤したこともあった。

 一応、及第点というか、そこまで悪い成績ではないにせよ、ずっと正確さと速さを求められ記録され口に出されるというのが俺の性格と合わな過ぎた。

 って、俺に向いている仕事なんてない。分ってる。俺のメンタルがやばいのと努力忍耐不足。でも、頭おかしくなるなら、辞めるしかない。

 こんな生活、大学卒業してから十数年続けていて、最近諦めと希死念慮が強くなってきた。頑張っても、先はどんどん暗く悪くなるだけ。選択肢も狭まって、無気力になって、終わるのかな。

 そんな中、無職でどうせ家で薬飲んで寝てるだけのはずだったのに、great3のライブのチケットをとっていたのだ。本当なら、一か月仕事頑張った記念で行くつもりだったのに、仕事は一か月も持たなかった。

 日本一好きなバンドのライブなのに、気力がわかない。けれど、せっかくのチケットを無駄にするわけにはいかない。色々な雑念を抑え込み、渋谷へ。

 ライブハウスの前には沢山の人が並んでいた。ライブチケットの予約は速攻でしたはずだけど、番号は182。俺は最前列が好きだし目が悪いしアキトの顔見たかったから、この番号だと厳しいなあと思った。

 でも、始まる前なのに、great3を好きな人がこんなにいるんだという当たり前の事実に、何だかわくわくしてきたのだ。今日時間を共にするが言葉を交わすことが無い人達。でも、俺の大好きなバンドを彼らも大好きなんだ。それだけで嬉しくなる。

 番号が呼ばれ、ドリンク代は払うが交換はどうでも良かった。早いですよーとスタッフが言ったペットボトルのお茶にして、急いで会場へ。すると、結構前の方に位置をとれた。もっと後ろと言うか、真ん中あたりかもと思っていたから驚きと共に、ほっとした。

 普段は色んな人と同じ空間でじっとしているのがとても苦痛だが、今日は平気だった。

 そしてライブがはじまった。

 最初の曲は 崖 だった。今回のエデン特急という題名からも分かる通り、ライブは初期の曲が多かった。で、崖を聞いていたら、すーっと高校の頃買った彼らのアルバムの感動がそのまま蘇ってきた。

 彼らは、彼らの演奏は若々しく力強かった。それにアキトの甘いボーカルが乗って、やっぱり最高のバンドだと思った。ライブハウスに全く詳しくないけれど、音響もとても良かったと思う。特に賢ちゃんのドラムが響いてぞくぞくした。

 以下、ツイッターでメモしてくれた方のセトリ。


マイクロマシーン
TAXI
玉突き
OH BABY
GOLF
モナリザ
LAST  SONG
SUMMER'S GONE
RUBY
METAL LUNHBOX
エデン特急

穴と月
STAR TOURS

アンコール
愛の関係
LITTLE Jの嘆き

もう、好きな曲だらけでどうしようかと思ったし、TAXIのサイケっぽいアレンジも最高だなーって思っていたらOH BABYまた聞けて(数か月前のコットンクラブでのリストと被るの多かったけど)すごく良かった。

 昔の恋も チョコレートでも 君が好きな物は 皆嫌いだ

 って歌って様になるのは片寄明人位では??? って感じだよ。甘くて不器用で必死でかっこ悪いのに、ほんと愛おしい。

で、大好きなGOLFが今回も聞けて気持ちよくって、コットンクラブの時よりチップチューン強めピコピコ感強かった。というか、全体的に曲が激しく力強くて、何十年もやってるバンドとは思えない攻めたスタイルがかっこよかった。

LAST  SONG
SUMMER'S GONEで、なんかすごくセンチメンタルな気分になって、初期のアキトの詞は甘くって、大好きで、少し気恥ずかしくなる位だけど、今もそれを歌いこなせるのはさすがだなあとうっとりしていたら、次に流れたのは、RUBY

前回のコットンクラブではアンコールで流れて、俺は違う回だったから聞けなかったのだ。

もしかしたらgreat3の中でも一番好きかもしれない曲が流れ出して、頭が一瞬真白になった。曲が流れたばかりなのに、「終わらないで」と思ってしまった。

 感動する、というかぼんやりしてしまった。でも、流石にさび近くで我に返る。アキトが 

 愛の回路 心から血が 流れ出して止まらない

 愛さないで 流れ出して止まらない

 って歌ってるんだ。もう、本当に幸福だった。RUBYは、大好きだったgreat3を大好きから日本で一番好きなバンドにしたきっかけの曲だった。ジョン・マッケンタイアも超好きなのだが、彼がプロデュースした、RUBYが収録されているアルバムは、本当に全日本人に聞いて欲しい位クオリティが高く甘く身を切るような痛みに満ちた最高のアルバムだ。

 
次のMETAL LUNHBOXで、元々高かったお客さんのテンションも最高潮になった。手を上げ声を上げ、会場が揺れているのを感じた。ああ、みんな彼らが大好きなんだ、大好きでここにいるんだなあと思って一人感動しながら俺も高く手を上げた。

 STAR TOURSが終わり、やっとアキトが少しずつ話し出した。以下、うろ覚えや記憶違いとかあると思うので、あくまで俺の主観とか入っていることに注意して読んで欲しい。

アキトは楽しそうだったし、たのしんでるー?って言ってた。こんなにお客さん来てくれて嬉しいって。この年になると自分のことで頑張ろうなんて気は起きないけど、喜んでくれる人がいるなら頑張ろうかなって言ってくれていた

 そんで、数年前の愛の関係のライブの時も言っていたんだけど、毎回これが最後のライブかもって思ってやっているんだって今回も言っていた。

 それだけ、ギリギリの戦いをしているんだって思う。それだけ真剣で、本人にしか分からない葛藤があるんだと思う。でも、それでもステージに立つ彼は輝かしく、カッコ良いのだ。

 アンコールは愛の関係で、曲も盛り上がりも最高! 終わった後アキトがこの歌詞良いですよねー 明日死ぬかも(言葉は違うが、確率として、誰かとは、もう会えないかもしれない的なニュアンス)しれないし、とか口にしていた。

 それはネガティブと言うよりも諸行無常な、当たり前の話をしていて、口調は軽かったが、そこに真剣さを感じた。会えないかもしれないできないかもしれない、だからこそ真剣にやる。真面目で繊細な彼らしい言葉だった。

 あと、今回会場に来ている人は色々な生活があって中には大変な人もいるかもしれないけれど、来てくれてありがとう 的な事を口にしていた

 俺じゃん。と思ったけど、アキトが俺のことを知っているわけがないの位理解している。ギリギリ、ガケ、崖っぷちにいる人も沢山。一見幸せそうな人も見るからにヤバい人もそれぞれの辛さを内に抱えて、死に向かって歩いているんだ。

 でもアキトは楽しそうに「音楽っていいですね」って笑って口にしていた。本当だよ。アキトの音楽で、生きる力を貰えている人がいるんだ。俺以外も沢山。

アンコールのラストはLITTLE Jの嘆き

甘くて切なくって、キャッチーなメロディ。50を過ぎたアキトが若々しく歌えるのに、胸が熱くなった。アキトは俺も大好きなチェット・ベイカーが大好きだって言っていて、甘くて危ういボーカルの魅力について語っていたけど、俺にとっては二人共同じだ。甘くて危うくて最高だ。

 一時間半のライブが終わり、忘れていた満足感というものに包まれていた。暗い沼の中に俺はいて抜け出せないけれど、今いる場所をフラットに見ているような気がした。

 初めて渋谷に来た時。高校生になってgreat3のアルバムを買って、片っ端から買い揃えていた時。世界は知らないものばかりで沢山欲しくって、自分も何かの手段で誰かと友達になれたり、お金がもらえる物だと思っていた。まあ、そういうのが駄目でも、どうにかなるって思っていた。

 でも、40近くなり、もう、その空元気は通用しなくなってきた。病状の悪化、落ちる面接。書き続けて投稿して、自分ではいいと思っても評価されない小説。人とのつながりも難しくなってきていた。

 そろそろかなあ、俺、傍から見たらただの怠け者だけどさ、美術とか好きなことに関しては真剣だったんだ。自分でその点については自信を持って頑張ったって言える。

だから、もういいかな。自分で死に方を選びたいな。

 そういう希死念慮と諦めが年々強くなっていて、処方箋は眠気を強くするばかりだった。新しい物、すごい物あるのはわかるよ、でも、俺が大好きな作品、昔の死んだ人の作品ばかり愛しすぎて、もう、満足してしまったんだ。

 そんな甘ったれた沼の中の俺。

 今日のライブを体験してもう少し頑張らなきゃなって思った。大好きな映画や小説とかを見ている時に、たまに自分の書きたい小説やシーンが(今見ているものとリンクした内容ではない)ばーっと頭に浮かぶことがある。

 それだけ俺が集中力が無いというか注意力散漫なのだが、今日もそれがあった。それって、俺にとってはとても最高の時間だ。好きな物に刺激を受けて自分の中の物語が動き出す。

 だからありがとうgreat3 ヤン けんちゃん アキト

 ありがとう。俺が好きな人は、傷口をひけらかさないけれど、きっと傷口を持っていてその中に死を孕んでる。そして、幸福が好きだ。

 俺は死や不安や不幸に依存しすぎて、幸福に目を向けなきゃな。そんなのだけに依存するのはかっこ悪い。

 かっこいい人がいるから、俺もかっこよくなろうって思えるよ。

 この魔法は数日で切れるかもしれない。音楽を聞いている三分間だけ聞いている処方箋みたく。でも、魔法をかけてくれる人たちのことを思うと、俺は生きなきゃって思うんだ。