風景画

CDがありまくって困ると言うか、買ってきたCD、割と当たりが多いんじゃないか、というか、cassius [Au reve] jackie and roy[jackie and roy] e.b.i[deeply faullted area ……]とか、他にも未だ聞いていないCDがあってわくわく。

 とても出来がいいと言うか、今の気分にあっているというか、繰り返しかけているんだけれど、さすがにCD疲れしてきまして、ちょっと音楽から離れようと思ってGE○に行って来たんす。したら、380円以下のマキシ・シングル全て50円とかいうセールをやっていて、ていうか少し前からしていて、ちょろっとのぞいたら、プラスティック・トゥリーのシングルが超並んでるじゃないか!! プラのCDってあんまり中古屋に並ばないし、並んでも大抵いい値段する。ネットでも勿論。と、いうわけで、マキシ10枚買ってしまいました!! 2000年以降の、俺が丁度買わなくなったのばっか、全部聞いたことないやつ。これで500円とか、マジ感謝! 誰に? 海月、青虫、竜、太郎に。
 
 ヴィジュアル系ってくくりや言葉に抵抗感を感じる人ってわりといると思うけれど、要は男のお化粧バンドってことで、それでいいと思う。いいじゃん別に舞台で化粧しても(俺は化粧したことし、しないけど)。

 高校の頃、友人がヴィジュアル系のファンで、俺も聞いていた。今のヴィジュアル系に詳しくないけれど、昔はけっこう熱いバンドが多かったように思う。


 raphaelはメタル(詳しくないので、あくまで雰囲気が)とポップソングのいいとこどりって感じで、普通にヒットしそうな感じだったけれど、ヴォーカルが急逝してしまい、残念。黒夢は元気いっぱいで、SADSになる前の方が好きだった。カリガリヴィジュアル系というより歌謡パンクみたいで好き。でもCD手に入りにくい、てか高いので買ってない。dirはヒットチャートにも名前が出ていたし、メロディーも演奏も良くて、バンドとしてとても魅力的だった。でも、正直MACABRE以降のミクスチャー路線は、「洋楽っぽい日本バンド」というか、それならレイジとかリンキンとかマンソン聞くし。みたいな。いや、まあ、すごいとおもうんですけどね。でも、やっぱりお化粧バンドなら、メロディアスな旋律あってなんぼじゃないでしょうか? ガチで音楽というよりも、コンセプトとかルックス込みで好きでも、評価されてもいいじゃん。俺より確実にUS UK rock に詳しい、フェス大好き、漫画家の多田由美が、ミュージシャンで大切なのは「ルックス」と言いきっていて、かっこいいね!! だってさ、顔が良くて、「おまけに」歌も歌えるなんて!!!
クール!!

 ヴィジュアル系って、ぶっちゃけ、観客が「私を殺して/私に死に行く貴方を見届けさせて」ていうエクスタシー、カタルシスを得ることができるところに魅力があるんじゃないの? と、思っているので、最近のヴィジュアル系はホストあんちゃんロックって感じがして、全く興味が湧かない。ここまで露骨に言わなくてもいいかもしれないけど、てか、結局の所、俺はヴィジュアル系にそこまでハマっていなかったのだ。あくまでこれも、ファンではない外野の声にすぎない。
 
 から、その友達と疎遠になると、ヴィジュアル系の音楽はさっぱり聞かなくなった。好きは、好きだったと思う。でも、他に好きになる物は沢山ある。

 で、俺がヴィジュアル系の中で一番好きだったのが、プラスティック・トゥリーだった。彼らの音楽はよく「ヴィジュアル系らしくない楽曲の実力派、(UKロックの影響を受けたバンド、とか書かれていることもあるが、ロックにあんま詳しくないので、そうかも、位に感じている)」とかいう微妙な褒め言葉で形容さることが多い。音楽誌でも書かれたことがあるし、アマゾンのレヴューでもそんなのばっかだよ。

 でも、俺も友達に紹介する時に、そういう風に言ってしまうかもしれない。バンド・サウンドとして聞けるのだ。もしかして、似たような立ち位置は、ブリグリ?(フェブラリーやヘブンリーは超好きだけど、ブリグリは、あ、うん、好きだよ、程度)。

 でも、ガチでバンドサウンド、ロックが聞きたいなら、やっぱ洋楽すよね、と、当時、二十歳前後の俺は思っていた。だから積極的に聞くのはやめていた。これは今もたいして変わらない。洋楽至上主義とかそういうことを言っているのではなく、それぞれが違う良さがあると、そう認識しているだけだ。

 プラの曲はとてもポップで物悲しく、ふと、これは歌謡曲に近いんじゃないか、と思うようになっていた。J-POPではなく、歌謡曲。良質の歌謡曲は、いつだって、そのジャズの香りの下に、物悲しさをたたえていた。それがこのバンドの音楽にはあった。少し気恥ずかしいような、でも、良質のポップソング。歌謡曲ではアイドルが危うさを受け持っている、そこをヴォーカルの竜太郎が担当する。彼の声は、とても「ヴィジュアル系」っぽい声というか、まあ、多くの人が「きもちわるい」と感じるような声、なのだが、ファンにはそこも大きな魅力になっているのだ。岡村ちゃんのあの過剰なファンキーさ、カヒミカリィぶっきらぼうなウィスパーボイスと同様に、竜太郎のあの「危うい」声は、一度はまれば、とても気持ちがいいものなのだ。
 
 ここ一年で、プラのCDをまた集めだしていた。あまり見つかることが無い(欲しい値段で並んでいない)し、熱心ではないけれど、少しずつあつまっていく、物悲しくポップな、少しの思い出がよぎる楽曲達。絶望の丘、「ぬけがら」、May day 、本当の嘘、サンデー、スライド、ブランコから、ロケット。あ、俺、やっぱ好きだったんだ、彼らの事が。

 新しく聞いていた曲は、カップリングにいい曲が多かった。パラノイアとかlilacとか。でも、中でも藍より青くと言う曲が、とてもよかった。何度も繰り返してきいた。歌謡曲的な、すんごくポップで、どこか物悲しい楽曲だった。

 プラのことを思うと、アンドリュー・ワイエスのことを想起する。中学生か高校生の頃、とても好きな画家のひとりだった。彼の画に、寒々しさを感じていた。今ではたいして思わないけれど、でも、どこかであの、アメリカの風景のなかの少年、気村伊兵衛の津軽、三人の少年の写真に近しいものを(木村は今でも好きだ)感じる。ああいうのが、ずっと、好みだったのだ。そしてこれからも。

藍より青くの歌詞、


「思い出は持てるだけ持っていこうよ
 頼りない世界には必要

 消えないように 消さないように
 何もかも塗り替えていく

 藍より青く 君と僕の心 心 心
 涙の代わりになれるモノを探す 探す 探す
 流れてって空は黄昏に変わる 変わる 変わる
 心は目には見えないねって笑う 笑う 笑う」

  
 かなりポップな曲調で、竜太郎の危うい声で、作り上げられる楽曲。以前プラのスライド.という曲をとり上げ、「カジヒデキ」的だ、と言ったライターがいた。そのライターは、もっとJ-POPよりにしたら普通にチャートインしてもおかしくないバンドなのに、と語っていた。どちらも(俺にとっては)気恥かしくなるようなポップソングを書いている。どちらも、俺は好きだから、その意見には納得した。けれど、チャートインにあまりしない(でも十数年も続いているバンドなので、それなりに売れているのだ)ような「危うい」魅力で、いいじゃないかと思う。その魅力で、現在も活動をしているのだから。


聞きたい曲ばかりで、耳が疲れているが、幸せだ。