咲かして散らして札


 川村のニューマンの作品が百億ちょっとで売却されたニュースを知って、少しだけ動揺してしまった。あそこ、すごく広々としていて、いい美術館だし、日本(関東)でニューマンの作品を見られるのって、あそこだけだと思っていたから。ニューマンの作品がとても好きだから。

 でも、別のだけれど、館長と話をする時に、鉄板の、毎回繰り返されるような、常設展と変わりないような宣伝だけが発達した、カルチャーセンターおばさま相手のデジャ・ヴ展示みたいなのでも採算取れるかな、レベルらしくて、日本の美術館(に限らないけど)「経営」はとても厳しいらしい。だってさ、人が入らないなら、次ができないもんなー。

 残念だと思うし、ちょっと悲しいことだけれど、彼の作品を見られたことに感謝しようと思うし、好きな作家の作品を、これからも目にしていきたいなと思う。川村美術館にも、少し遠いけれど、また、行きたいなと思う。



 何だか最近色々と調子が悪くって、ちょっとなーって時に、借りて見る映画もアレな感じで。

 青山真治エリ・エリ・レマ・サバクタニ』を見る。彼の映画に対する俺の感想はかなり微妙なもので、好きじゃないのに、見てしまったり、気になったり。

 そう、彼が映画マニアで映画の才能がある、のは分かるのだけれど、でも、出来上がった映画自体が何だか陳腐、とはいかなくても、できのよいイメージビデオっぽい映画というか、引き気味の、陽光をうまく使ったきれいな画面はすごい才能のエリセを想起してしまう、箇所もないではないのだけれど、でも、それにしてもあんまりじゃないか、と思ってしまう箇所も多く。

 そういえばこの映画の主演の浅野忠信も不思議な存在で、正直、俺は彼のファンかもしれない位好きだし、いい人だと思うし、そこそこ彼の映画を見てきていると思うのだが、「演技」をしているのかが分からないというか、どの映画でも、良くも悪くも浅野忠信なんだ。自然、とかそういうのじゃなくて、浅野忠信が前に出る、のに嫌みではない、下手でもない、のに多少の違和感(がないのもあるし、素敵な俳優だと思うが)。

 実力があるのは分かる、けれど好みの問題? この監督みたいに?

 あと中原昌也が出ていたのも微妙、というか、俺は彼の小説が好きだし、映画評とかも好きなのだが、演技は、素人演技としか言いようがなく、仲良しだから参加したんでしょ? 位の感想を抱いていしまう、
 
 いや、この映画に「ノイズミュージック」が重要な要素として出てくるからこその起用だとは分かるのだが、その映画での「ノイズ」の扱い方が別に必然性を感じないというか、どっかの雑なラノベのプロットみたいなので、というかこの物語自体がそういうふうな、明らかな説明不足な世界の中の映画で、監督がそれを説明する気持ちがないのだからそれはそれでいいにしても、それならば、そこを打ち破るような何か強みが欲しかったというか、いや、冒頭の三十分近くの「無駄」な楽しさ、美しさはいいし、宮崎あおい(彼女の演技を初めて見た!)もいい味を出していたのだけれど、なんか、中途半端な感じが。才能ある人の独りよがりな作品というか、てか、元々俺がこの人と好みが合わないんだなというか。

 あと鈴木清順が原案、ということで知らない監督の『時の娘』という現代遊郭(吉原)ものを見てみたのだが、びっくりするほどひどくって、主演の演技の棒っぽさとか画面全体の古臭いテレビドラマ臭とか、誰が演技をしていても、監督のせいで(俳優のせいもあるだろうが)安っぽくなって、久しぶりに15分で、もう、限界だった。

 最近立て続けにもやもやしたりがっかりする映画に出会ってしまって、本だって再読が主で、うまく切り替えができないでいる。

 先日、中古でなぜかゴミのような値段で売られていた『東京鬼祓師(ものはらし) 鴉乃杜學園奇譚 』を再度購入した。このゲームは前に二周して、結構やりこんだので再プレイはしないかなと思いながらも、とりあえず、買ってしまった。

 初代はプレステで発売された、魔人学園シリーズという人気シリーズがあって、特殊能力を持った現代の高校生が風水とか式神とかの力を借りて、鬼とか妖怪とかと戦う、みたいな内容で、かなり人気作で、続編やパクリ作や外伝的作品がいろいろ出ている。

 これらのゲームの特徴は、人物と会話するときに感情入力システムというのがあって、「愛 友 喜 同 」という肯定的な返事と、「悩 怒 冷 悲 無(むし) 」といった否定的な返事をすることができて、それによってストーリーや仲間が変化したりする、当時としても画期的なものになっていた。

 このシリーズはノベル部分とシミュレーション部分が交互に挿入されるのだが、仲間と九種類の受け答えを選択できることにより、普通のゲームにおける選択枝よりもずっと「会話」している感がでているのだ。

 あと、このゲームが上手いのは、最初は「愛」みたいな表現をするとほぼ確実に嫌な印象(嫌悪や怒りといった画面では表示されないパラメータが上昇する)を与えるのに、そこそこ仲良くなったり、ここぞという時には「愛」が有効なわけで、しかも、男主人公が男にも(会話があるなら)敵のキャラにも愛をささやけるわけで、キャラの反応が代わったり(ツンデレ!)、変な反応を示すと、ギャルゲーとかBLゲーとかほぼやらないのに、何だか「やったぜ!」みたいな気分になれて楽しい。

 個別エンドもちゃんとあるし。まあ、家庭用だし、爽やかな感じなのが物足りない、かもしれないが、それはそれで、清々しいものに仕上がっているともいえる。一般ゲームで主人公の男が相棒みたいな男キャラに、卒業の時に告白してオッケー!って、はっちゃけ過ぎ、というか、そういう直接的な描写をしないから、一部の人らには人気が出たかもしれないし。

 この魔人学園シリーズのなかのある作品は、新宿が舞台になっていて、そこまで街に詳しいわけではないけれど、とても楽しくプレイできた。あ、あそこ行ったことある。みたいな。鬼退治に東京の神社を回るとか、スゲー楽しそうだ!

 というか、御当地ゲーム(?)というか、渋谷を舞台にした「すばらしきこのせかい」も山手線内で悪魔と殺し合いをする「デビルサバイバー」とか、地元民にしてみたらすげー楽しいわけで。早く悪魔か鬼出てこないかな!!

 そして『東京鬼祓師(ものはらし) 鴉乃杜學園奇譚 』では花札が重要なモチーフというか、花札(が従来のRPGにおける魔法みたいな位置)を使ってバトルをするので、かなりビジュアル的にも良かった。花札の絵柄って、かなり好きだ。

 仲間が花札の力で暴走して、身体から牡丹や菊の花を咲かせてしまうのとか「お前かっこいいからそのままでいいじゃん!」とかおもったし! 俺も身体から花々生えて欲しいな散ってほしいな。

 あと毎回挿入されるアニメもいい。主題歌が、というかボーカルがアレだけど。花と花札が散らされる、和風モチーフのアニメとかって、かなり惹かれる。ボーカルがあれだけど! こういうのって他でも作ってくれないのかな。ボーカルがアレだけど!

http://www.youtube.com/watch?v=u6CfbAHYuXY&feature=player_detailpage#t=10


 背中に花札の刺青を入れた写真を何度か見たことがあって、俺はめっちゃかっこいいとおもったのだが、なぜだか自分には似合わないというか、しないだろうな、と思った。背中に修羅や仏、みたいなのもかっこいいと思うが、自分はしないだろうな、と思った(これは金銭的なことではなく)。

 でも、花札なら、簡単に購入できる。今はなんと百円ショップにもあるのだ!! 任天堂(元々あそこは花札とか売っていた)製のを昔持っていたのだが、たび重なる引っ越しでなくしてしまった。花札に関しては、少し野暮ったい、昔ながらのデザインが一等すばらしいと思う。

 正直人とやる機会もないし、「こいこい」位しか分からないけれど、ちゃんと花札位買わなくっちゃ。花々を景色を見ると四季を思う。四季を感じられるならば、まだまだ大丈夫だって気になる。

 悪魔も鬼もいなくても、他にもいろいろあるんだって、その位分かっているし。

 先日なめこのクリスマスツリーのストラップが、でっぱり(宝石、オナメント)の塗装がはげまくってワイルドの『幸福の王子』みたいになってしまったので、ポンデライオンのストラップに交換した。本当は(伝染るんですかわうそが欲しかった。でもなかったらポンデライオンにした。さっそく目の塗装がはげて、何だかうつろな瞳に……。

 やっぱり、色々買わなくっちゃなと思うし、好きでも好きじゃなくても、これからもお付き合い願います映画も悪魔も花札もドーナツも。