馬鹿者にもふりそそぐ

ストレスとか不安感からつい買い物をすることばかり考えてしまっていて、ふと、アルコール中毒者の 底付き という状態を想起した。

 アル中の人は自分でそれを認められない、認めようとしない、出来てもやめられないらしい。もし、改善するには、やりまくって、あ、俺もうダメだ、なんとかしないと、と自分で自覚することから始める(底)らしいのだ。

 俺も、自分でほんとに馬鹿だ、と「本気で」自覚するまで、浪費を続けるのだろう。

 銀座のは気分が優れず見逃していたのだが、新宿newomanのエンキビラル展に行く。バンド・デシネ、フランスの(大人も読める)漫画の大家の一人、俺は日本語版が高くて買えないから読めないフランス語版の本を二冊持ってるだけの薄いファン

会場に行くと、コミックの原画とシャネルとコラボしたイラストが展示されていて、特にシャネルコラボのは、(未来の)人間が抱く動物の柄が千鳥格子になっていたりで、かっこよかった。

 会場ではインタヴューも流しっぱなしにしていて、60才を超えるのに、全て手書きで、語り口もエネルギッシュで、あと、自分(フランス?)には伝統を大事にしながらも新しい物を受け入れる(だったか?)日本と通じるものがある、みたいなことを言っていて、自分も多少違うにせよフランスと日本の親近性について感じることが多かったので、嬉しかった。

 あと、ブニュエルの映画を見ようとしたのだが、何故か途中でみれなくなって(というか、俺とブニュエルの相性が悪いのか、何度かこんなことをしている。借りなきゃ良いのに、懲りずに借りてしまう)

 数日後、フェリーニの『甘い生活』を見た時から見たかった、市川崑の谷崎原作の『細雪』を再見する。

 本当に、日本映画の素晴らしさがつまった映画というか、四姉妹が着物姿で歩いている姿だけでも、この映画を見る価値はあると思う。あと、悪い意味ではなく、女性は女性らしく男性は男性らしく振る舞うので、変に悩まずに見られる笑 キャラ立ちがしっかりしているといった方がいいか笑

 特に長女の岸恵子がよかったなーと思った。あと、三女の吉永小百合も、俺、彼女のこと好きでも嫌いでもないのだが、この映画での楚々として、でも芯のある演技には徐々に引き込まれる。

 本家、分家、なんてある面倒で因習と伝統に縛られ、大切にしてきた四姉妹が少しずつ分かれていく様、後半の、三女の見合いのために長女が家中に着物を広げる場面はとても美しくてうっとりしてしまう。

 そして、あんなに本家に固執していた長女が、旦那の転勤で家を出て東京に移る際に、蔵で物を整理していて、驚いた次女を軽く抱いて、「今まで本家本家と個室して、辛く当たってしもうて、堪忍ね(みたいなこと)」を少し涙ながすシーンは、俺も思わず泣いてしまった。

 俺は伝統も信仰も地位も糞食らえというか興味ねーよのアナーキー(笑)な人間だが、父親が死んで、必死で母親役もして、「本家の伝統」を守ろう、とした心意気は敬意を払うのに十分なものだ。


 レンタルCDやDVDをポストに入れ、明日からの仕事のことを思うと、また、ぼんやりしてきて、無駄遣いもいいかなって、気分にもなったりもして。