非常勤って結構大変、って非常勤の人が言ってた。

佐々木敦の『絶対安全批評宣言』を、興味ない部分は多少飛ばしながらも、読み終え、何ともいえない気持ちに、これは、以前同著者の『ソフトアンドハード』と言う評論・エッセイ集を読んだ時にも感じたもので、俺には、佐々木の文章が正直魅力的だとは思えない、とか言いながら、だらだら彼の著作に目を落としているのが、我ながら滑稽だし彼に対しても失礼だ、とは感じるのだ。

 それで、今日、ふと、彼が真面目だから、こんな気持ちになるんだ、ということにようやく気づいた。余計なことだが、本題だが、俺と彼の好きなものは(映画音楽文学漫画)ジャンルを問わずに結構かぶっている。勿論イコールでもニア・イコールですらないけれど。しかも、俺も、真面目。

 そんな関心事が似ている真面目な人に、何でこんな魅力が無いだの言っているのは、勝手な同族嫌悪を抱いている、のもあるだろうが、何よりも、俺にとっては、彼が傷つかなさそうに「見える」からだ。真面目で狂っていないなんて、考える俺は、相手に過剰な期待を押し付けているのかもしれないけれど、俺が好きな人は皆、真面目で狂っている。

 『ソフト・アンド・ハード』に載っていた、事務所に送られてくるCDを機械的にレヴューする人間に苦言を呈したり、リメイク地獄に対するアーティストへの提言など、良心的で真面目な態度は、学校の先生みたいに映る。

「そんなんだったら自分でやれよ」と苛々しながら、でも、彼の言葉をもっと聞いてみたい、真面目な人の言葉について考えたい、と思うのだ。それで俺は悪態をつき、大分後から彼の言葉を拾う。

 今回の(多分)最新作の評論集は、彼が真面目だなと思わせるには十分だと思った。かなり偏見入っているが、アーティストは作品が全てだけれど(真面目でなくてもいい)、他者を媒介とする職に立つならば、クソ真面目でなければいけないと思う。クソ真面目に他人にのめりこまないで出てくる言葉なんて、マジ、「ハンパなく」交換可能じゃない?そんなんで金貰うのって恥かしくないの?、って思う。

 あと彼は古川日出男を褒めていた。他の箇所で彼は(あくまで自分の恣意的判断による)SFは好きだがファンタジーは苦手と書いていた。その分類は「いま・ここ」にあるらしいのだが、俺には古川の作品のSFめいた日常的ファンタジーが肌に合わず、佐々木の言いたいことも良く分からなかった(古川ファンタジーじゃね?と思った)。ついでに言うと、佐々木が好きな西島大助の良さもさっぱり分からない。さっぱり、とか放言を吐きつつ、ちゃんと彼らについて時間をかけてつきあっていけば、気づいていけるのかな、とか、真面目仲間の俺は思ったッス、先生。