プラスチック ジーザス

 足がでかいです。足がでかいので、靴下にすぐ穴があきます。ドンキせんせーの所で投売りブランド靴下(外人サイズのでかいやつ)を買って穿いても穴があきます。僕はこの先どうやってくらしていけばいいんだろう。

 そんな時に、渋谷のスクランブル交差点前、山手線の入り口近くの広場みたいな所に、キリスト教の勧誘の人がいるのを目にしました。数ヶ月前はそこで「ふりーはぐ」とかいう妙ちきりんな行動を行っている若者がいました。キリスト教の勧誘の人はいつも「聖書を無料でさしあげます」とか書かれた大きな看板を持っているのですが、今回はそこに巨大なQRコードが印刷されていました。信者の方のお話を聞いて、聖書を受け取り、赤外線通信をするのでしょうか?想像すると摩訶不思議な光景ですね。

 ってなくだらねえクソ文章はさておき、靴下に穴が開くのとは全く関係なく、四ツ谷にある某キリスト系ショップに行ってきた。前々からキリスト系ショップのことは気になっていて、ずっと行きたいなあ、と思いながら実行せず、ふと、思い腰をあげ検索してみると、おぼろげな記憶では渋谷にあるはずなのに、どうしても検索に該当せず、そういった施設の多い四ツ谷にまで足を運ぶことにしたんす。

 勿論俺は無宗教だけれど、部屋の天井付近にはグリューネヴァルトのイーゼンハイム磔刑画を貼っているほどのキリストの「ファン」なので、アイドル(正にそうだけれど)のグッズを買いに行くように、キリストグッズを買いに行ったのだ。

 ありがたいことに資本主義とは縁が薄いキリスト系ショップでは、多くの物が格安の値段で売っている。土産物屋で百円二百円で売られているポストカードは二十円から、メダイ(ペンダントトップ)は百円から。俺でも誰でも余裕で買える値段だ。テンション上がって手当たり商品を手にしながら、俺みたいな人間が買ってもいいのか(収益が見込まれないので経営は寄付で賄われていると思うから、信者やそれに類する人が手に取るべきだろう)、とも考えたが、信心深い人は眉をひそめてもキリストは許してくれるだろう、ということにして、二千円以上もキリストグッズを買った。安価なのに質は高く、二百円位の十字架にも四方に葡萄のレリーフがほどこされている、キリストもきちんとついている。ポストカードの中には後光が金押しになっているのもある。ミュージアムショップで売っているミケランジェロピエタも、ショップ価格。

 店を出て早速買った十字架を首から下げた。新品のアクセサリー(こう表記するのがおれにとっては適切です)を手にした時と同じ、高揚感があった。数年前にD&Gのセクシーな十万ちょっとのロザリオを目にした時にはただ見つめるだけだったけれど、今は胸の上に三枚のコインのキリスト。正直また行きたい。

 その後ふらふらしていると古本屋でブライスの本を、これまた格安の値段で見つけて即買いした。家に帰って中を開くと、「Blythe Moment」と題されたその本はとても素晴らしい出来だった。デザイナーやアーティストがカスタムしたブライスの写真集なのだ。超キュート。キリストの磔刑画級キュート。

 特に俺がいいな、と思ったのは、やっぱり妖精系お姫様系のカスタム。フォークロアっぽい格好でも頭にでかすぎる花をつけたりしてるのとか超キュート。ガチフォークロア、というか、普通に人間の女の子が着ても似合いそうなスタイリングもあったけれど、それよりもあくまで「人形」としてスタイリングした方が絶対可愛い(と思う)。黒髪に鮮やかなポップな柄の着物をスタイリングしたのもあったけれど、豆千代の金髪ティアラにシックな色調の着物(でも帯止めの下にチョコレート色のフリル!)の方がずっと可愛い!
 
まあ、あくまで俺の好みにしても、スポーツ系やパンク系よりもずっと「ありえない系」の方が可愛い。ロリータ系メゾンのBABYやjane marpleやmetamorphose temps de filleのブライスは超キュートだった。
  
 しかもこれらの写真集に載っているブライスは、オークションに出品され全額寄付されるんだって。「多くの人々の愛がブライスを通じてひとつになっているのです」だって!

 なんて、頭が軽く宗教モードになっているけれど、好きなものを目にするのはやっぱり幸福な出来事で、愛でどーたら、とは正直思っていないけれど、フロアにゴミが落ちていて近くにゴミバコがあれば入れる位の心の余裕はできたのだ。お前普段どんだけよゆーねんだよ、っつー話だけど、実際外出時は常にipodで世界を遮断して生きている人間にとっては周りのことがかなり目に入っていない、入れようとしていないので、ああ、俺もキリストとブライス買ってちょっと大人になったんだ(は?)って思った。キュートな模造品に感謝