波が酷いことになっているけれど、ずっと酷い状態の訳もないし、とりあえず映画を見ることが出来て、とても感謝している。誰に? そんなん知るか


 オンラインのレンタルで、ジャン・ユスターシュファスビンダー勅使河原宏もマルコ・フェレーリも無いのだからと諦めていたのだけれど、探したらフィリップ・ガレルダグラス・サークがあって、びっくりした。

 サークはデトレフ・ジールク時代のは無かったけど、てか、あれ未だにLDだけでDVD化されていないらしい。LDには蓮實と山田の短い対談がライナーノーツに書かれていて、それもまた見たいと思う。てか、どうにかしてDVD化してはもらえないのだろうか?

 以前見た、そのまま、美しい記憶のまま保管されている彼の素晴らし過ぎるメロドラマ、小津安二郎に比類するメロドラマ。そんなのを今目に出来るのか、と思いつつも注文した。未だ目にしていない。

 少しの刺激で色々と支障が出ているのだからもう、頭を使いませんように使いませんようにと思いながら色々な物を頼りにしているのだけれど、こういった生活も長くは続かないのだと思うと、やはり、為すべきことをしなければと、そう思ってくる、いや、単純に、俺はとても短気で落ち着きがなく、じっとしてはいられないのだ。


 フィリップ・ガレルは名前だけをしっていたけれど、「愛の映画」だと、そう教えてもらったから、どこかで、自分には縁がないものであり、また、その教えてくれた人の語り口からこれは素晴らしい映画なんだろう、と思い期待していた。愛の映画。トリュフォー位の「愛の映画」なら、俺も好きだけど。

 『白と黒の恋人たち』を見た。モノクロの映画で、その画面にすぐに引き込まれた。俺の好きなファッション写真家のアーヴィング・ペンのような、白と黒とのコントラストをはっきりとさせた画面はとても美しい。中、後半から色調に中間色が増えてくるのも、話の進み方とマッチしていて、とにかくセンスが良かった。

 話は資金繰りに困った映画監督が女優の卵みたいなのと出会ってとにかく映画をやろう、みたいなものだが、はっきりいって話の筋なんてどうでもよかった、っていうか、そんなのを気にするような精神状態ではなくて画面を見ながら紙にボールペンで線やら円やらを書き続けながら鑑賞をしていた。一応作中では「麻薬」がキーポイントで伏線とかもきいてる、けどそんなのどうでもいい。いや、作品として良くできていた、けど、そんなの今の俺にはどうでもいい。

 のだけれど、気になったのはそのいちいち美しい画面の中で、次のシーンに移る際に、何もない風景やら人やらを数秒間映した個所が幾つかあって、そういった余情を俺はとても嫌うのだが、ガレルのそれは全編が陰鬱なピアノで彩られているせいか、或いは「きちんと」人間なんて風景なんて構わずに次のシーンへ映る構成もそれなりにあったせいか、そこまで気にならなかった。洗練されたルイ・マル、のような(ルイ・マルも結構好きだけど)、いや、トリュフォーの『柔らかい肌』、というか若くして亡くなった、美しい、あまりにも白い(モノクロ映画なので当然だが)、フランソワーズ・ドルレアックを想起した。そして俺はこの映画にも、『柔らかい肌』のように、陰鬱と愛情の乱れ、といったようなものを感じ取った。トリュフォーのように、愛を描く監督? たった一本で判断するのは早計にしても、どこか、そう確信している。『愛の世紀』のような吐き気に似た嫌悪ではなく、ゆるやかな『ラストタンゴ・イン・パリ』や『ブエノスアイレス』に似た愛情、でも、それよりもずっと陰気で生温かく、好みだ。好みだ、けれど、愛を描いた映画なんて、誰が見たい?

 本当はそんな映画なんて見たくはないのだけれど、でも、やはり質が高いというだけで、それに触れられるのは幸福だ。とっても楽しいゲームセンターCXのDVDを一日中繰り返しリピートするのもいいのだけれど、でも、俺、有野課長にはなれないもん。それだったらまだ、陰鬱なフィルムの雑踏の方がなれそうだ。

 どうせあと一ヶ月か二ヶ月でクレジットカードが使えなくなるかもしれないのだからと、レンタルの予約をどんどんしていたら、気がつくとそれが50点以上にも膨れ上がっていて思わず笑い声が起こった。こんな状態で一本消化するだけで一苦労なのに、こんなに見られるか? てかさ、分かってるんだ。何度も書いてるけど、俺はあんま映画好きじゃないんだよね。なんか、集中力がなくって、あんまり夢中になれない。って、それって映画に限った話だろうか?

 色々と品のない衝動が噴き上がっていて、でも、それも自然なのだと思ってきている。美しい映画を見て美しいと思えるなんて、なんて俺は正常なんだ。恐るべき正常さだ! まともすぎるね! 

 あと必要なのはゲーム。親指を連打できますように。暇人の上、RPGばかりプレイしているから、大抵のゲーム(RPG)はさくさく進み、三日四日程度でクリアしてしまう。やりこみなんて滅多にしない。エンディングを迎えたら部屋の掃除を始める。

「だって、こいつらはハッピーエンドになっても俺はこれから新しい物を消費しなきゃいけないんだからスタッフロールなんてちら見程度で十分だよ」


 と以前友人に言ったら「お前クズだな」と言われた。確かにそうかもしれない。でも、クズのどこが悪いのかは、分からない。

 分からないし、それにそういったことに思いを巡らせると、戻ってきてしまうから、やはり思考よりも美しい映画或いはゲームセンターCXかゲームを俺に頂戴下さいお願いしますお金ならないけど貴方達に払う位なら未だあるんです愛してる、アマゾン、ツタヤ、ゲオ、DMNさん愛してる。愛してる愛してる愛してるこの思いが通じないのは分かっているけれど愛している愛おしくて仕方がないんだ君(ら)のことばかり考えているんだ君(ら)がいないとどうにかなってしまう君(ら)にとって俺なんて認識すらされていないこと位知っているけれどでも、そんなの関係ないんだ、愛しているんだこれってフィリップ・ガレル風、なわけねーだろ馬鹿殺すぞあ、やっぱ殺しません俺平和主義者なんで。