僕の好きなピカチュウアメリカ

家にあるカップを一つ駄目にしてしまった。チェブラーシカのプラスチック製で、コンロの近くに放置していたら、塗装が剥げてしまった。後家にあるカップは独り暮らしをする時に家から持ってきたくまのパディントンサガフロ2のおまけについていたカップ(貴族の女の子の画。小林智美画)。

 これはまずい、ということで新しいカップを買うべきかと思っていたら、近所のセブンイレブンで50%オフの所にポケモンカップがあった。中にゼリーが入っていて200円(元は400円)。これはかってもいいかな、と思ったが28歳でポケモンカップはどうよと思った。ちなみにその日は捨て値だったので「ポケモン不思議のダンジョン」というゲームを購入していた。ゲームもカップも一緒だろ、と思ったが、購入せず、同じ日に別のセブンに入ったら(どんだけセブン好きなんだ? って、たまたまなんだけど)またポケモンカップがあった。一番くじの在庫がオール百円だった。買いましたピカチュウカップ

 家のカップはくま、貴族の女の子、ピカチュウ。何それ。

 そして帰宅してポケモン不思議のダンジョン(自分がポケモンになってダンジョンをすすむ)をやったら最初に性格診断があった。そこで自分が操作するポケモンを決めるのだが、俺、一回目でピカチュウになりました。ピカチュウカップを買ってピカチュウになれてちょっと嬉しかった28歳身長187センチ。

 金が無いので購入ではなく音楽や映画のレンタルばかりしているのだけれど、最近GE○とか楽天がレンタルのセールばかりしていてキャンペーンにまんまとはまり続けている。最近はYOU TUBEがあるから気になったのを視聴して決められるのですごく便利だ。少しは金があった時みたいに、適当に馬鹿みたいにジャケ買いしまくるとか、あんま、もうしなくなるのかなとか思うと現金だが少しさびしいような気もする。

 レンタルをして気に入った曲は結構あるので、それではなくレンタルに無いのに欲しいCDを書く。SERPH BIBIO CRYSTAL CASTLES
エレクトロと音響の中間みたいな感じでいいんだけど、集めたくなって困る。待ってくれ、レンタルしてるんだ今日もレンタル注文してんだ図書館でも借りてんだ。けっこういっぱいいっぱいなんだ。でも、これは贅沢な悩み、ということにしてもいいかもしれない。

 映画もそれなりに見ているのだけれど、正直割と有名な作品とか以外は記憶に残らないというか、感想「特になし」みたいな映画ばかりで困る。でもレンタルばかりで積極的に映画を見てないんだよね。本は大抵の物が図書館で借りられて本当に助かっている。これだけでも俺が本好きになるのに十分な理由だ。

 そんな中でも好きになった映画があって、見ようかな、と思いながらスルーしていた監督の一人(こんなのばっかだ)ウェス・アンダーソンの『ザ・ロイヤル・テネンバウムズ』と『天才マックスの世界』はかなり面白かった。テネンバウムズも良かったけれど、個人的には「マックス」の方がずっと好みだったので、そちらの方を書こうと思う。アマゾンの説明文をコピーすると、

  中高一貫の名門私立校に通う奨学生のマックス(ジェイソン・シュワルツマン)は、19ものクラブを切り盛りする一風変わった少年。小学部の教師であるローズマリー(オリビア・ウィリアムズ)に一目ぼれしたマックスは、同級生の父親で親友の鋼鉄会社社長のブルーム(ビル・マーレイ)の手を借りて彼女のために校内に水族館を建設しようとする。が、ブルームもローズマリーを好きになってしまい…。

 というコメディなのだが、久しぶりに映画を見て笑ってしまった。正直映画で笑うとかあまり経験がなくて、シベ超とかゴダールとかルビッチとかあと、ヘルツォークの『キンスキー、我が最愛の敵』とか。

 つーか、「キンスキー」はマジ面白いドキュメンタリーで、監督のヘルツォークがマジで頭がいってる怪優、暴君のクラウス・キンスキー(娘は美人のナスターシャ・キンスキー)に対する愛憎をフィルムに収めた作品で、

 キンスキーのヤバさから、監督が「彼を殺したいと思った。本気で彼の家を襲撃する計画をたてていた。」とか語っていて、かなり面白かった。でも最後はちょっとしんみり。憎しみだけじゃ映画とれないもんね(そうか?)

 って、「マックス」の話だった。この映画は結構嫌味だったり馬鹿らしかったりして笑いを生み出している一方で、通底しているのは映す人物をゴミのように扱わない暖かい眼差しだった。「テネンバウムズ」もそうだが、この監督はとても人に対する愛情を持っているなと感じた。

 映画があまり好きじゃない人はヨーロッパの映画をお洒落とかガチで思っていたり批判していたりするけれど、お洒落なんかではなく、あれは単に身も蓋も無いのだ。カタルシスのある分かりやすいオチなんて無い方が「普通」じゃないか。勿論あってもいいけれど、友達の会話じゃないんだから、「で、話の(自分が楽しめる)落ちは何?」なんて態度は寒い。ただ、誰に対しても過度に肩入れしていないだけなのに。映画が登場人物をないがしろにしたっていいじゃんか。
 
 最初は「マックス」もそういう映画かと思っていたが、多くの登場人物に対して皮肉なユーモアを生み出させる一方で、また多くの登場人物に対しても優しいのだ。

 そういえばアメリカの映画ってこんな暖かさに満ちているのが多いような気がする。ステロイドマッチョマン強いぜパツキンダイナマイトバディーエロイぜ映画以外の(またはこう言ったアメリカ最高! を茶化した映画)アメリカ映画だって、多くの映画がちょこっと引いてしまうような、暖かさがあるように思える。

 また、「テネンバウムズ」も「マックス」もスマートな画面は文句をつけようがないのだが、音楽の使い方がちょっとベタ過ぎて、いや、でも、それもアメリカ的な「豊かな温かさ」と思えば、瑕疵にはならないような気もしてくる、って、どんだけ心にヨーロッパの風吹いてんだよ。本当のピカチュウになるにはまだまだ修行が足りないようで。