灰になるまで

 今年に入ってからか、なんだか気分が思わしくないのをひきずっていて、でもそんなのもいつものこと、とやり過ごしてはいても、なんだか調子は悪く、というか結構ストレスハイで。

 普段と少し違うことをしたり、それなりに楽しんでいるつもりでも、何だか気分は優れなくって、そうだ、もう山にでも行くしかない、とかやりもしないことまで考える有様で。

 いろいろな問題は自分で分かっているけれど、それよりもきっと、不感症気味になっている自分が問題だと思う。色んなものに感銘を受けたり刺激を受けたりもしているけれど、でも、どこか本調子ではない。ピチカート(オリジナルラブ)の名曲夜をぶっとばせみたく、


君のせいじゃないさ わけもなく 気分はいつかブルー


http://www.youtube.com/watch?v=A7rN2lo-RaM


 そう、いつものように本も美術も音楽も、たまには人にも会って、それでも。 



いろいろと綱渡り芸人人生で、それなりの阿呆処世術は心得ているつもりではあるけれど、それもまあ、あれかなーと思いつつ、ぼんやりと、外でどこかに向かう途中に口ずさむ歌は、気分を楽にしてくれる。

 http://www.youtube.com/watch?v=De30709fr5I

COLTEMONIKHA / 嘘つきジングルベル Music Video (short ver.)


 ヤスタカ先生のポップな曲にかわいらしい恋人同士の歌なのに、「あなたのお願い事かなえます」とか言っておいて曲名が「うそつき」のジングルベルだなんて! そういうの大好きです!


http://www.youtube.com/watch?v=nwJh-hlcJOE

巴里の女性マリー The ピーズ with クハラカズユキ


 ダメ男が好き合っていた身分違いの女の子に「ほほ笑んでおくれ」「側にいておくれ」とか言うのがめっちゃ胸にくる。そういうの大好きです!



 口ずさむとはらりと、涙が出る、ジングルベル、巴里、僕の隣でさ

 というか、俺が単に割とすぐ泣くだけなのだけれど。

 楽しみにしていたこともぽしゃって、それで踏ん切りがついて、タトゥースタジオに予約を入れたらその日のうちにカウンセリングだけはできるということで、二時間後にさっそく新宿に向かう。


 モデルのゾンビボーイ君見たく、俺も全身タトゥーを入れるのが夢ではあるけれど、一体いくらかかるのだろう。一千万くらいか? そんな金があったら、ひきこもっていたい。静かに、音楽と文章とともにいたい。

 なんて思うから、タトゥーを入れるのは数万円かかるわけで、どうでもいい嘘をついて小銭稼ぎなんて、なんて思ってしまうから、気が進まなかった。でも、やっぱり好きなことは好きなうちに、な、

 痛みを忘れてはいけないってことだ。ひりひりするような、刺すような泣きたくなるような。

 三月に施術の予約を入れて、何だか、気持が軽くなった。何も解決していないけれど、何も変わらないけれど、でも、自分の傷が体が刺青が、愛おしいと思える、かのような。

 靖国通りを歩きながら、ピチカート・ファイヴの「悲しい歌」を歌う


http://www.youtube.com/watch?v=w9RTcMMsxgo


とても悲しい歌ができた
今朝目を覚ました時に
あんまり悲しい歌だから
君に聞かせたくないけど

で始まる歌は、

ごめんね
だけどいつの日か
みんな忘れるはず

で終わる。

 

 悲しい歌、を歌うと、気分が楽になる。ピチカートの名曲「happy sad」みたいなことだ。悲しいだけでも嬉しいだけでも不十分だ。そう、ジュネが言ったように、「美に傷口以外の起源はない」、ということだ。傷口が似合うような男になりたい、なろうとする意志が必要だ、ということだ。


ただ、何も解決はしなくても、新しいタトゥーのことを考えるとわくわくする。わくわくだけでも、十分だ。

 久しぶりにボリス・ヴィアンの詩集を読み返し、そう、彼は本当にセンスがいいというか、一流の色男は二流詩人の唇と指先を持つ、といったところで(彼を二流なんて暴言をはいたらかなりの人が二流になってしまうが!)、とても好きだ。

『僕はくたばりたくない』
『醜い奴らは皆殺し』
『心臓抜き』

とってもクールではないだろうか? クールだ。いいことだ。俺も灰になるまで、阿呆とかっこつけと、そして、花々のための時間を