夢のための現や悪夢も

 その日をやり過ごす、と言うか、割りと衝動的な日々で、その中でも燻ぶる感情はある。でも、まあ、ちゃらんぽらんなオレだけれど、それなりの自制心はあるわけで、というかこの性格で生活で、なけなしの自制心くらいなければ、キリギリス生活で冬に凍死するわけで。

 好きなモノがあるとして、その幾つかはパッケージの中、ショウウィンドウの中にあって、それを手にするということが、どういう物なのか、オレにはぴんときていないような気がする。小さな、或いはそうでもない情動の揺れ、それだけでなんとなく生活を繋ぐことはできても、何だか物足りないのは、多分色々とサボっているからかもしれない。とはいっても、それについての欲望よりも、日々の消化を紛らせたり、目の前で無視をしていたあれやこれやに手を伸ばしてみたり。

 中平卓馬の『決闘写真論』を再読する。頭が、すこし軽くなる気がする。本当にオレはこの人の文章と写真が、つまりこの人の姿勢が好きだ。

写真を撮るという困難。それに立ち向かう彼のことを思うと、大好きな彫刻家、アルベルト・ジャコメッティのことを想起せざるを得ない

彼は言う。

「例えば一つの顔を私に見えるとおりに彫刻し、描き、あるいはデッサンすることが私には到底不可能だということを私は知っています。にもかかわらず、これこそ私が試みている唯一のことなのです」


 物を見るということ、語るということの困難を、そしてそれに対する熱情を。

 中平の本を読むと、メモしたくなる、反芻したくなることがとても多く、ざっと引用する、

「(ウォーカー・エヴァンズとドロシー・ラングの写真を比較して、幼子を抱く老女の視線は)安堵させる、我々の意識を撹拌し、不安に導くことがないのだ。映像は名付けられうる。そしてそのことがわれわれを安心させるのだ」

「われわれは異質なものには目をつぶり、つとめて見ないようにと努める、そのようにしてわれわれはこのまちの中を生きているし、それをこのまちとして認知している。まちは安定したものであり、これからも変わらず、そのようにありつづけるだろう。つまるところそれは不動の<私>という概念、イデオロギーの反転である」

「見当外れな<私>の跋扈、それは<世界>との緊張から逃げ出した内面への埋没をしか意味しはしない」

「自分自身に関心を抱き、自分自身を探求すること、それは事故を見出さないための心理学的普遍の諸問題をくどくど繰り返すための最も確かな手段である。世界に関心を抱き、何かしらを企てて、むしろ自我を忘れるほうが、すなわち何かの規範に見合った存在としての事故を探求するのを止めたほうが、事故を見出すチャンスを得ることだろう アンドレ・ゴルツ」

「(<世界>を<私>化しないということ、)ウィリアム・クラインは『ニューヨーク』でそれを暴力的にやってのけた。そこにはすでに固定された<遠近法>は存在せず、いくつもの<遠近法>が並置されることによって、<世界>は混沌たる坩堝に変貌している」

 見ることの困難さを、どこかに行くこと、自己のための言語や表現への嫌悪を彼は語っていて、何にせよ、その欲望があるならば、せねばならないということだ。オレは、彼こそがとてもロマンチックな人間だと思うし、彼のことがとても素敵だと思う。

 似たような意味で、「人は生きるために美しい幻を必要とする」と語ったサンローランも尊敬している。

 己のうちから沸く声に<誠実>であろうとするのはとても困難で、しかし、彼らはそれをそれを成す、成そうとして生きていたのだ。その事実がオレの身を律するし、彼らの残したものは、とても美しいものだと思う。

 坊っちゃんの冒頭、「親譲りの無鉄砲さで子供の頃から損ばかりしている」をもっと馬鹿らしく生々しくしたような気質をしているのだけれども、それも(他人に迷惑をかけないならば)まあ、悪くないかなとも思えてしまう。何かを美しいと、尊敬できる事柄がある人生ならば。

 小さなことでカっとしたり、さっと覚めてしまう性格ではあって、そういう自分自身に辟易してしまうこともあるのだが、彼らのことを思うと気分がすっとなる。大事なことは、きっと別のことで、そう、つまらないことに拘泥するほうがずっと楽だから。でも、素敵なことだけの人生なんて、ありえないし、つまらないだろう。


http://www.youtube.com/watch?v=hK242uE5t2M

Kaleido - Meu Sonho (yasuka nakata - capsule remix)


 このリミックスはかなり好きで繰り返し聞いている。カプセル、ヤスタカのクラブサウンドははっきりいって全くいいとは思えないのだが(でも、本当に彼のプロデュースするアイドルの曲はいい!)この曲はめっちゃ好きだ。ミニマルでポップでキュート。こういう甘くて浮遊感がある感じなのが、すごくいいなーって

http://www.youtube.com/watch?v=vwd7uvVJOgo
immi - WONDER

 immiはめっちゃ好きだし、女性のテクノポップ(クラブ寄り)でシンガー・ソングライターというかなり珍しいのに、最近は目立った活動をしていないのが残念っす…






 
 

 キュートなのに寂しげで、(リミックスしたら)フロアでも映えそうなすごくバランスがいい曲だなーって思う。歩きながら聞くと、少し、宇宙の中をトンネルの中を歩いている気分に。


http://www.youtube.com/watch?v=7Nfgy-UPzMY
Janet Jackson - Daybreak
 

 ジャネットのこの曲はとっても好きだ。ちょっぴりキュートで、グラマラスで、歌唱力の高さがすごく楽曲にあっていると思う。普段は下手な歌手の方が好みだけれど、こういうソウルフルで冷たい感じの曲は、やっぱりこういう女王に歌って欲しい。

 色々な勘違いや放言を続けるために



http://www.youtube.com/watch?v=IKgTxCl8F1k
フロイドと夜桜 -  菊地成孔 feat.岩澤瞳

 悪夢も夢も現も、好きだって言えるようにしてたいな