朱華のそらを夢見て

 桃の花を買う。枝についたつぼみ。室内に入れておくと、室温で春が来たと勘違いしたのか、つぼみが開いて行くのが愛らしい。

 一日十数時間寝るのが普通になってしまっている。でも、俺は茨の中の眠り姫でもないので、むしろ茨の中を眠りながら迷っているオッサンなわけで、どうにかせねば、と思いつつ、寝ているせいか小説が書けて、そこだけが救いだ。俺、寝ないと頭が回らないのだ。

 でも、寝ているだけではなく身体を動かさないと身体の様々な喜びと言うのを忘れてしまう。喜びにも拷問にも苦痛にも悲しみにも敏感に。

 『谷崎潤一郎文学の着物を見る』という本を読むこれがとてもいい本で、俺は谷崎のファンとは言えないというか、彼のエロおっさんぶりが苦手なのだが、やはり、俺が言うまでもないが文豪の作品であるから読めば面白い。

 それを彩る着物を再現して見せているのがとても艶やかで華やかで、見ているだけで楽しい。時代や作品、登場人物による着物の移り変わり。特に『細雪』の四姉妹の衣装がいい。あと解説として、着物の伝統柄、大小霰、御所解き、花菱亀甲、矢絣 等々の説明も着物初心者には嬉しい。

 それに日本の美しい色の使い方、孔雀緑 新橋色(新橋の芸者が好んだ空色)煉瓦色 蝦色(えび) 朱鷺色(薄紫がかった桃色)等々、文字を見るだけで楽しい。こういう美しさを大切にするのが、日本文学の良さだと、強く思う。

 後、ナショナルグラフィックの本、雑誌を結構見ている。迫力がある写真と自然。やはり動物の写真や秘境の写真を見るのは楽しい。
 
 これではますます家から出なくなってしまうのだが、とりあえず、小説を書き終えなければという思いと、書き終えたら、書いてしまったら、もう、どうでもいい、というようなふわふわとした気分でもある。まあ、目の前のことを片付けなければと、思う。