まるで嘘みたいな

 家で、ふと気がゆるむと数時間寝てしまう、という状況が続いていて、あれ、俺疲れてるかってことに気づく。まあ、でも、立ち止まっているわけにはいかずに、何だか外出することが多くって。

 外を歩きながらipodと一緒に歌を口ずさむのがいい。ram riderのクレジットがあったからジブリのジャズのコンピレーションを借りたのだが、恐ろしいことにジャズなのに全然スイングしていないというか、打ち込み! ダンス・ポップスアルバム。なのにYMCKとかa-beeとかも参加していて無駄に豪華でわけわからないアルバムで、

 ジブリに大した思い入れはないのだが、(好きは好きだと思うが)ram riderがリミックスしている風の谷のナウシカが胸に来た。みんな知ってるサビの直前の歌詞、



愛しあう人はだれでも
飛び方を知ってるものよ

というのが、何故か胸に刺さる。歌詞は松本隆だそうで、はっきりいってこの曲(リミックス)はramriderにしては、あれって感じがするが、それでもあんまり良くないボーカルにダンストラックで

「愛しあう人はだれでも
飛び方を知ってるものよ」とか言われると、何故かどきどきしてしまう。


へー飛び方知ってるんだー俺も知ってるー だなんて、嘯きたい感じだ。マジで。本気で。ロマンチストって二流詩人と詐欺師すれすれ。そう、嘯き人生。『勝手に逃げろ/人生』


 あ、やくしまるえつこのアルバムで「みんなのうた」の「恋するニワトリ」をカヴァーしていて、それがスゲー良かった。


あのひと りっぱな かざみどり
わたしは 小さいニワトリよ
貝殻食べても 鉄にはなれず
貝殻弾ける むねのなか


 って歌詞がマジで好きだ、というかこれとやくしまるの(一発取りらしい)少し不安定なヴォーカルの相性が抜群だ。不安定で魅了的なヴォーカルと、誤ちの感情をほのぼのと綴る歌詞がむねキュンです。

 って、何だかこんなのばかりが好きな日々でもなくて、そう、キノコホテルの新作も良くて、「ばら・ばら」とかスゲーかっこいい。(これはyoutubeにあった)

http://www.youtube.com/watch?v=P1MR25qSS_0


 この体が朽ち果てたって 誰もあたしを探せやしない

 長い夜を乗り越えたって まだまだ夢の中にいるの

 だからもっと踊らせて


 歩きながら歌うとマジで元気出る。あーライヴ行きたいなとか思ってしまう。これでライヴも顔出してたら、俺、マジで人生ハッピーとか錯覚しそうだ。ナチュラルハイ。

バホフォンドのこの曲がちょうど今の気分だ。ラウンジ・ハウス・トラックとタンゴの融合が心地よい!
http://www.youtube.com/watch?v=GnekEPW4Okg
Bajofondo - Pide piso
 
 優雅な、幻を見る。音楽を聞いて景色が変わる。

 ここの所どうでもいい本や既読の作品ばかり読んでしまっていたのだが、アンナ・カヴァンの『アサイラム・ピース』がとてもよかった。


異国の地で城の地下牢に囚われた薔薇のあざをもつ女。名前も顔も知らないがこの世界のどこかに存在する絶対の敵。いつ終わるとも知れぬ長い裁判。頭の中の機械。精神病療養所のテラスで人形劇めいた場面を演じる患者たち――孤独な生の断片をつらねたこの短篇集には、傷つき病んだ精神の痛切な叫びがうずまいている。自身の入院体験にもとづく表題作はじめ、出口なしの閉塞感と絶対の孤独、謎と不条理に満ちた、作家アンナ・カヴァンの誕生を告げる最初の傑作。


 だ、そうで、カフカ的なアプローチと共に、的はずれな真剣さが恐ろしく、胸に来る。小さい頃からヘロイン(当時は違法ではなかった)を常用していて、死ぬまでそれが伴侶だったそうだが、嫌がおうにもウニカ・チュルンの『ジャスミン男』を想起してしまう。

 小さなほころびが見えてしまっていて、そこに固執してしまうならば、大げさではなくサルトルの『嘔吐』のロカンタンような、いや、あれよりもさらにぐにゃぐにゃとした、生々しい馬鹿らしい、微に入り細を穿つということがいかに滑稽で真剣で強迫観念にかられる行為か、身震いする。


 って、こういう小説とかばかりに感動していると、本当に生活を営むということから遊離してしまうから、マジ、もっと別のを、「もっと踊らせて」とか口ずさむ方がいいのかな、とか思いつつ、口ずさむ歌も下手なダンスも、ぐにゃぐにゃとした景色、作品も、俺にとってどれもこれも大切なことだ。


 何が大切か、と再確認すると、何だか俺もそこそこ楽しいのかなと錯覚できてしまうようで、素敵だと思う。素敵なことばかり、身震いするものばかり俺の生活、とか思い込むと、中々素敵だなと思う。

 SPANK HAPPYの『フォーエヴァー・モーツァルト』という超超超好きな(勿論元ネタのゴダールの映画も!!!)曲の中で瞳ちゃんが「なんで なんで 嘘をつくと 眠れるの」とかいう歌詞を想起すると、あー俺ももっと踊らせて、嘘をついて、とか思う。それで、ぐっすりと眠りたい。

 嘘をついて、嘘みたいに生きられたら。マザー・テレサジャン・ジュネの言葉が頭をよぎる。「愛しなさい、忘れなさい」それを続けることができるならきっと、嘘みたいに、素敵な人生だろう。素敵な人生のために、嘘を、うそみたいな、嘘が大好き、俺、素直になって、嘘をついて。