ビートルズ・コンプレックス

「頭 われちゃいそうよ
 ひどい 二日酔い こんな日に
 恋に落ちるなんて なんてことかしら」

 第一期のピチカート・ファイヴのコケティッシュな名曲『オードリィ・ヘプバーン・コンプレックス』にこんな歌詞がある。二日酔いでも恋に落ちたわけでもない今日の俺、久しぶりにバイトを辞めようかと思い、頭が われちゃいそう。

 真面目に考えると、この先バイト生活を送るよりも、どうにかして自営業でやっていける道はないのだろうか。俺が店や会社を立ち上げるなんて、非現実的だけれど、すこしはそういったことを視野に入れるべきかもしれない。あたまがわれちゃいそうになるのは嫌だ。本当は錬金術師とかになりたいんだけれど、そういうのよりも、今の日本で可能な職業を探さなければ。

 ビートルズが多くの人に愛されていることに、疑問を抱いたことはないだろうか。俺は20になった位から、ようやくビートルズの曲を聞けるようになった。嫌いだったことはないけれど、ちっともいい音楽とは思わなかった。

 きっと、「ビートルズは音楽の古典だよね」みたいな発言に疑問を抱かない人は、松井冬子の画やふなこし桂の彫刻や村上春樹の小説やエイプの洋服やヴェンダースの映画とかが好きな人なんだと思う。俺だって嫌いじゃない、嫌いじゃないはずだけど。

 要するにビートルズって「幸福な音楽」って印象が強くて、俺には一歩引いてしまうのだ。まあ、引いてはいるけれど、別に俺だって幸福が嫌いなわけではなくって。

 有名な「ハローグッドバイ」って曲がある。
 「you say goodbye I say hello」って歌詞は、素敵だな、と思う。「君」にグッドバイって言われて、俺はハローっていえるのだろうか?そう言える、思える人の方が素敵だと思う。頭がわれちゃいそうな時こそ、「君」にはハロー、もしくはグッド・グッドバイ。