叫べ俺ら、って

 この家に住む前は新宿に住んでいた、三ヶ月だけ。何で三ヶ月だけかというと、俺が引っ越した初日で引越しを決意したからだ(その物件の最低居住期間が三ヶ月だった)。初日に引越し決意って、すごい俺馬鹿、っつーか、マジすごいですね、馬鹿じゃないすかはははは、って笑い事じゃなくて、マジ、職探ししながら物件探し、プチ地獄。

 新宿にはあまり行かなかった。せいぜい誰かについて行く位、だから東京生まれ東京育ちのくせに、二十歳過ぎて新宿駅で三十分以上迷ったりして。

 途方に暮れるような、まだまだ余裕があるような、東口方面をうろつきつつ、ふとかけたセックス・ピストルズが、俺の見る景色と死ぬほどハマッていて驚いた。信用ならない、性格の悪い奴だけど、案外人間的なところもあるのかな、なんて。

 高校生の時に初めてピストルズを聞いた時はなんだこれと思った。一回聞いて、そのまま放っておいた。でも、十八だか十九の頃に、何の気なしに聞いてみて、ああ、気持ちいいな、と思った。ひどい演奏にひどいボーカル、それでも気持ちいいんだ、って思って、俺も下手な歌を口ずさんだりして。

 久しぶりに新宿を歩いて、未だに俺はよそ者なんだな、って思うけれど、「ゴッセッザクィーーン」とかって声を聞いていると、少し、わくわくする。愛着があるわけでもないこの街と、ピストルズとの組み合わせは、俺の現在に似ているとか思って、言えるうちにノーフューチャーとか、無責任に口にするべきかなとか思って、

 続けて久しぶりに聴いたマッドカプセルマーケッツ、好きだった高校時代思い出して、ちょこっと恥かしい気持ちいい。「asphalt-beach」って曲、題名もいいっすね。なんか、頭がぼおっとするんだ、身体がだるいんだ、風邪気味なのかな、音楽のせいなのかな、今、照れているみたいな頬だよ俺。