僕の肋骨はブルー

ずっと読みたいと思っていたけれど読んでない本が幾つもあって、そのリストを思い浮かべると、自分の不勉強さに自己嫌悪に陥る、ことはなく、楽しそうな物がこんなにあるのだと、いい気分になる、とはいえ、高校生の頃に買った『失われた時を求めて』を未だ読んでいないのは我ながら情けない、七、八年ほっぽってるってことか?

 そのリストの中の一つ、リラダンの『未来のイヴ』の上巻を読み終え、あまりにも期待をしていたせいか、現実に引き戻された。題材がとても好きだったから、芳しい腐臭を放つ熟成期間を経て、恣意的な空想の方が美しくなってしまったのだろう。

 永遠に到達しないものが甘美だとして、そんなものばかり追い求めているのは健康に、実生活にさしさわりがある。学生のうちに済ませてしまうものなのか?いつでも学生気分が抜けない俺、は「生活など召使に任せておけ」と言い放つような財力はない。美しい肌のイヴやアダムを作ることもない。

 一瞬だけ、引越し先の候補に自由ヶ丘を思い浮かべた。そこには吉田良の人形教室があるのだ。しかし自由ヶ丘に住むなんてことは無理、だし、人形教室に通うのも夢のままでいい、いまは、別の妄想がある。

 イヴ・クラインデレク・ジャーマンが好きだから、お店を開いたならば、部屋中を真っ青にしようと思う。店内でブライアン・イーノアンビエント・ミュージックを流せば、安価な『ブルー』の空間になる。息ができる深海の中で、好きなだけ溺れていたい(本当はマニエリスム・グロテスクな空間がいいけど、要望を満たすには十分な金が必要だ)。

 開く予定は(永遠に)未定だけれど、店の名前はもう決めてある(駄目人間は到達しない予定が好き)。『祝祭』という言葉が頭に浮かんだのだ。祝祭は、とても好きな言葉の一つだ。青ざめたみそぼらしい祝祭、の中で働きたい。

 とはいえ、青い店で祝祭って名前で、一見さんが入りにくいことこの上ない。悪趣味な俺でさえ、通りすがって、入るだろうか?予定が暗礁に乗り上げた。ブルーブルー。

 妄想を垂れ流す度、高円寺ラブ。優柔不断な俺が決断するまでの、気晴らし。