ゲームゲームゲーム

 最近フリーゲームをやっていた。やっていたというか、前からちょこちょこ探していたのだけれど、パソコンでゲームをプレイする習慣はなかったし、何より疲れるのだ。

 俺のノートパソコンは段ボールと本とCDの上にあって、腕と肘が宙に浮いた状態でタイピングしている。めっちゃ疲れる。机がないとすごく疲れる。じゃあ買えよ、と何度も思っているが、未だ踏ん切りがつかない。正直ワードで文章を打つのにも影響するし、長い目で見れば絶対に机は何としても購入しなければならないだろう。

 ということで、結構前だがプレステのコントローラーでPCゲームの一部がプレイできるゲームパッド変換のコネクタ(名称絶対違う)を購入した。要はキーを打たなくても寝転がってPCのフリーゲームがプレイが出来るってことで、片っ端からおすすめ、名作、フリーゲームをチェックしまくった。

 多分ツクールシリーズが出始めてから、単純なパズルカードゲームとか以外フリーゲームが出始めてきたのだと思うんだけど、結構な数があって面白かった。でも、その多くはやっぱりフリーな感じので、最初の紹介画面で別にいいかな、と思うような物が多かった。てか、RPGやシミュレーションをやりたい時は大抵絵柄重視だ。だって絵が情報量の多くを持っているんだから。

 まあ、一番はストーリーなんだけれど、俺の好みのストーリーは、何故かフリーゲームにはほとんど無いようだった。てか、市販されてる奴の方がやっぱなあ……。

 と思いつつ、インストールして少しプレイして削除、みたいなことをくり返しながらも、やはり面白い作品はあって、ていうかこれ無料かよ? みたいなのも幾つか。クリアした物で言うと

『レミュオールの錬金術師』 あれ、どこかで見た名前だな、と思ったら、これDSでベタ移植されてることを知った。フリーゲームを追加要素とかなしでフルプライス販売しているらしい。それでいのか? でもゲームとしてはお店の売り上げを増やす作業ゲーで、かなりはまった。って、エンディングまでしかやってないけど。でも地道に数字を増やすだけの(褒め言葉)ゲームで、それ以外の部分も絵とかキャラとか凝っていて、正直普通に売っているゲームと大差ないし、某失敗アトリエシリーズよりずっとストレス無く遊べるじゃん。って発売してますが。

『冠を持つ神の手』 これ、マジでフリーゲーム? と思った。身体に王様の証である選定印が見つかり、王様候補になった田舎の子(成人の儀で選ぶまで性別はないという設定の世界)がお城の中でもう一人の、正式な王様候補の子と成人の日まで城で過ごす。とかいう内容(一応王様を目指す育成シミュレーション)で、その設定も面白かったけれど、まず画が良かった。

 眼があまりでかくない、リアル向きというか、ファンタジー小説の挿絵みたいな画に水彩風のグラフィックはとても雰囲気が出ていた。サイトでフリーで配布している、ヨーロッパの古城の画像が作中では使用されている(と思う)のもすごく雰囲気にあっていた。あと色んなその国やら世界の設定が細かく、それが作中の世界を支えているのもリアルな感じがして良かった。

 そして何より登場人物が魅力的なのが良かった。ゲームとかに限らず、「こんな奴いねーよ」と思うと醒めたり、下手すればそれを中断することにもなる。でも、ゲームをプレイするというのは、それは娯楽であり、多くの場合ありえないものを求めていると言い換えることもできるのだから、突飛な登場人物が出ていても別に不思議ではない。というか、大抵のゲームとか漫画とかには、「能力」ではなくありえない「性格」の人物が出てくる。それが自分の好みに合うならば、それは大きな魅力となるだろう。文句ばかりの俺だって、自分の好みの「ベタ」な、みる人から見たら「都合良くて気持ち悪い」でも俺は好きなキャラとか沢山いると思う。

 でも、どうせなら、その意味不明な「ファンタジー世界」でそこの物理法則で生きている人間を見てみたいと思わないだろうか?

 このゲームのキャラクターはその世界で生きているような感じがした。その立場にあった行動をしているように感じられた。

 一応このゲームは様々な能力を上げ、城内支持を受け王様になるというエンディングがあるのだが、それだけではなく、その生きた登場人物の全てとエンディングが迎えられるのがすごいと思った。しかも、エンディングと言っても愛情、友情だけではなく、殺害や憎悪といったエンドも全員に用意されているなんて、そんな分岐が多いゲームは初めて見た。

 また、ここでこのゲームの「成人の儀で性別を選ぶ」という設定が生きてきて、主人公は王となる際に成人を迎え性別を選ぶことになるのだが、例えば男性のキャラと婚約した後、成人の儀で女性ではなく男性の性を選び、相手を裏切るエンドが選べるのだ。

 しかも主人公が子供で性別が未だ未分化ということは登場人物の男性女性キャラどちらとも、恋愛が可能と言うことだ。これはシステムとしてとても優れていると思う(舞台は昔のヨーロッパをほうふつとさせ、同性愛は普通ではない設定なのだと思う)。

 狙ったルートをたどるにはそれなりに難易度が高く、攻略サイトの力とかが必要だろうが、それにしても色々と高水準でまとまっているゲームだった。ただ、このゲームも繰り返しを要するのにあまり変わり映えがしない作業を繰り返すのは、『レミュオール』のように数字を増やすわけでもなく、エンディング目指してセーブ&ロードを繰り返すゲームとしてちょっとつらいところもある。でも、正直最近遊んだ中でもかなり面白いゲームだった。フリーゲームでここまで出来るんだと思った。

 じゃあ、市販されているゲームは?

 ずっと気になっているけれど値段のせいでやっていないゲームがあって、その一つ、アーカイブ化された『シルバー事件』をプレイする。

 プロデューサーの名前をとって須田ゲーとも呼ばれている、グラスホッパーが制作したゲームを俺は過去に一作だけプレイしたことがある。

 アドベンチャーゲームの『花と雨と太陽と』という作品で、探し屋の男が南国の楽園で探し物をしているうちに、奇怪な事件に巻き込まれる。毎日ジェット機がテロリストに爆破される日々を繰り返す主人公はこの島でどうする? みたいな内容で、この説明だけ見ればかなり面白そうな内容だと思うが、実際は結構アレな感じで、何がアレかと言うと、主人公はひたすら島の中を走りまわり、数字に関係したなぞ解きをするようなものが主軸になっている。しかもその謎が後半はとても難しく、攻略サイトの手を借りないと俺には無理だった。てか、毎回毎回数字のなぞなぞなんてやりたくねーし!!

 でもこのゲームは音楽がとても良かった。クラシック曲のアレンジが全編通して流れていて、どこかの楽園気分を味わうにはぴったりだ。勿論それだけではなく、「須田ゲー」の須田さんのシナリオが魅力的な物だった。登場人物のほとんどが少しずれた発言をする。少しずれたというか、全員で一人漫才をしているような感覚を受けた。そんなやついねーよとか、人物描写力が欠けているとかではなく、最初から須田さん一人芝居みたいな、漫才を見ているような感じ。

 このゲームは好き嫌いが分かれるとかよくレヴューされていて、要するに須田漫才を楽しめるかどうかがカギになっているのだ。ゲームと言うか、漫才。
 
 でも、人を笑わせるというのはとても難しいことで、しかもこれはなぞ解きまで加わっているのだ。正直ちょこちょこあーはいはい楽屋落ちメタ視点ですねー的な視線を持ったのは事実で、ラストも謎を解決しないぶん投げ方式で終わった。ゲームクリア後に、これは前作にあたる『シルバー事件』をプレイしないと、後半の展開はさっぱりだと知った。でもパッケージには続き物とか全く書いてなかったはずですが……(書いてあったかもしれないけど)特にナンバリングなんてないし。

 文句を言いつつも、それなりに楽しんでいたし、気になっていたのだが、その前作の『シルバー事件』が中古でプレミア価格になっていて中々手が出なかった。でも、PSPのアーカイブスでわずか600円!! わーいわーい。

 ということで、プレイしてみると、そのインターフェースの凝りように驚いた。凝りようと言うか、センスがいいのだ。今から十年以上前のゲームなのに、技術的な物以外の古さを感じないというか、むしろ新しかった。P3とP4のインターフェースがとても好評だったのが記憶に新しい、というか、単にゲームの多くは、「画面のかっこよさ」に気をつかっていなかったのだということだ。

 確かにインターフェースは最低限使い易ければそれでいいし、人はゲームをする時に物語やら爽快感やらを重視するのだから、これが軽視されるのは分かるのだが、でも、「センスいいな」と思うようなゲームは、それだけでも武器の一つになるだろう。

 この『シルバー事件』と言うゲームは、架空の24区の警官になってある事件を追う、みたいな内容で、ネタばれしたらつまらないので内容にはあまり触れられないが、かなり面白かった。アドベンチャーというよりもノベルゲームに近かったが、『花と雨』とは違いなぞ解きは簡単で、さくさく進んで良かった。

 勿論これも須田さんのシナリオなわけで、漫才が魅力になっているのだけれど、でもキャラの設定では押しきれないようなあんまり無理な台詞は、ちょっと覚めることがあった。物語に触れている時に、制作者須田さんの顔が見えちゃうと、どうでしょ。そのノリが好きな人にとってはにやにやできるだろうけど。でも、俺も思わずにやけたありえない展開とかあったけど。

 でもそれが楽しめたのはやっぱりこれがゲームであって小説ではないからだと思う。小説では文章の比重がかなり多い(当たり前)だが、ゲームには文章以外の魅力的な音も絵もボタンでの介入もある。町田康級に(とかいって町田の全部が好きなわけじゃないけど、でも町田康超好き!)面白くありえない人物を書かなきゃ成立しないだろう。人間は「物語」にとって都合良くないから魅力的なんじゃないの? 物語の為の人間はそういうのに特化したやつに任せればいいのに。

 クリアした感想としては、これがプレミアソフトになる理由が分かった、というか600円でプレイできて申し訳ないような気分になった。って、いっても図書館で、ただで駄作凡作名作読んでんじゃーんと自分で思ったが。

 一応この作品のラストも投げっぱというか、プレイした人が考えて、的な終わり方だが、それでも良くできていたと思う。てか、楽しめた。で、再プレイはきついから消えかかった記憶を取り戻しに『花と雨と』のストーリーをネットで見ると、確かに後半はこのゲームをやってないと置いてきぼりだわ。てか、やってても、それはどうだろ……的な感じがしました。でも、どっちも、特に続けてやると、かなり楽しめるゲームだと思った。

 こんな楽しめるゲームがフリーゲームだったり600円だったり、いい時代になった。とも思うが、違法ダウンロードの被害がマジハンパないらしい。中古とか図書館とかレンタルとかをめちゃ利用している俺は、制作者にあまり還元できていないけれど、やっぱそういうダウンロードをしないのは最低限のルールだよなあと思う。

 でもそしたらyoutubeは? 俺はちょこちょこ利用しているし、youtubeで知って購入したアーティストは沢山いるけれど、でも別に買うほどでもないからyoutubeでいいか、とかそういう時もあるし、今の時代そんなことを議論しても答えは出ないだろう。どう利用するか、どう生き残る道を探すか。

 なんて暗い話題は他の人になるべく任せようと思う。てか、まじ他人の心配してる場合じゃないんだよね! なるべく多くの機会を楽しめますように。アーカイブスには未だ俺がプレイしていない『ガンパレードマーチ』や再プレイしたい『リンダキューブアゲイン』があるし、てか、もう気軽にプレイしたかったから、チョコボの不思議なダンジョン2とドカポンすぐにクリアしゃちゃったし。

 久しぶりに十時間以上ぶっ続けでげーむしてた。ネットゲームとかしてる人にとっては全然珍しくもないだろうけど。でも、俺、別のゲームもしなきゃいけないわけで。ゲームをしている間の、楽しんだり惰性だったり、そして、こんなことしている場合じゃないのに、という気持ち。集中力がなくって、いっつも、何か別の事をしていなくっちゃって、そう思う。

 でも、自分好みのゲームを作る為に、ゲームをしなくっちゃ。