好きって口にすると健康にいい

 映画見る。

 『月曜日のユカ』が良かったから、中平康監督の『危ないことなら銭になる』を見る。宍戸錠主演。

これぞ、エンターテインメント!
エースのジョーがお得意の“ろくでなし”キャラで暴れまくる斬新なコメディ・アクション!


 とのことだが、うん。つまんなかった!! 

 というか、『ユカ』でハードルが上がった状態で見たからか、コメディ・アクションという前提にしても、安っぽすぎる表現の展覧会、演者の台詞が台本を早口でまくし立てるような演出(出ている人も監督も悪いなんて思っていない。そういう風に作られたからだと分かってはいるけれど)に思わず映画見ながら、3DSのエルミナージュ・ゴシックのレベル上げしちゃいました……

 ほら、wizゲーなんで、こっちもやることはオートでひたすらアビ君(序盤の経験値稼ぎ用固定出現キャラ)殴るだけの連打だけなんで……

 とか言いながら一応最後まで見たし、最後まで見てしばらくして、でも、これもすごくテンポが良い作品で、馬鹿にはできないのかなあとも思いました……

 てかね、そもそも俺アクション映画に興味ないんですよ! だって誰が死のうが生きようが罠があろうがなかろうが見せ場の金やら力入ってるシーンとかも興味持てないんだもん! 

 じゃあ、アクション映画なんて見るなよ!!!

 ということで(は?)、同時に借りてしまったからテンション下がった状態で見た、
鈴木清順監督『野獣の青春』。たまたまだが、これも宍戸錠主演。これもアクション映画。

暗黒街に単身乗り込んでいく元刑事の死闘を描いた傑作ハードボイルド。

 とか言ってもね、俺ハードボイルド苦手なんですわ。いや、苦手じゃないけどさ、やっぱこっぱずかしくなっちゃうんだよね。だってさ、当たり前だけどハードボイルドの主人公ってかっこいいんだもん。

 かっこわるいフリ、流れ者の面構え、でもかっこいい、を前提に作られてるから、ひねくれものの俺としては(嘘、本当は全くひねくれてないマジで俺)なんか苦手なんだよねー。



 これがね、すごくおもしろかった。鈴木清順って幻想的とか筋がどうでもいいとかそういった魅力的な映画を撮るけれど、こうやって分かりやすい物語におとしこまれると、単純に彼のセンスの良さが際立つ。アクションシーンやスリルある演出も俺ですらどきどきして見られるカメラワークのうまさ!

 同僚の為に命をかける男の生きざま、ってテーマも、ブロマンス的、ホモソーシャル的にBL的に良かったです(とか言ったらいい方が良くないのかもしれないが)。いや、そんなんでもなく単純な話。ストイックで目的の為に生きる男、主人公を魅了的に見せていた。ジョーかっこいいぜ!

 脇役もつ部ぞろい。ジョー(主人公)に心酔する風変わりな相棒的な男も、対立する二人の組長の対照的な人物像の分かりやすさも、なよったカミソリ男の伏線も、真犯人のやるせなさも、すごくよくできてるなーと思った。

 アクション映画なのだ。面白かったーすごかったーかっこよかったーが最高の誉め言葉なのかもしれない。

 楽しかった。

 友情の為に命をかけるとかかっこいいぜ、ジョー

 こっぱずかしい、と言えば、こっぱずかしいけれどたまに見返したくなるのがウォン・カーウァイの映画で、『ブエノスアイレス』を再見。

アルゼンチン。旅の途中で知り合ったウィン(レスリー・チャン)とファイ(トニー・レオン)。幾度となく喧嘩と別れを繰り返してきたこのゲイ・カップルは、やり直すためにイグアスの滝をめざすが、またもささいなことから喧嘩別れとなる。そしてしばらく後、ブエノスアイレスのタンゴ・バーで働くファイのもとに傷ついたウィンが転がり込んできた…。


 冒頭からの男同士のやらしいシーンで、ダメな人はだめだと思うが、これはとてもいいものです。なぜなら、ちゃんとやらしく、楽しそうに撮ってるから。

 映画でたまにえろいシーンがあるけれど、昔の映画の方が良いものが多い気がするのは昔の映画ばかり見ている俺のひいき目だろうか? やるならさっさとすませるか、やらしく撮ればいいのに! セックスシーンを記号的にとかこぎれいに撮りたいならそんなのカットしろよマジで。

 セックス「シーン」って、場合にもよるけれど、映画の登場人物同士に何かの思惑があるから、或いはやらしいことがしたいからあるんだろ? それを大切にしてほしい。

 ところで、この映画、好きは好きだけれど、見直して、すごくいい映画だと思った。

  レスリー・チャンのダメ男っぷりと、トニー・レオンのそれを受け止めながらもこっちだってやっぱりダメ男なのがほんといい味出してる。

 恋愛関係の楽しさって、きっと愚かになれることだと思う。だから、普通はそれを他人に見せないし(見る機会がないし)、他人の恋愛模様を見ることになったら、ばっかだなーあほだなーきもちわるいなーと思うだろう。はたから見たらそんなものなんだ恋愛って。

 でも、当人同士が楽しいならしかたがない。もとい、他人なんて知ったこっちゃない。ふたり、が楽しければそれでいい。

 何度も衝突とじゃれ合いを繰り返すカップル。ハードボイルドがブロマンス、ホモソーシャルに親近性があるとして、この映画で描かれているのはそれとはすこし違って、当たり前だが、恋愛物語なのだ。

 だって彼らはとても愚かで愛らしくって胸が痛い。

 ブエノスアイレスの原題は「Happy together」という。ああ、うまい邦題をつけたなーと思った。やっぱりカナビス(大麻)よりも、ゲンスブールバーキンのかっこつけ映画なら『ガラスの墓標』ですよねー。セルジュの歌う陶酔感溢れるテーマソングも最高!



 死は子供の顔をしている

 澄み切った眼差しで

 優雅に愛をまとった身体

 俺は永遠の虜

 

 ほんと、かっこいい、かっこつけ。


 ハッピートゥギャザーとか言いながらも、作品はいわゆるハッピーエンドとは少し違う。前向きで切なくて爽やかな終わり方だ。というか、ひねくれものの俺は(嘘、本当は全くひねくれていないマジで俺)それに多少の違和感を覚えたのだが、カーウァイの映画ってこの明るさが、前向きさがこっぱずかしさが純真さが間抜けさがいいんだよなーと思った。

 ほんと、ファスビンダーとかハネケとかキェシロフスキの映画とか見ない方がいいよ。健康に悪い。あんなの大好きな人はまともな人間にならないよ社会不適合者の為の映画だよそれか社会に適合してるのにあんな映画見てるなら非人間だよ、普通の勤め人よりもっとたちが悪いよ、酷い人だ、あんな映画を見てもまともに働けるなんて、妄人(ワンニン)なのかな? 風水師なのかな? まあ、パンピーの俺は見るけれど。

 それで、映画を借りるついでにCDも借りる。PSのゲーム、クーロンズゲートのサントラ。

代設定は1997年、中国返還前の香港。主人公は香港最高風水会議の超級風水師である。物語は陰界の九龍城が陽界に姿を現したことを発端とする。 どうやら原因は陰界においては四神獣の見立てが行われていないことにあるらしく、そのため気脈の流れが乱れ、最も邪気に歪んだ九龍城が陽界に姿を現すこととなったようだ。

1994年に解体された史上最大の違法建築と言われる九龍城砦を題材とした、アジアンゴシック、サイバーパンクなあまりにも混沌とした世界観でカルト的人気を持つ作品。


という説明ではきっと魅力が伝わらないと思うのだが、こればっかりはゲームだし仕方がない。要はかなり面倒で気持ち悪いゲーム。

 そして申し訳ないのだが、俺はこれをプレイせずに、プレイ動画でエンディングまで見てしまった。でも、やりたくないんだもんこんなゲーム! くそ面倒で、自分でやっていたら攻略サイト見ながらプレイか投げていたと思う。

 でも、面倒でやりたくないゲームなのに、エンディングを見てしまったのに、やっぱり自分でもやりたくなるゲーム。

 ゲーム自体の操作性の悪さやら不親切さやら、それがあっても魅力的なうさんくさくて細かくてくらくらする設定はPSの『シルバー事件』(こっちはクリアした)に通じるものがあると思う。

 プレイしながら(見ながら)

 なんでこんな面倒なのに手を出したんだろう、とか思いながらも惹かれてしまう世界観、シナリオ。

 映画の『ブエノスアイレス』でもそうだが、異国で一人ぼっち感というか、『異邦人』感って、やっぱり魅力的なんだと思う。魅力的で不親切な世界で突き放される。そんなゲームって少数ではあるが、それは作者の思い入れやエゴがつまっている。強烈なエゴイズムに酔いしれるのは、弄ばれるのは、不愉快だけど、多分悪くない。

 まるで愚かなカップル、いや、商売男/女 に手玉に取られる感覚。

 あ、でも今というか俺の人生そんなのばっかじゃん、なんて思うとクーロンズゲートのサントラを聞きながら、もう、どうしようもない気分になれるけれど、俺も君も映画の登場人物だって大抵異邦人、仕方がない。愚かさを寄る辺なさを受け入れるしかない。

 愚かなのって楽しいよって、空元気が言える間は俺、きっと妄人(ワンニン)じゃないよきっと。