俺ロックあんま聞かないんだよね、銀の奴

 底値やワゴン品や発売して間もないゲームソフトやらを、まとめて近所の高額買取ショップに持ち込むと、かなりの値段になった。やっぱゲームは高く売れて助かる。

 あとネットでまとめて本を売った。レトロゲームの攻略本とかを高額買取しているサイトで、数えたことないけれど、攻略本だけで300冊近く持っているので、その中にはちらほらいい値段がついている物がある。

 なんでそんなにゲーム攻略本を買えるのかと言うと、普通は攻略ややりこみに使用する物なので、一部の以外なら旬が過ぎれば棚を無駄に占有してしまう性質のもので、店としては分厚いそれらは処分対象になり、その為しばしば100円で投げ売りされることになるのだ。

 攻略本の多くはオールカラで(だから最近のは定価2000円近くのとかも珍しくない)、しかも、ゲームを画と文章で楽しめるのだ(当たり前だ)! 欲しくないわけがない!

 俺は本は読めればいい方なので、保存状態が悪いし売値は大して期待できないだろうが、かなりの量をダンボールで送って、多少すっきりした。入金は数日後らしいが、とにかく、IPODを買う気合が入った。

 そして購入した。やはりどの店でも、購入するならサポート込み(電池交換に対応してくれるのだ)で三万程度。袋を手に、エレベーターを下りながら、なんだか呆けた気分だった。大した感情が湧かなかった。三万って、やっぱ大金だ。でも、今月の家賃も払ったし、来月の生活費もある。なんだかんだ言って大丈夫だ。大丈夫なんだ大丈夫だってipod何て買っちゃってさ、色々言ってるけど大丈夫俺、いやらしいほどに「計画的」だろ、俺?


 少し、他の店も巡ったが何だかすごく疲れて、帰宅してすぐに、レンタルしている「ゲームセンターCX」をまた、小さな音量で再生して、布団を頭からかぶり、ぼんやりしていた。

 そして、いつまでもそんな風にはしていられないから、新しく買ったipodをituneにつないだ、したら、今まで27GBで一杯だった容量が一気に120以上広がって、本当に嬉しくって、「わーい」「わーい」って声があがった。

 別に大していいとは思えない美術作品でも、一定の物量、密度を越えるとそれなりの感慨を覚えることがあるように、てかさ、単純に沢山音楽わーいってことだよ、わーい。

 既に入っている曲を同機している内に、傍らに置いてある、古いipodを手にした。学生時代に買って、今回と同様電池交換のサポートも受けて、何年も使った、黒いやつ。今回買ったのは銀のにしてみた。特に意味はないけど。

 この黒い奴のおかげで随分救われたんだと思い(だって外とかで、いつでも音楽が聴けるんだぜ!)、付属品を全て外し、ロック状態にしてから、黒い奴の身体をパフで軽く拭いて、両手で抱き締めて、

「今までありがとうございました」

 と言うと、涙が溢れて止まらなくなった。連続使用時間は短くなってきたけど、まだまだ十分使えるんだ黒い奴。未だ使えるのに、もう、多分二度と使わないんだ、きっと、ずっと使わないと、こういうのって使えなくなるんだと思うし、多分、その必要もないし、未だ使えるのに沢山助けてもらったのに最後まで使ってやらなくてごめんな本当にごめんな。

 呼吸も粗くなったまま、涙をぼろぼろ流し、この涙がこの黒い奴の為だけに流されたわけではないことをすぐに自覚する。生来の情緒不安定と金なし状態が大いに関係していることは間違いない。君の為だけの涙じゃないんだ、ごめんな。

 黒い奴の為だけに涙を流すことが、俺には出来ない。でも、本当に、ありがとう。黒い奴のおかげで沢山楽しかった救われた。これを書きながらまた涙が流れて止まらない。そしてそれもすぐに止むだろう。新しい銀の奴と、君みたいに仲良くするから。許してくれるか? って、答えられないのは俺でも分かってる。その位の頭なら回るよ。許してくれなくてもいいし、そんなの、機械の君が考えるわけがないしね!

 確か三好達治の本で紹介されたのだと思うが、

 幾人もの内弟子を取っているような大家の内、(おそらく日常風景のように)「新人がいなくなるのを寂しがる若いぼっちゃん」、を唄った俳句があり、それよりも、「そんな若い坊ちゃんが新しく来た新人とすぐに仲良くなる」句を唄ったタイギ(漢字失念)の句の方が何だか物悲しい、と書いていたことを思い出した。

 別れを忘れるように出来ている。俺の好きな川端康成も忘却は恩寵だと語っているし、明日か、明後日か、もう黒い奴の事で俺はなかないだろう。それに、やるべきことは、銀の奴に、新しい曲、削除しまくった売りまくった、曲を、ロックを入れることだ。

 俺は大して(広い意味での)ロックのファンとは言えないだろう。ピコピコ、キラキラ、ザーザー、とか、後はオサレ系(嫌な表現だが分かりやすいので)のを主に聞いている。

 それでも自分の中で別格なのが、まあ、ポストロックとか音響とかに入るだろうが、great3 tortoise stereolab、the velvetundergroundらで、そういう陽気で陰気なのは良く聞いていた、あと、nirvana 。てか、ニルヴァーナは正直、俺にとっての「最高のポップソング」って感じだが、まあ、そんなことはどうでもよく、最近はロックを聞かず、売り、プレイリストからも削除しまくっていた。

 思えば大学高校の頃からあまりロックを聞いておらず、それは高校の頃ピチカート・ファイヴに強烈にハマっていて、しかも解散した後にはまったのだから熱の入れようはすさまじく、ピチカートのCDは40枚以上所持している。ピチカートは海外版とかヴァージョン違いをかなり出しているのだ。それに意外と活動期間も長くヴォーカルの変更が三回あり、

 最初期のバカラック+ジャッキー&ロイを良くも悪くも薄めてちょい切なくした一期、オリジナルラブの田島を迎えた、ソウルフルでクールでかなりエロイ、俺としてはオリジナルラブの田島よりも好きかもしれない二期、そして、東洋のバービードール野宮麻貴の三期。

 ピチカートのすごい所は、というか、ピチカートを聞くようになって知ったのが、アルバムのアートワークやらおまけやらを含めて一つの作品であると共に、アルバム一つで、一つの作品になっているということだった。

 一つのアルバムで「一曲」、或いは「一つの作品」となっているなんて、よほど馬鹿じゃないミュージシャンなら意識しているだろうが、ピチカートのそれは群を抜いて「形になっている」、と、俺には感じられた。

 そしてアルバムコンセプトによっての、楽曲への多彩なアプローチ。ワールド・ミュージックという言葉をピチカートに教えられ、小西さんが言及したアーティスト、とその仲間たちを買いまくっていた。世界には色々な人がいて色んな音楽を作っているんだ、そんな当たり前のことを実感した。楽しかった。

 だからロックも一応聞いていたが、あんまりなじみが薄かった。ロックって、やっぱ主張だと思うから。大勢の人への主張。何だか思いもよらない行為だ。しかも、バンド仲間を作る! 俺みたいに色々逃げまくっている人間には羨ましくもあり、また、羨望なしの他人事のようにも思えた。

 単純なフレーズの繰り返しで、「俺ってセクシーだろ」って言うのが、やっぱロックだと思う。男女限らず「セクシー」は皆が目指すべきものだと思う。それを「みんな」の前で口に出来るか、巧い形で披露できるか。難しい問題だ。

 とかなんとか言いながら、大学時代は「皆と同じく」radioheadには超はまっていて、特にok computerにはやられた、てか、一時期は全アルバム持ってた、

 でも、少しずつレディヘ熱も冷めてきて、トムがクリープで「君は天使だ」って希望と絶望を歌える(何だそれ)のより、カートが「頭の中に友達が出来てハッピー」「火つけると、神様見えんだぜ」「Rape me」[俺は結婚し俺は埋葬される]って言ってる方が、ずっと傲慢でキュートでクールで、それが楽曲にも表れているような気がして、そして何より、世界中に知らない音楽超あるしさ、

 てか、俺、結構、ロック好きかもって、思える瞬間もあったよ、もう沢山売ったりしたけどさ、
the strokes ,
the white stripes,
XTC,
garbage,
can,
the sea and cake
latin playboys
yo la tengo
なんかは今でも聞いてるし初期のbrian eno の[another green world]とか[
taking tiger mountain by strategy]の頃とかも超好きだったし(最近のは知りません)
devo ,
isotope217 ,
janis joplin .
kraftwerk .
malilyn manson,
my bloody valentain,
rage against the machine,
sonic youth,
terevision,
todd rundgren,
ultravox,
The Smashing Pumpkins,
Primal Scream,
blur,
talkingheads,
Mando Diao,
linkin park,
sex pistols,
patti smith,
The Jon Spencer Blues Explosion

とかも、聞きこんでるのとそうじゃないのもあるけど、やっぱ好きで、でも、売ったり削除したりして、

 後、さらに厄介なのが「日本語ロック」の人達で、単純にメロディーが、って問題抜きにも、厄介だ。でも、歌詞も超好きなのはgreat3! 本当に超好き! 活動停止だけど、でも一生待ってるからいい(多田由美の単行本を待つような気分だ)。
 
 そして、聞いていると何だか情緒不安定になるのが(自分で書いていてなんだこの文章、って思うよ)、スーパーカーペンパルズやデリコやナンバーガールプレイグスフジファブリックゆら帝や(初期の)くるりやプラやミッシェルやブランキーやコレクターズやカーネーションズやアジカンや髭やら、それぞれ好きだったりちょこっとだけ好みからずれていたりとかして、素直に彼らの音楽とは向き合えない。

 てか、やっぱ、日本語のロックは元気な人の、(「みんな」への)主張が(あまり)出来る人の音楽度が高いと思う。体力使うんだ聞くのに。

 それにサニーデイやらはっぴいえんどやハイスタやケムリやラッドやバンプムーンライダーズスネオヘアーやらアップル&ペアーズやら100sやらの幸福状態じゃないと聞けない系の切ない(超主観だね!)曲を作るアーティスト達、

 らの曲も、これからは、削除したのも含めて、銀の奴に入れて行こうと思う。音楽雑誌を読まないしネットでチェックもしないので、特に最近のロックは全然知らない、けど、日本のだと9mm相対性理論はかなり好みで、歩きながら口ずさんでいる。

 分かってるんだ、音楽は俺を置いていかない、音楽は俺を見ていない。

 ロックを聴くような心の余裕が出来た所だが、別に聞かなければいけないCDは山積み、でも、ロックも聞こうと思う。あと、一度くらい、ライブハウスにも行こうと思う。一度だけ友達とファンじゃないのに行ったことだったけど、なんか、空気合わないな、と思って(ファンじゃない人の演奏聴いたからじゃねーのかよ)。

 問題を一つ片づけると現れる新しい問題、だけど、よろしく、新しい、たのもしい、銀の奴。