女の子はみんな男前

男として生きてきて28年。初めて携帯にストラップを付けてしまった。男としてそんなんなちゃらちゃらしたものは好かんばってん、こげなもの女子供のつけるもんやないけ、と思っていたでごわすが、あのなめこのせいで、なめこのせいで、勝手にわいの携帯になめこが住んでしもーたけん、しかたなか。

 ついでにDSになめこリサとガスパールのシールも貼ってしまい、こりゃあ、あかんぜよと思った、ってばよ。そんでもって金が無くて、じゃなくて男としてゲームを売りに行ったら、レジ前にゲッソーのぬいぐるみがあって、今まであんなイカのことなんてどうでもよかったのに、急に欲しくなってきて、しかしながら拙者はもののふじゃき、生活費には手をつけんで帰ったんや、

 したらな、たまたま見ていたサイトで偶然にもゲッソーのぬいぐるみの作り方が紹介されてるやないけー(マジで)! こりゃあもうイカ神さんのお導きやっちゅーことで、新宿のユザワヤに行ったんや、こりゃあ大量にイカ祭りや、っつー風に思うとうたんじゃが、いざサイトに書いてあった材料を選んでいる内に「あれ? これ、自分で作るより普通に買った方が安くね?」って気付いてしもうたんや。

 そりゃね、初期投資の道具とか綿とかあるしね、大量に作るなら、作った方が安いとは思うけれど、俺さあ、かなり不器用なんだよね。つーかそれ以前にさあ、イカ作ってる暇あったら人生やり直せよとか思ってしまって、あーもう好かん好かん、イカなんて女子供のものじゃき、あんなん好きな人間の心なんぞ分からんきに。女心なんてわいにはさっぱり分からん。あー分からん。

 あくまで俺の好きな、という注釈が入るのだが、おおざっぱに言ってジャズ、ソウル、歌謡曲、フォーク系日本の女性アーティストの中で、作詞だけではなく、作曲もするアーティストにはある傾向があることに気が付いた。

 それは女の情念が恐ろしいほどに詰まっている、ということで、俺は曲が良ければ詩はそこまで気にしない(当然詩も大事だけど)のだが、気がつけば自分で詩を書いて作曲は男にお願いね、みたいな(こういうのも勿論好きだが)のとは違って全部私がやるわ、的な女性たちは皆、にこごりっつーかツイスト・ダガーみたいな恐ろしさで、何かよくわかんないんですけど、とにかく死に物狂いで愛を求めているわけで、

 CHARAは 「あいしていると誠実に目で語れ」とか言うし
戸川純は 「好き好き大好き 愛してるって言わなきゃ殺す」言うし
小谷美紗子は散々 「お願い あの場所だけには 新しい彼女を連れていかないで」とかいじましい言葉を重ねているようで、最終的に「要するに 新しい彼女を作らないで」とか言うし

ミドリは責め立てるように「気持ちいい事してみたい
なんてとてもやないけど言えんくって
涙のわけを知ってるかい 涙のわけを知ってるかい 涙のわけを知ってるかい
愛って悲しいね。
愛、愛、愛してる とってもとっても愛してる
あんたを1番、愛してる」とか殺す勢いで言うし、

古内東子は「私が今まで あなたのそばにいて 何か一つでも できたのならば 教えてよ」とか、絶対に、絶対に!「自分は出来た!」と確信していながら男に「言わせよう」とするし
奥村愛子は、貴方となら泥だらけのベンチで発泡酒でも二番目の女でもいいわ、とか言いながらサビでは

「蹴飛ばして噛みついて腕つねって
 目を覚ますのなら今の内分かっている癖に
 それから笑って諦めて少し泣いて もう戻れないの 受け入れましょ
 いっさいがっさい」とか言うし、

倉橋ヨエコは「あなたを食べてもいいですか 愛しているからいいでしょう 他の誰かに盗られるんなら 私の血となり肉となれ」

 とかさあ、「オウ……ジャパニーズガールイズ、ゲイシャクノイチカミカゼアタック」なわけで、そこまで詳しくないけど、コッコとか椎名林檎とか中島みゆきとか山崎ハコとか、もろじゃん!「死ぬ」とか「大きな声で言って」とか「恨みます」とか!

 こういう分野で(かつ俺が好きで)「憎しみも愛情も戸惑いもためらいも貴方の為だけに(い、いや、欲しいなんて言った覚えないですけど)」ではないのって、キノコホテルとか小島麻由美位だなあと思う。
 
 日本でDIVA系が根付かないというか流行らないのは、外国の女性アーティスト(アイドル)は平気で付き合っている(た)男をディスりまくるのに、日本の女性アーティストでそれをする人はかなり少ないのが一因だと思う。男にべた惚れだとDIVA感しないもんね。(キノコホテルとかはメジャーでギラギラ感がないのでDIVA系とは別)

 小西康陽が「女優が片手間で歌う」のが好きだと言っていて、俺もそれには深く共感するのだが、彼女達みたいな男前な感じはヤクザ・ガール(こんな言葉無い)のようで、かっこいいなとも思う(こともある)。やっぱ自分の力でこの東京砂漠で生きて行くんじゃ! ってノリならば、殺すエネルギーも満たんじゃあなくちゃね!

 中村珍という女性漫画家の全三巻の『羣青』という漫画は、男のDVに疲れた女が、学生時代自分のことを好きと言っていた数少ない友人の女に(しかし思いには応えなかった)、(愛しているなら)私の夫を殺してと依頼し、それを実行した女性との逃避行の話だ。

 殺した女はとても裕福で天真爛漫な、芯は通っているが良くも悪くもキュートでチャイルディッシュなレズビアンの女性で、殺させた女は昔からたった一人の父親からも愛情ではなく暴力を受けて育ち、厳しい環境を生き抜いてきた元アスリート志望、生き抜くための強さと多少のずるさ、抜け目なさをも兼ね備えた女性で、この強いはずだった女性が壊れて、二人の関係が再び始まり、動いていく。

 利用されていてもいい(でも馬鹿というわけではない)女と、自暴自棄になった後で打算だけでは生きられない女は、裕福で幸福な「殺した」女の家族も巻き込み、魂のぶつかり合いを描く。正直に言うと、ちょっとこれは都合良くねえか、と思う展開や、あまり効果的とは思えない(と俺には思える)大ゴマ、見開きの使い方や、逆に台詞を詰め込み過ぎてわけわかんなくなっている個所(意図した混乱としてではなく)とか気になる所色々あるのだけれど、それを吹き飛ばすような気迫がこの漫画には詰まっていて、久しぶりに、リアル、とは少し違うけれど、生きていると感じた漫画の登場人物だった。作者が魂削って(マジそうらしい、というかその経緯もホームページにあった)描いているのが伝わるだけで、十分素晴らしい漫画だなあと感じた。

 良くわかんないけどすごいね女の子。俺もイカとかイカじゃないのとか作らなきゃ。

 画像は、かわいいイカとかっこいいナイフ。