サヨナラの国、口づけの街に生きる


 


調子が良い時とか悪い時とかにはとにかくじっとしていられない。沢山喋ったり、やたらと外出してしまって、今日もそんな感じだ。シャボン玉持って恵比寿ガーデンプレイスへ。

 家にいるときは騒音対策で常にイヤホンをしているし、外にいるときだって音楽聞いているし、というか誰かといるとき以外はほぼイヤホン生活で(ヘッドフォンは断線が怖くて厭だ)、さすがにこれは健康によくないと思う。だからシャボン玉。

 始めの頃はシャボン玉を吹くときにイヤホンで音楽を流していたのだが、途中でショボイ携帯出来るスピーカーにつないで流すと、音量と音質はしょぼくても、それなりに楽しめることに気づいた。何より、外で音楽を聞くってのは、気持ちがいい。

 それに俺は落ち着きが無いから、ただ、ひたすら息を吐き続けてシャボン玉を作り続けるのはてもちぶさたにならずに済む。俺は煙草を吸わないが、多分ヘビースモーカーの人みたいな気持かもしれない。

 場所は公園でもいいけれど、平日昼間のガーデンプレイスの、あのぼんやりした空気感と、小奇麗な建造物の中でそれなりの往来がある場所っていうのが、しょぼいシャボンにとても似合うような気がする。

 流す音楽はガムランケチャや聖歌といった民族音楽系もいいのだが、なんといってもテクノポップが一番はまると思う。昼間っからノーフューチャーシャボン。

 saori@destinyのサヨナラリヴァイバル

 http://www.youtube.com/watch?v=K23j24as_9s


 a-beeのgame

http://www.youtube.com/watch?v=8QOz4NoJ9sk


Kiyoshi Sugo - KNOCKING ON YOUR DOOR

http://www.youtube.com/watch?v=vNsKGA2yhfU

野宮麻貴 baby
http://www.youtube.com/watch?v=sR0X4lEiWTQ

他にも多数あるというか貼りたいのがyoutubeに無かったりしたので、この辺で。俺はもう、本当にこういうキラキラした音楽に弱い。キラキラテクノとしょぼい、すぐに消えるシャボンは相性がいい。

 ふと、キラキラ度が増すにしたがって。ボーカルはほぼ女性に限られるようになってしまっていて、これは歴史に名が残るような著名な哲学者に女性がほぼいないことを想起してしまう。

 多分それは、キラキラした音楽の多くが、力のある男が若い、可愛らしい女性をプロデュースするという図式で成り立っているからかもしれない。俺はアイドルそのものには大して興味が無い(アイドルのファンとかになったこともない)のだが、その曲はめっちゃ好きになったりする。

 あの、効率的に消費される為の、デジャヴを覚えてしまう、「新しくない」、キラキラしたポップソングの数々。

 あくまで俺の好みでしかないが、広義でのアイドルミュージックという分野で、女性の方が男性よりもずっとハチャメチャであほくさくて稚拙でキュートで、要するに、テクノポップは女性アイドルの物なのは、多分プロデューサーがインスタントな恋心を、もっというならばサディスティックに傅(かしず)いているからなのだろ思う。女性は男を滅多にプロデュースしないというか、しても表だったりしない。男は男のアイドルに恐ろしいような感情を抱いたりなんて、滅多にしないだろう。


 悪ガキばかりを撮っていた写真家のラリー・クラークは、以前「年老いた俺を、あいつら(若いストリートのワルガキ)は年老いたオカマみたいに見やがるんだ!」と発言していた。それを聞いた俺は胸が痛くなった。彼は多分同性愛者ではない、のだが、彼の写真を見てギンズバーグ(ゲイでビート詩人)は「何でこれがゲイが撮った写真じゃないんだ!」と発言したらしい。

 俺も持っているが、彼の初期の写真には、少年の危うさと調子づいてる感じが良く出ていて、彼のカメラの中には確かにヒーローが、ワルガキがいたのだ。

 彼にとっては、ドラッグ、タトゥー犯罪者、街のワルガキが、いつだってヒーローだった。もう戻れない、あの時代の、ヒーローの写真を彼は撮り続けていた。

 小西康陽が過去アイドルソングについてのインタヴューで「ヒッチコックが主演女優に虚しい片思いを続けている感じ」と答えたが、それはかなりいい答えだなと思った。

 トリュフォーの「ドワネル連作映画」の中の一つに『逃げ去る恋』という題のものがあったが、アイドルはやがていなくなるからこそ、堅牢なのにはかなげだからこそ、素敵なのだと思う。

 俺は食事やら思い出やら花火やらを写真に残す人が少し苦手で、絶対に駄目だとかそういうことを言いたいのではないのだが、どーでもいいことならともかく、思いでこそ形に残さない方がいいのにね、と思う。

 例えば恋人同士だって友人同士だって、下らない秘密を共有しているからこそ、素敵なんじゃないかなと思う。秘密なんて、大したことないんだから、じきに慣れてしまうんだから。

 でも、ポップソングなら、何度だって出会える。簡単に飽きるまでキラキラを