シャボンはアルコールの調べ

 人からガルシア=マルケスの本をもらって、久しぶりに彼の著作を読む。『ぼくはスピーチをするために来たのではありません』

 帯にスピーチ嫌いの作家の全講演と書かれているが、とても読みやすく、彼の人柄の良さがうかがえるような内容だった。俺はマルケスは短編をいくつか読んだことしかない。幾ら生活が孤独でも、『百年の孤独』なんてまっぴらだ。

 文章がうまい人は読みやすい文を書く。それは相手に伝えようとしていたり、余計な部分、ナルシシズムやセンスがない文という、贅肉をそぎ落とす作業にたけているからだろう。

 でも一般には悪文と言われる人たちの中にも十分魅力的な人もいる。読み手は泥の中で砂金を探しているような文章になれるのだ。泥も砂金も好き、だとしたらその人は悪文家か、性格がひん曲がっている。

 性格がひん曲がっている、といえば大好きな川端康成の『千羽鶴』と『禽獣』を再読。『千羽鶴』は少しメロドラマが過ぎるような気がしないでもないけれど、『禽獣』は何度読んでも胸糞悪い上質な短編だ。

 ひどいはなし、を読むと案外俺もまだまだ生きていけるような気がしてくるから不思議だ。世界にはいろんな人がいるということ、いろんな不快感や美しさがあることを、俺はしょっちゅう忘れてしまう。

 もしそうだとしたら、生きているのもいないのも似たようなものだ。快、不快無いという生ぬるい地獄。

 腐った繭の中での惰眠。

 外に出たほうがいい、身体を動かしたほうがいい、とは思っていてもできない日々。

 過日、代々木公園にシャボン玉を吹きに行った。いい年したおっさんがシャボンと言うと、たいていの人が軽く引く。友人、知人を無理に誘って道ずれにしたことがあったが、一名の阿呆以外はみんなのってくれなかった。残念。

 だが、公園でipodとちっこいスピーカーでテクノミュージックを流しながらシャボンを吹くと、かなりトリップ効果が高いのだ。楽しいマジ。目の前に球体が幾つも! コムデギャルソン、草間彌生、あめざあざあ。

 ただ周りの人に迷惑をかけたり注目を浴びてしまうことが多いので、なるべく人がいない場所で、心を無にしてひたすらシャボンに集中するのが良い。宗教の勧誘にあったり、無断で写真を撮られても心を乱してはいけない。あ、ちびっこには欲しそうにしていたらあげよう、シャボン。

 数年ぶりにYMOを流していたら、えらくシャボンとあった。


https://www.youtube.com/watch?v=hto-Y9CfsFU


以心電信



https://www.youtube.com/watch?v=2T7TXVtGGFc

Tong Poo




東風のピコピコスカスカシンセとシャボンのキュートで間抜けがマジであっていて、うっとり。

 https://www.youtube.com/watch?v=iTLQofzisLY

ロックマン3 BGM ハードマンステージ


https://www.youtube.com/watch?v=t4pDT3Puwx8

ロックマン3 BGM スネークマンステージ



 ロックマンは何でもいい(個人的な好みだとFCの4までが特にいい)。でも一日にロックマンのBGMを何時間も聞いていると気が狂う。てか、ファミコンのBGMは脳に良すぎて、よくない。アルコールみたいだ。

 しょぼいシャボンの時間は、一時間もしないで終わる。終わるころには、シャボン液で手もびしゃびしゃ。映画館を出る時とは違った虚しさに襲われる。でも、何度も家で目が覚めてしまうよりかはまだましなのだ。

 きれいな死、生、なんてありえないのだから
なんて思いつつもそれがあったらいいのになと思う。つまらない考え。その足しに、今日も摂取するアルコールじみたミュージックとひどいひとのひどいはなし。