TMT YOURS

 Tシャツを二枚、鋲の付いたシャツを一枚買った、久しぶりに洋服を買った、シャツに顔をうずめると、仄かに店のいい香りがする。

 レディオヘッドやトム・マクレーコクトーツインズや、いつからセンチメンタルなロックを聞かなくなったんだろう?きっと、それは洋服を買わなくなった時期とかぶるような気がする。

 もう、洋服はそこそこ持っているし、派手な服がふさわしくない(着たく無い)バイト先、こんな生活をしていれば自然と服について考えなくなっていく。それに、第一俺には余分な金なんてないのだ。

 音楽や洋服や映画や芸術が好きな若者、トーキョウには吐いて捨てるほどいる若者達は、自分には大抵のことが出来るような気がしている、と思うのだ、そして、まあ、コレ位なら自分にも出来るかな、ということを選び、他の物を遠ざけていく。あれもこれも手にするのは難しい、というよりも無理なことだ、出来ると考えている人は、その事柄を甘く見ている人だ。

 俺は服飾を選ばなかった。でも、俺は洋服が好きだ、と思って過ごしていた、けれど、たまに意識する慢心、いつもと同じ服、同じコーディネイト、もう、素直に洋服が好きだと言えないことに気づかされるし、それでいいのだ、と思った、思い込もうとしていた。

 大袈裟なのは承知だが、今日服を買うのも相当悩んだ。だってこの金でCDも本もかなり買えるのだ。着ていない服が家には沢山あるのに、でも、今日買ってよかった、用が無くたって、洋服は買うべきだ、無用な物が精神を豊かにするなんて、常識だろ?

 派手な服を着たら、甘いロックだって聞けるようになるはずだ、好きなものを好きだと言えるように、センチメンタルな言葉の中で、目蓋を閉じられますように。