幻想庭園

何かあると髪が切りたくなる、てか、何もなくても切りたくはなるのだが。しかも髪に鋏を入れるのは楽しいのだ、そうだ、切っている最中は楽しい。しかし俺は自分の腕前を知っているので髪をすく位にしているのだが、調子に乗ってしまった。そして、その分をとりもどすためにまた鋏を握る、やり直しはできないからどつぼにはまる。プチ「ウシジマくん」状態。

 できあがったのは少年漫画の三下悪役(を中学生が描いてみた)ような男。よく言うと、片方は耳まで見えているが、もう一方は重めのアシメントリーヘアを流している感じで、あれ?結構いい感じ?しかし解決はしていない。現実は鏡を見れば分かる。

 俺は本当は長髪にしたいと二年、いや、もっと前から思っているのにできないでいる。ブリーチで髪が痛んだとか、くせっ毛だけらむかついたとか、あれ?ずっと思っているんだよね?馬鹿?とにかくこの髪で外に出るのが嫌だ。髪が伸びるまでおうちにいたいです、無理です。

 そんな三下悪役の俺はオサレ芸能人のエッセイ・フォトブックが好きでよく読んだり、安かったら購入したりもする。俺はその女性芸能人のオサレ度に過度の期待はしていない(そんなんしなくても楽しめる)のだが、LEEでモデルをして子供もいる雅姫という人の『花の本』は結構センスのいい本だと思った(とはいえこの本も含め最近出版されたオサレ本が本当に洒落ている物が多いのだが、つまり、この注、意味無くね?馬鹿?)。

 本に花が出ているだけでもう十分だった。俺とこのモデルは正反対といってもいいような立場にあるが、花が好きな点では同じだ。その中で彼女は自分の庭の花を描く画家を紹介していた。それは写実寄り、多少印象派的な画風で、まあそんなことはどうでもよくて、とにかくこれは幸福な絵画だと思った。芸術の逃走や闘争、アートワールドの運営から遠く離れた場所にある絵画だ。好きな物を描く、そのシンプルな行為は俺にだって素直に素敵だと言えるのだ。

 俺が花を好きな理由は、美しく、その上、さっさと枯れてくれる点だと思う。俺は庭を一生持てそうにないので、切花の方に親近性を抱く。俺は花と同じ美点を球体関節人形に見出す。しかし俺は(動物とかのおもちゃ)フィギュアは家にあっても、人間の形のものを家には置いていない(友人から貰った、スーツ姿のハリウッド俳優フィギュアが三体あるが、それはいずれも頭を捻じ切った。もはや人間ではない。オブジェクトだ。かっこいい)。俺は人形に感情移入することを恐れる。人形の「しかしそれは物体でしかない」という美点が、俺の一部になることで損なわれ、醜悪な形で増徴するのが耐えられない(とはいえ吉田良恋月姫の人形が手に入ったら大感激して迎えるだろう、ありえないが。その程度の意識なのだ。本当に人形に魅了されていたら購入しているだろう)。

 幸福が庭園の形をとることが想像できないのだ。馬鹿だから?