私の雑記帳

洗濯機から洗濯物を取り出そうとすると、衣服に白い物がこびりついていた。洗濯機の中には、誤って本が入っていたのだった。それは俺が好きな詩をまとめたものだった。花弁抄、とかっこをつけて書いた題名は、もう読めなくなっていた。

 バイト先に向うと、面と向って「この時期に辞めるなんて皆に迷惑かかるの分かってる?」と言う人や、「○○(俺の苗字)の指図だけは受けたくない」「辞める時期まで青臭い」と△△さんが言っていたよ、とにこやかに、わざわざ、嬉しそうに報告してくれた人がいた。とても気分が悪くなったけれど、発言者が俺のことをどうとも、ゴミとすら、思っていないことは分かる。俺は一応、あまり波風立てないように、気をつけて、二年も働いていたので、職場の同僚、と思っていたけれど。とにかく時給八百円台の場所で辞める決心は完全についた、早く来月になって欲しい。気持ち悪い馴れ合いや愛想笑いをするのはもう沢山だ。

 歯の痛みが抑えられず、頭まで痛くなるから、とうとう観念して歯医者に行った。怯え、を抑えながら、おずおずと、学生時代からずっと財布に入れたままの保険証を出す。何も変なことを言われるわけでもなく、治療をした。咥内の検査、診察、二十分、で三千円取られた。保険が利かなかったら一万近く取られたことになるのだ。親に感謝しながら、更なる出費を思い、気が抜ける。

 親孝行をしたい、と年に数度思う。実際できていることは、年に数度花束を買って家に帰ること位だ。就職をするのが一番の親孝行だと言うのは分かるが、したくない、以前にできない、ような気がする言われなくても青臭さを自覚している俺。気持ち悪い人間関係に席を置いてへらへら笑うのは一番の苦痛だ。

 働かなければ、自殺しなければ、と両極の間で揺れる、が、どちらも選択したくない青臭い俺。身体の思考の隙間に、憎しみが無数の泡のように生まれては弾け、生まれ、弾け、意志を削いでいく。新しい場所でも失敗を反復するのかと思うと、頭が重く奥歯は痛む。嘘をついて生きましょうと貴方が口にする。

 詩集を乾かしてみたが、開くとぼろぼろこぼれ、使い物にならない。もう、しばらく見ることはないだろう『中国女』のビデオの上で、未だ捨てられずにいる。