さよならおやすみまたあした

っていうタイトルの本をマックを使う前にやまだないとがそういえば出していた。甘ったるい内容で、でも嫌いにはなれないような漫画だった、はずだけど、多分俺はそれを引越しの際に売ったように思う。ないとの本は全部集める、と意気込んでいた時期も、昔あったけど。

 ふと、Y’sの一部変色したベルトとズッカのゼブラ柄の動かない時計とヒスのキーホルダーを捨てた。俺はアクセサリーや洋服を捨てられないタイプなのだが、たまに、こうやって捨てる。何年も使用していないのだから捨ててもいいものだって分かってはいるのだ。中々実行ができないだけだ。

 ふと、気づいたら髪を切りすぎてしまっていて、苛々して、しょうがないので、さらにジョギジョギ切ってカツオになった。とはいってもグリコのCMのカツオ程度の長さだ。大人カツオ役のただのぶの言葉が身に染みる「仕事は、辞めないほうがいいぞ」

 雑務やらなにやらをこなしつつ、小さな範囲で浮いたり沈んだりを繰り返す毎日。当初は五月中に決まるだろう、と楽観視していたのだが、もはやそれは叶わず、とにかく幾ら選考から落ちても再度応募して、待つしかない俺。

 そんな時の読書はやはり新しくない物に限る。図書館を辞めたくせに勤めていたのは別の図書館に行って大量に読みやすいエッセイ本を大量に借りて読み漁る。まるで週刊文春新潮(スパ! とか裏物ジャパンとかでもいいです)のバックナンバーを読み漁るような、空腹を満たす為にマックでひたすらハンバーガーを食べるように、浅ましく。エッセイは女性の方が圧倒的に面白いのが多いのは何故だろう。生活ができている、生活のこまごまとしたことを楽しめるからだろうか?俺はそういうタイプではないようだが。

 とはいえ何だか自分が二週間以上も仕事をしていないという事実が何だかぼんやりしたようで、現実味が薄く、それはweb上で応募したり履歴書を送ったり面接をしたり、といった活動を行っているからで、それはやっぱり苦痛なのだけれど、まあ、仕事なしで少ない貯金を食いつぶすよりかはマシな行為だ、と信じている。

 そんな時に頼りになるのは結局活字。他人の物語よりも自分の物語の方が大切な俺、「巨匠の凡作と投売り五十円ポルノヴィデオ位しか楽しみのない三十前の割りと美人女性がメロドラマを楽しむ」小説を書き終え、早く別の小説を書かなければ、と焦燥に燃えつつ、今、とにかく書いている。人間が(割りと)まともな生活を送る為、依存先は分散させるのが理想的だが、そんな上手くは行かない俺、だけど人間に迷惑はかけていないのでよしとするいや、したい。

 鈴木弘樹の『よしわら』という小説を読んだ。風俗ライターの男が風俗店の界隈でふらふらする話。何だかんだ言って、小説も読んでいるのだ週刊誌だけじゃ嫌なんだ俺。小説に文句を垂れながら手が伸びてしまう、のだが、この小説は文句が付けにくいものだった。改行をしない会話文を「」でくくらない、硬質の野坂昭如みたいな文章。普通だったら○○のようなといった表現は褒め言葉には使用しないが(俺にとってはそうだ)、便利だからそう口にしてしまう物だ。しかし、彼の小説は先人の影響を受けてはいるだろうが、それ以上に、比類するような何かを見出す程のものだった。正直な所、少しだけ甘い印象を受ける部分もあったが、粗探しの部類に入るだろう。

 新人作家がとても気になったのって、滅茶苦茶久しぶりだったから、多少興奮気味に彼の名前を検索してみた、のだが、新潮の賞を取ったこの作品しか出していないらしい。しかも調べてみれば、彼は三十半ばで受賞してから、電話にも出ず、人が五人以上集まる場所も嫌だと断って授賞式にも出なかったようなのだ。これが2001年の段階で、だ。もう彼の次回作を見ることは絶望的だし、彼自体まともな生活を送っているとは考えにくい。

 ふと、この前で訪れる羽目になった池袋の風景を思い出した。俺は池袋に思い入れがないせいか、あの街に何だか変に寂しい印象を受ける。そこそこ栄えているはずなのだが、何だか野暮ったいというか。俺は引っ越し先に(都心にしては安いから)池袋を考えたことがあるし、実際幾つか物件も見たのだが、決めなかった。それは池袋と言う街が嫌なのではなく別の理由によるものだし、いい物件が見つかれば今、引っ越したって構わない、のだが、池袋は何だか寂しい。俺の空元気に通じるものを、勝手に感じているからだろうか?特に今のような不安定な状況に限らず、前からこれは感じていたことだ。新宿は汚くって好きだ(渋谷は高くて住めないし中目は高いし、何だか今の俺には合わない)けど。

(年齢の問題ではなく)若者が人知れず死んだり腐ったりしていく様子を思い浮かべると、十回は行ったことはあるはずなのに、未だに道が分からない池袋でふらふら歩いている感覚に重なる。もし、仕事が決まったならば、池袋にすみたいな、と少し思った。まだ、嘘をついて金を拾いたいんだこんな表現をする程労働をどうしても受け入れようとしてないんだ俺。