天の国で会いましょう

約束した期日になっているのに、合否に関わらず連絡をくれると言っていたのに、電話はならず、引きこもっていた家から出てポストを見ると見慣れない封筒。中を見てみると、住民税の支払いを求める紙だった。中を読んでみたが、よく意味が分からなかった、ただ、金を払えって、言われているのは分かる。なんか色々どうでもよくなり、ATMで金を下ろし、近くのコンビニで払った。そのままふらふらしていると、ドラクエ9発売の大きな旗が目に入り、予定は無かったのだが購入していた。

 とはいってもいつかは購入するつもりだったのだ。五千二百円のドラクエ。こんなのに金を使っている場合ではない、けれど、さっさとクリアして売れば高値で売れる。さっさとクリアして売ればいい、なにより、十分に時間を拘束してくれるだろう。

 散々多方面で叩かれているように、陳腐な天使と悪魔の話、キャバクラ内輪ネタ、見知らぬ人とプレイできるはずだった残骸。とはいえドラクエにこういったものを期待してはいないのだ。ただゲームバランス、快適なインターフェイスや絶妙な戦闘バランス等に期待していた、のだが、そちらも酷かった。考えなくても平気なぬるい戦闘、仕掛けのない、マップ表示さえされたダンジョンに膨大な(ファミコン初期のRPGを思わせる)ただのお使いクエスト。しかもクリア後のおまけ要素も、単純作業の繰り返しなだけ。正直今までプレイしたドラクエの中で最低の作品だと思った(7以外クリア済み)。でも、RPGとしては凡作以上佳作(秀作)未満といった風で、そこそこ楽しく遊べた。俺、三日で三十五時間以上プレイしてた。ドラクエのことだけ考えて生きてた。その間に自分から連絡をして、落ちたことに気づいたけれど、ドラクエがあるから平気だった。初めて加わる仲間はニートだし(親に早く働けとか言われる!)早く天の国の平和を取り戻さなくっちゃ! いやあ! ドラクエって本当にいいものですね!

 発売三日後に同じ店で売ると、四千六百円で買取をしてくれた。千円以下でプレイができた。それがどうした。

 そういえば数日前に清水アリカの『天国』を再読していた。以前区外から図書館で取り寄せてもらって読んだ本が、近くの古本屋で百円で見つかったのだ。単純に嬉しかったのだが、彼の本で(借りて読んだが)持っていないのは後一冊だけか、と思うと、少し寂しくなった。

 彼の著作の多くはちょっと変な近未来での少年の小冒険、と言った話が多く、こういうのをサイバーパンクとかいうのかもしれないが、SFとかを読まないのでよく分からない。
男娼と味の素舐めるとトリップするチンピラが金持ちを脅すぜ! 二人とも後で死ぬぜ!
という可愛らしい話。題名の「天国」とは、舞台にも登場するつぶれたアミューズメントパークっぽい所から。 


「知っているって、何を?」
「天国だよ」
気がつくと男の子の姿は見えなくなっていた。運河の向うでネオンサインが点滅している。黒猫の死骸がコンクリートの上に置き去りにされていた。K児(相棒の男娼)が爪先で黒猫をつついた。開いて硬直した口から羽化したばかりの蠅が数引き、唸りを上げて飛び立っていく。
「行ってみたい?」
「行くってどこへ?」
「決まってるさ。天国だよ」


 短期間に二つもの、イタくて可愛らしい天国を目にできるなんて俺の人生もまだまだ大丈夫ですね。もし、死んでこんな天国(ドラクエの超劣化メガテンみたいな天国でも)にいけるなら、喜んで、するけれど、そんなわけにはいかないし、皆さんに会うのはきっと、随分先の話になりそうですが、もし、俺が前向きになって、よかったら、俺と天国で握手!