十字架で待ってるマフィア

 新しい曲を買ったり借りたり、その度に、ipodに入れる為に音楽をけずっていく。もうこんなの嫌だ、と思いつつも、ずっと続けている。俺は30GBのを使っているのだけれど、聞かない曲だってそりゃあ中にはある。でも、だからって、残しておきたい曲だってあるだろ? 沢山。

 以前読書家の友人が読んだ本を片っ端から捨てると言う話を聞いて、とても驚いた。かっこいいと思いつつも、何だか悲しくなった。だってさ、捨てる「必要」はないんじゃないか?

 そんなんで、本当はアルバム全曲を入れたいのに、いい曲だけ選んでインストールしている。やはり、味気ないし、ガンガン色んなジャンルの曲を聞こうという意志がなくなってしまう。だからキャッチーな、ハウス、ダンス、ポップソングばかりを聞いてしまう。ま、元々そういうのが好きなんだけれど、ロックに浸るのが何だか怖くなってしまった。60分、元気いっぱいに陰鬱になるのは、やっぱきつい。

 そんな中でこりゃあアルバム全曲入りだ、と、(自分としては)珍しく思ったのがsaitoneの overlapping spiralというアルバムで、彼はチップチューンで演奏しているのだが、チップチューンと言えば俺が超好きなYMCKみたいなファミコン調の(みたいな)貧弱な音源でキャッチーなメロディーを作り出すジャンル。YMCKは曲名にスイングとかビ・バップとかコルトレーンとか登場するようにジャズの要素を巧みに曲中にアレンジしているのだが、saitoneは「今」の、エレクトロの音がした。

 って、俺別にエレクトロ詳しくないけどさ、チップチューンなのに音が新しいの。それでいてピコピコ、シンセ音の色気もあるし、かなり楽しめた。こう言うのが、色んな手段で表現する、しかもハイクオリティなのがもっと増えるといいなって思う。音楽に限らず馬鹿みたいに奇をてらって目立とうとするのではなく、「これおもろいんじゃね?」みたいな発想が伝わってきて、とても嬉しかった。

 あとA-bee polyphonic cityもよかった。いわゆる聴きやすいハウスミュージックなんだけど、その引き出しがとても多くて、飽きずにアルバム全部聞き終えることが出来た。サービス上手って感じがした。ハウスって基本的にアルバム通して聴くとダレルというか、飽きる。だって、そういう風な構造になってるんだもん、踊らせたりゆったり休ませたりとか、そんなのCDとして消費するなら知ったこっちゃないよ。もっと冒険してくれよ。てか、単に俺が短気で飽き性なだけかもしれないけど。でもA-beeのこのアルバムは、突出しているというわけではないけれど、かなりの良版だった。

 ずっと前から考えていて、たまにこの日記でも書いているけれど、ハウスミュージックと批評には、通底する、抗えないような引力と物悲しさとがあるとおもう。どちらも何かの「周縁」を幸福そうに、ダンスをしているように、俺には思う。それは、俺がハウスにも批評にも、好みつつも愛情が欠如しているからなのだと思う。はしたないけれど(どこがだ?)しなければならない或いはしたいからする。しかし、はしたない(どこがだ?)。といったようなことを次に小説を書きながら考えていきたいのだが、それよりもまず、かたづけなければならない海賊(マフィア)と御姫様。

 その為に、俺はもっと、素直になるべきなんだって、そう思う。素直ってなんのこっちゃ。ゲームセンターCXの新しいDVDを買うこと? それもいいけど、てかマジで欲しいけど、新しい音楽をガンガン聞く為に、160GBのIPODを購入すること。電池交換用の保険を利用するから三万弱かかる。だせなくはない、けど、正直こんな状況で出したくはない。それに、それがあったからって、劇的に変わることはないし、って、ようするに、度胸が足りないのだ。

 でも、それよりももっと度胸が足りないのは、数年前からずっと、胸から腹にかけて大きな十字架のタトゥーを入れようと思っていることだ。調べると大体五万から7万の間位かかるらしい。これこそ超自己満というか、ipod二台以上買えるよ! 馬鹿だろ。

 しかも、胸に十字架のタトゥーって、もう、発想がヤバイ。どこの中学生ですか? タトゥーしてる人が大量に載っているタトゥーマガジン系のを見ても、そこまで露骨ないたい人(別の意味でヤバイ人もいるけど)は見たことがない。本当は全身花のタトゥーと有刺鉄線(このセンスもヤバイね!)を入れたいんだけど、それこそ数百万かかる。だから妥協して、十字架、胸に。

 俺は原罪なんて信じていないし、帰依なき信仰こそが、自分の生きる道だとそう信じている。だから、キリストってかっこいー、とかその程度の認識だ。でも、キリストの信者が十字架タトゥーを入れ長髪髭の俺を冒涜だと感じたとしても、絶対にキリストは許してくれるって信じてる。そんな馬鹿なことで怒るような、カッコ悪い人じゃ、絶対ないはず、だから。

 俺の体中が花々だったら、きっと、楽しくなる。そして、普段は服の下に隠れていて、ちょっとした時に胸から腹に刻まれた十字架を見ることが出来たなら、未だ、頑張れる気がする。海賊、いや、マフィア気分。十字架の為に日雇いのバイトをすることも考えている。今の状況じゃ難しいけど。

 でも、幾ら恥ずかしくっても、俺が気持ちいいのだから仕方がない。身体に十字架わーい、だ。最近ちょっと色々テンションが上がり気味でヤバいなーと思いつつ、あ、いつものことか。

 十字架について、考えていきたいと思う。俺のこれからのために、自分の人生の為に。頭の悪い小説を書く為に。