こどものあそび

 


「急なキャンセルが入って、チケットあげるから行かん?」と友人に誘われて、喜んで承諾する。ショートショートフィルムフェスティバル&アジア2013。

 百以上の国から出品された、五千以上の短編作品の一部を見られるこの映画祭は、以前から「いつか行こう」と思いながらも行ってなかったわけで、こういう機会を得られてラッキーだと思うし、誘ってくれた友人に感謝。

 新しい刺激を求めているつもりでも、気がつけばルーチンワーク的グレイヴディガーになっていることが多く、日々の反復の中にこそ思考の練磨があると思いつつも、それにいいわけめいた感情を受けてしまうことがある。

 修行僧のような新兵のような(ある一面で)ストイックな姿勢は好ましいけれど、それを自分自身で破壊する欲求は必要だ。

 なんて大層な話でもなく、新しいものに触れ続けることは絶対に必要だって、そんな単純で結構面倒な話。

 映画のオムニバス作品を見る際には好きな監督がいるかどうかで決めるようにしていて、他のがつまらなくてもその人の作品を見られたならば十分だという気分になれる。

例えば、
パリところどころ
『水の話』
新・七つの大罪
ベトナムから遠く離れて』
『10ミニッツ・オールダー』
世にも怪奇な物語

 って、最後の以外全部ゴダールの作品が入ってるというか、まあ、今思い出すままに挙げたオムニバス作品集はどれも良作だと思うけれど、結局似たような、好みの物を見てるんだよね俺。ゴダール大好き! 

 でもゴダールが好きとか言うとマジで面と向かって「お前は駄目だ」とか言ってハブられたり厭な顔をされたりすることが何度かあったので、(特に映画好きの)人前で口にしようとは思わないけど。町山智広と柳下殻一郎のコンビもゴダールを嫌っていて、二人の著作のファンとしてはちょこっとショックだった。あんなにクールで出鱈目でチャーミングなのにね。


 フィルムフェスティバルの作品は有名な監督ではないらしく、多少の期待と不安が入り混じるが、こういう機会はありがたい。このフェスティバルは色々な場所で行われているらしく、俺が呼ばれた会場はスカイツリー近く、初めて肉眼でスカイツリーを見た。

「あーでかいねー」とかどうでもいい感想がこぼれるし、色々な角度から見てみる。大きな建造物は結構好きだ。美術作品でもマッス、というわけではなく「大きい」だけでそれなりの存在感があるだろうし。でもタダでかいだけなら、建築物の方が好きだ。特に作りかけの、鉄骨が剥き出しになっている、あの廃墟めいた機能美は見ているだけでわくわくしてしまう。

 そして上映される、真新しいビルの中の会場は、

 しょ、しょぼい! 会議椅子のような椅子が並んだ場所にあまり大きくないスクリーン、しかも、音響が不味いというか高温になると音割れしてる個所さえあって、学校とか教習所クオリティだよこれ!

 とはいえ、ホームシアターだと思えば十分過ぎる、のだけれど、何でその辺りを気を使わないのか謎だと思った。浮草生活のおれは「しょぼい」のに慣れているし気にならないけれど、会場やイベントとの組み合わせが悪いのはやっぱり居心地悪い。

 不安感が増しつつ上映された最初の作品は、あーあのー「ほにゃららの中心で叫ぶ」系の作品で、もう、自分で選ぶ際にはこういう作品は確実に回避するから、ある意味新鮮だった。うん、それにこれ、十分少々で終わるしね!

 とか期待値ダダ下がりの状態で観賞していたのだけれど、他の作品は結構興味深かったり、数分しかない中での一発芸が効いているのとか様々なバラエティに富んでいて、十分楽しめた。

 ここで書いても仕方が無いが、ホームレスがおろしたてのスーツを拾う話と太めの女の子がと競争に出る話が好みだった。短時間でサクサク作品が見られるのは集中力の無い俺にはぴったりだし、普通なら見る機会の無いはずの作品に出会えたと思うと、なんだか観賞後もいい気分になる。


 その後でスカイツリーの複合施設、っぽい建物をふらふらすると、水族館とプラネタリウムがあって、目の前行くだけだからと無理に友人を誘って、本当にチケット売り場の前に行く。

「水族館とかプラネタリウムでテンションあがるとかガキかよ」
とか笑われてしまったが、いやあ、俺好きなんだ水族館もプラネタリウムも。

 特に水族館は誰かと行った時に「あーあそこ魚いる」とか「あーあれすげーでけー」とか一々口にしていて、「子供みたいだね」と異なる相手なのに何度か言われてしまい、その度にデジャブが。でも、一々楽しいじゃんか水族館。

 とかいいながら大好きって訳でもなく、テンションは上がるが、割とすぐ飽きる。魚長時間見てもなー。ゲームみたいに一緒に泳げるとかならいいのに。でも、見れば行きたくなるんだ、水族館。

 星座なんて全然知らないというか覚える気もないのだが、プラネタリウムも好きで、以前家庭用の投影式万華鏡を(星を映すのは高かったので)定価六千円のをアマゾン先生で半額で買ったことがある。超わくわくして暗くした部屋で投影すると、マジで、しょぼかった。多分数万のを買わないと「おれんち星空」にはならないらしい。

 プラネタリウムはそれこそ]数年行っていないが、あの、映画館で映画を見たときのような、作りものの星々が、ふっと消えるあの瞬間はとても好きだ。

 新しいこと、って大抵外れだったり想像とは違うけれど、でもできるだけしていきたいなと思う。久しぶりに星や魚にも会いに行こうか、それとも別の「子供っぽい」何かを。