屑の香り、わくわく

少し年上の友人に「海に行ったか」とかそういう話をふられて、
「え、海見たいならグーグル・アースあるよ」と返したら、残念そうな視線を浴びせられて「現代っ子だなあ」と言われた。

 子、って年ではないが、確かに暇さえあればipodパソコン携帯ゲーム漬けの俺は、ヴァカンスとリラックスが苦手な現代人(っ子)。海が嫌いなわけではないのだが、もう何年も行っていないし、最後に行った時も、五年以上前に、葉山でやっているジャコメッティ展に行った時についでに行ったっきりだった。

 でも、伊豆の駅に下りた時の、あの潮の香りは今でもありありと思いだせる。その香りだけでも、すごくわくわくした。海が見えなくても、潮の香りは感じられるなんて!

 海がたいして好きな訳ではないけれど、行けば脳内わっしょいが始まり(は?)、結構盛り上がってしまって、何だか千葉のネズミ王国に行った時もそんな感じだったかなと思う。


 初めて千葉ネズミ王国に行ったのは小学生の時だが、王国を男友達とふらふらしていると、プルート(犬人間)がやってきて、いきなり過剰なジェスチャーと握手をしてくれて、ガキながらに「男のおれにこんなサービスをしてくれるなんて」とその(中の人の)プロ根性に感銘を受けたのを覚えている。男、っていうか、その当時の俺は明らかにガキんちょなのだが、まあ、王国万歳! 「僕に会いたければお父さんお母さんからお金をせびれよ」と微笑むミッキー万歳!

 ディズニー映画はあまり見ていないのだが、ミッキーのフィギュアや服はたまに欲しくなる。ブランドとコラボしているのも結構あるし、ギターを叩きつけてるのとか、モンスターの脳になったけだものミッキーとか結構かわいい。

 自分でカスタムするなら、ギャングスタばりに歯にはギラギラしたダイヤ(フィギュアだからジルコニア)を埋め込んで、手にしたジンバブエドルの札束でオプションで付属しているガキをひっぱたいている感じのが欲しいです。そんなのありえねーよとか思うが、意外なことに公式がマリリン・マンソンの描いた脳みそぱっかりミッキーの水彩画を認めていたりして、侮れない。世界のホスト王ミッキー、欲しい。
 
 ジャコメッティは一番好きな彫刻家で、当然展示は素晴らしかった。作品が本当に欲しかった。買えるわけないのだが。
 
 ジャコメッティについてのジュネや矢内原のエッセイも好きなのだが、そういえば日本の彫刻家は外国の彫刻家に比べて圧倒的にざらついた、荒々しさのあるフォルムが少ないなとか思いつつ、行ったこともないヨーロッパの海辺の町々、白い壁と強い日差し、塩害に強い木々を思い浮かべながら、日本の海沿いの街ではどういった植物が植えられているのかなと思う。そして、海沿いの街で暮らしていた人達は、潮の匂いで何かを思い出したりするのだろうかと思う。

 調香師という職業があって、なろうと思ったことはないが、何だか憧れの職業で、彼らは食品や香粧品の香料を調合する職業なのだが、どうやってなるのかとか試験はどうなっているのとかどうやって箔をつけるのかとか、色々と興味深い。だって、香りなんて、好みによるのが多いような気がするし、でも、些細な違いというのが確実にあるはずだからだ。

 特に気になるのがブランド物の香水の選定法で、だってあれは(俺らアジア系よりんも)体臭の強い外国人用に作られているはずなのだが、トップノートからの香りの変化を何人の身体で実験しているのかまたその測定方法はとか、その香水を(複数人で)選ぶ際の調香師の男女比はとか、理科の実験みたいで面白そうだ。俺は理科も「さんすう」も得意ではないが、だからこそ「錬金術師」みたいで、かっこいい詐欺師みたいで、なんだかかっこいいと思う。

 『美味しんぼ』の(初期の)山岡さんみたいで屑かっこいい。

「(空気を読まずに)この料理は駄目だ、なってないね」
「料理人激怒」
「来週また来てください。俺が本当の料理を教えてあげますよ」
「料理人感動」

 というゲスい構成の読者を馬鹿にしている無限ループはトリップ感さえあって、マジで好きだ。

 香りで金を稼ぐって、プリミティブというか、獲物を仕留める原始人のような力強や生まれ持った資質を感じられるし、生活に必須とは言えない、文化的というよりもむしろ御遊びの無駄能力で金稼ぎというのが素晴らしいと思う。

 無駄能力は多少ある俺、外を歩きながらipodをいじりアーティスト名を探しながら、大して詳しくもないのだが、日本のパンク(系)バンドの名前は、赤痢原爆オナニーズ頭脳警察、外道、スターリン、非常階段、穴奴隷、とか放送コードにひっかかりそうなのが多いなあとかどうでもいいことを思う。

 どうでもいいことばかりの生活、匂いをかぎたくって、ひやかしで入るrush やthe body shopもどこの店舗の店員さんもネズミ王国級アグレッシブな接客をしてくれるので商品を買わずにいるのが結構気まずい(買わないが)。俺が匂いかぎまくっていると、店員さんが「こいつ頭大丈夫か」みたいな微笑ましい対応をしてくれたりするし。満面の笑みと共に「食べ物じゃないですよ」って知ってるわ!

  http://www.youtube.com/watch?v=5vBv6UkS1o0


 paris match のdeep insideとか聴いちゃって、
「遠い夢をみている間に深まった 傷を埋め尽くせるほどに 今花を届けて」

 とか歌いながら帰宅している途中で、大量に捨てられているアダルトdvdの束にふと目をやると、なんと、未見(というか詳しくないが)の、石井輝夫の『徳川女刑罰史』が!(他にあったのはどうしようもないのばかりだったが)。ちょっと迷ったが、持って帰った。dvd拾ったのは初めて。エログロもホラーもそれほど好きな訳でもないのだが、思いがけない贈り物って感じで(は?)少し心が暖かくなった。キャッチコピーは「責めて責めぬく一時間三十分 縛る!刺す!斬る!焼く!野ざらしにする!」正直こういうのは友達とわーわー言いながら見るものかもしれないが、今日の夜にでもみようかなと思う。


「思い出してた 出会った頃には 見つめるだけで感じあえてた deep inside」って気分だマジで。

 ああ、いい気分だ拾ったポルノ、そしてdeep inside!