散歩ばかりの

 どうしようもねえなって、酒と薬を飲んでどんよりとした眠りに抱かれる、とけたたましい携帯電話の音で起こされて、どきどきしながら名前を確認すると友人の名前で、ほっとして出る。

 何やら不幸があったようで、とりあえず阿呆な話をして慰めようとする。

自衛隊のレンジャー部隊の演習(山中のきつい訓練)で、野生の動物食べるんだけど、蛇が2ℓペットボトルに入っていて、ガムテープの上に名前が書いてあるんだけど、それが(俺は好きじゃない)「A●Bの大●優●」って書いてあったからマジうけた! なんかさあ、能天気な自衛隊員が、性格悪い(偏見)蛇女食ってる見たいな感じがして!」

 正直その画を見なければ面白さ半減なのだが、友人はそれなりに面白がってくれたらしく、その後もどうでもいい話をしていて、ふと、
「俺ガキの頃さあ、歩いてたらマンホールに落っこちたんだよね。スーパーマリオブラザーズ、てかマリオじゃね?イッツミーマァリオーゥ!(ニンテンドウ64版)」

 とノリノリで言ったら、友人から「知り合いの知り合いで、それで半身不随になった人がいたよ」とマジなトーンで返され、いきなり数メートル落下することになるんだから、そういう事故があっても不思議ではない。まあ、打撲だけで済んだ俺ラッキーだったなーと思った。てかね、そこ、パーテーションも看板すらなかったんだよ。落ちて当然だよ。マンホール開けっぱなし、ダメ、絶対!

 昔から花柳界物というジャンルはあっても、京女物という呼称は無いように思う。でも、京都を舞台にした映画の多くはなんだかんだで女性が主役になる場合がとても多いだろう。

 しぶちん(ケチ)のくせに、「嗤われる」ことを異常に嫌う京女、というのが映画の中の存在だとしても、それは(傍から見るならば)結構興味深い存在で、それは彼女達が戦争に行く兵士に似ているからかもしれない。戦争映画はいつも男が主役で、しかし着物を身にまとうのならば、そこは女の戦場になる。

 ずっと前から見ようかな、と思っていた無数の映画の中の一つ、『女系家族』を見る。当主が死亡した後で、その愛人の存在が明るみに出て、三人姉妹が争いをおこす、といった結構ベタな、でも安心して見られそうな内容だった。主演女優も有名どころで、特に京マチ子のいやらしい感じの、肉感的で(それなりに品があるのに)ちょっとやぼったい演技がとてもいいなあと思ったが、映画自体は結構退屈なものだった。

 決して悪い映画ではないのだが、全体的に安っぽさというか、品が無い感じというか、こういう映画って着物を身にまとった際のすっと背の伸びた、しかし細かい所作のような拘束された機能美、その乱れに感銘を受ける感がするのだが、そういった物をこの映画からはあまり感じられなかった。サービス精神満点なテレビドラマ的な、見れば面白いのだが、良くで来ているのだが、そこかしこに下品さも品の良さも感じられない。

 個人的には市川崑監督谷崎原作の『細雪』がこう言ったジャンルでは一番だと思っている。同じ谷崎原作ならば溝口健二の『お遊さま』も結構好きだ。って、原作者の谷崎をそこまで好みというわけではないのだが、あの隙の無い文章は好きだ。

 続いて『吉原炎上』を見る。この映画も色んなところで軽くネタばれをされていたのだが、女優の体当たりの演技が楽しかった。そう、裸になることなんて、気が違ってしまったようにわめき叫ぶなんて、普通にすればいいのに。とはいえ、少し演出過剰でそれはどうなのかなあと思う個所もちらほらあったのだが、そういうのが気にならない人にはとても胸に残る映画になっただろう。

 文句の無い女優について言うことはないのだが、チョイ役の岸部一徳が出てくると、なんだか妙に惹かれてしまう。別に好きだ、というわけでもないのだが、陳腐な言葉ではあるが、味のある俳優だなあと思ってしまう。奇妙な存在感を持った俳優。

 そんな彼が出演した映画で(主役は真田広之)、乱歩原作実相寺昭雄監督の『屋根裏の散歩者 〈完全版〉』がある。面倒なのでコピーすると、

舞台は東京のうらぶれた下宿館。屋根裏を徘徊し、住人たちの淫らな私生活を覗き見していた青年が、次第に恐ろしい犯罪に手を染めていく。R-18作品

 ということで、結構露骨な性的なシーンがあるのだが、それがきちんとねっとりと、いやらしく撮られているのがとても良かった。映画におけるセックスシーンの退屈さには本当にげんなりしてしまう場合が大半で、だって、記号的なセックスを見せられるってのは表現の放棄といっても過言ではないだろう。だったらそんなシーンさっさと飛ばせよと思う。やるならちゃんとして、そうじゃないならさっさとカットすればいい。

 この映画のオーディオコメンタリーで面白かったのが、男が腰をふるシーンで、「何度も振るな」と映倫から文句がきたらしく、監督が「映倫の人は早漏なんですかね」とか言っていてかなりうけた。他にもあんなエログロ挑戦的映画を撮っているくせに、結構のんびりぼっちゃんな発言ばかりしていて、とても健康的で良かった。

 健康。なんて考えると何だか頭がぼんやりとしてしまうのだけれど、まあ、幸福なミュージックでもかけて。INSTANT REPLAY


http://www.youtube.com/watch?v=DTQrZq2bUMs