ばかのはなし

体調が良くないというか、来月には家を出て行かなければいけないのに引っ越し先も仕事も見つかっていないありさまで、ふとした瞬間に色々と厭になるのだ、買い物に出るのだ。
 
 本当に買い物が好きだなあと思うが、割と買わなくても、商品を手にとり眺めるだけでもそれなりに満足できる。

 とか言いながらも気の無い理由で色々と購入。家の中には封を切られていない品や値札が貼られたままの品も、ベッドの上で眠っている。ベッドの半分はそういった品々で占められていて、俺は自分が案外寝相がいいらしいことを知る。

 頭がぼんやりしていて、余計なことを考えられないせいか、こんな時は音楽が良く聞こえるような気がする。集中力が無い性格なので、いつも「ながら」聞きが多いのだが、ただ、歩きながら音楽を聴くと、色んな音で音楽が構成されているんだなあと阿呆な感想を抱く。

 こういう時には、男性の、けだるい声が音がいい。
http://www.youtube.com/watch?v=3KAWp9Hmh2I
 
http://www.youtube.com/watch?v=R_f_mMJAezM
 
http://www.youtube.com/watch?v=Uk00Vcld2A0
 

 ロメールの『獅子座』とかルイ・マルの『鬼火』が見たくなる、けれど、あんなの今見たら落ち込んでしまいそうな気がする。どちらも、だらだらと、男が不幸になるだけの映画。

 テスト前に部屋の掃除を始める馬鹿ガキのように、レンタル期限が近付いている映画を消化する。あまりにもつまらないものは途中で視聴を止め、「ラッキー」だと思った。本末転倒って、こんなこと?

 ぼやけた頭で、『エッセンシャル・キリング』を見る。

アフガニスタンの荒涼とした大地。上空を米軍のヘリコプターが飛行し、地上ではアメリカ兵が偵察活動を行なっている。ムハンマドはひとり洞窟の影にひそんでいた。彼は手にもったバズーカでアメリカ兵を吹き飛ばす。逃げるムハンマド。追うヘリコプター。彼はヘリに攻撃され倒れる。爆音で一時的に聴力を失くしムハンマドは、米軍の捕虜となったが……。

 だそうです。とにかくギャロ(ムハンマド)が悪いことしながら雪山をひたすら、ほとんど無言で逃げ続ける話。ところどころ俺の記憶が抜けていて、でも画面には大した変化は無く、夏にはぴったりだと思った。疲れない映画だ、ラストはどうかなあと思ったが、それは、まあ、ムハンマドの人生なので、お幸せに。俺、ギャロのファンだし。

 ギャロが足の土踏まずの部分に死んでしまったペットのウサギのタトゥーを入れていることを知ってから、俺も飼っていた二匹の猫のことを思った。でも、何だか悲しくって、タトゥーをいれるなんて出来そうにない。誰かと共に生きるなんて、何だか、すごいことのような気がしてしまうのだけれど、

 なんて幼稚な感想を抱きつつ、家の中の値段がつく、未開封のガラクタを売り払う算段を始める。何かを売り払うのは、やはりそれなりに楽しい。こんな生活を続けるとは思っていなかったけれど、でも、気が付いたらこうなっていた。俺の持っている物で、一番高い物は胸に入れた棘十字のタトゥーになってしまった。

 ばかなはなし。でも、少し苦笑してしまって、まだ、大丈夫かなと思う。