ヒーローショー

 寝れない夜 聞き過ぎた曲が頭の中を濡らす
 人恋しくって 白い壁紙に目が慣れてしまう

 時計が回り星屑のように降る
 光の蛇口が閉められる

 こなーゆきーの人らも、初期はこんな「すきまかぜ」を歌っていて(youtubeに曲がなかった!)好きだった。青臭くって心地良い日本語ロック。代わりにこれも好きな曲、日めくりカレンダーを

http://www.youtube.com/watch?v=rNqSgvSdQ2g

 あーあー戻れない 破いてしまった日めくりカレンダー

 こなーゆきーがあまり好きではないのは、やはりロックって歌いあげたりしてはいけないと思うから。もっと言うと、歌唱力なんていらなくて、単純なリズムの繰り返しで「俺ってかっこいいだろ?」ってのが、ロック、ロックスターって感じがする。

 懐かしい曲ついでにもう一つ。くるりの青い空。青臭くって、好きだ。


http://www.youtube.com/watch?v=sCiqPxRjbj4

 伸ばした髪は 僕の目や耳を塞いでいる

 こんなことはいいたくないのさ 

 何かが違うと考える頭が真っ白に


 目が冴えてしまって、100円だったから買った「HERO英雄」を今更見る。十年近く前に映画館で見ようと思いながら見なかった映画。

 俺はアクション映画がどうも苦手で、感動する代わりに「よくできている」「よくできていない」ことばかり感じてしまうのだ。多分、小さい頃からずっとアクションとSF映画を見ていなかったせいかもしれない。嫌いではないし、たまに見たくなるのに、なんとなく白けてしまうのだ。


 でも、十年前のアクション映画ということを考えても、良く出来た映画だと思う。ちょっとやり過ぎな金かかってるこれを映像美と考えたりはしないけれど。でも、役者はやっぱり存在感のある、いい演技をしていたと思うし。しっかりとしていて、(本当は)文句のつけにくいきちんとした映画。

 配役の一人、トニー・レオンの名前を目にすると、反射的にレスリー・チャンの名前を連想してしまう。ウォン・カーワイの『ブエノスアイレス』のせいだと思う。

 自殺してしまったスター、というのにどうも惹かれてしまって、好きな人が長生きするのも素敵だと思うけれど、自死を選んだ(この「選択」に関しては誰にも分からないのだが)というのも、魅力的だと思う。

 マーロン・ブランドが年老いて、恋人と家にいるときに、テレビに彼の若い頃の映画が映った時、彼は恋人に「今すぐ消せ」と怒鳴ったそうだ。そして彼は、
「あの頃の俺は、本当に美しかったんだ」と言った、らしい。

 こんなゴシップは嘘でもいい。でも、彼のカッコよさは本物だ。一番好きな彼の映画は『波止場』で、彼にしては(やや)珍しく、ナイーブな不良役で、「本当に美しい」と思った。カッコいいならナイーブに傲慢に。カッコ悪いなら図太くそれなりに品性方向に。多分。って、単に俺の好みでしかないけど。

 調子に乗って、セルジュ&バーキンの映画「マドモアゼル a GO GO」を見る。ちょいダサオサレ馬鹿コメディ。というか、セルジュとバーキンの映画はそんな感じのばかりで、どれも好きだ。『スローガン』『ジュテーム・モヮ・ノン・プリュ』『硝子の墓標』。どこか間抜けで突っ込みどころがあるのに、でも、少し、胸に来る映画。

 ヒーローのことを考えると、何だか気分が少し良くなって、口ずさむ『ローマを見てから、死ね』


http://www.youtube.com/watch?v=FanvOLUuGec

 本当に小西プロデュースの夏木マリは好きだ。かっこよくって、とってもハッピーだ。夏木マリが、多分とてもエネルギッシュでハッピーで戦う女だからだと思う。

 俺は見失なったのか 汚れた街で
 愛も夢も今は虚しく ローマははるか遠く

 わずかの金貨で得た物は 孤独
 病みつかれたけらくの日々か
 ローマははるか遠く

 あとこの「かもめ」って曲も夏って感じで好きだ。数年前の夏、道に迷って、この曲を歌いながら車しか通っちゃいけない道のはじっこを歩いていたことを思い出す(その後巡回車?みたいなのに捕まって出口まで連れて行かれた)。

寺山修二、はよく知らないが、彼の作詞の『かもめ』

 おいらが愛した 女は 港町のあばずれ

 ドアを開けて着替えして 男の気を惹く浮気者

 かもめ かもめ 笑っておくれ

 http://www.youtube.com/watch?v=7uTh9Mf8jzg


 カッコいい人があばずれ、とか汚い言葉を言うのはとてもいいことだと思う。俺も、彼女の歌声を聴きながら口ずさんで歩くと、とてもいい気分になる。

「ローマを見てから、死ね」「かもめ、かもめ、笑っておくれ」


 大好きな多田由美の漫画の中で「私に汚い言葉を言って」という映画の題名が台詞の中に入っていて、すごくクールだった。(しかも、一応彼女は少女漫画家、ってことになっているのだし!)

「汚い言葉を言って」とか「もっとカッコつけて」とか、そういうので、色々とやっていきたいなと前向きなフリみたいな感じで。