きわめてよい風景

 最近夢を見ることが多い。夢の内容とか夢占いとかについて半信半疑ではあるが、眠りが浅い時に見るという科学的(らしい)なのは信じていて、オレが夢を見るときはたいていテンションがフワフワしている時。

 でも夢の中で明晰夢について説明しながらでもそれも目がさめて夢だと感じて、しかもさらにまた眠ってしまって、起きてしまったら夢の内容なんて曖昧な、だなんてマジで『フロイドと夜桜』みたいでくらくらする。





 夢から覚めても夢の 夢の中でまた夢の中

 さまようアタシは今日も

 コワイ夢やアマイ夢を見たの


 恋するバカなアタシは 

 ワルイ人がワルイ人が好きなの



  そんな状態で新宿によれば、新宿にはツタヤがあるわけで、ツタヤ今セールしているわけで、一気に十枚以上借りればポスト返却送料無料なわけで、また、十枚以上借りてしまいました…ほんに新宿は恐ろしい街ぜよ…凍狂(トウキョウ)は磁場が狂ってやがるんだ…。

 あーちなみにセールは日曜までだぜ! また借りに行けるぜわーい!

 こんなに買って、借りてしまってるのは、やっぱりちょっとよろしくないことでもあって、自覚はあっても、でもじっとしているよりもまだまし、だなんて気持ちでやりすごす日々、の中で友人と軽く飲む。

 オレとは真逆の体力自慢の、本なんてほぼよまないぜな友人だけれど、でものりがいいのは共通していて、マジノリが良くてなんぼだと思う。待ってるだけってさ、相手に誰かに何かしてもらおうとしてるってことじゃんか。リスクとか面倒臭いのを相手にさせた上で、それを確認してから自分も行動起こそうってことじゃんか。そんなのさ、みっともないよね。

 でも、いつでも元気にはいられない。いつでも元気とかいってられるのは相当自己評価が高い(自分を客観視できていない)人か、考えることを必要としない人だろう。

 でもまあ、元気な方が、アグレッシブな方がいいよねーってのは、おそらく多くの人に共通する意見だと思う。元気じゃない自分に浸っている人を除けば。

 オレは酒に酔わない、酔うほど強くないし、酩酊するほど相手に迷惑をかけたりしない(一人だと飲んでると寝てしまうが)。でも、ハブとか立ち飲みとかの雰囲気は結構好きだ。さっと飲んで、ちょこっとだらだらして、帰るみたいな。

 その友人は明るくて気さくな奴だけれど、今まで言ってこなかったけど、と言って、突然自分のことについて語りだした。ある場所でかなりの所まで上り詰めて、しかしもっと大きな舞台が用意された時に、他の出場者を見て「負けた」と確信してしまい、辞退することにして、そこからも完全に足を洗った。

「挑戦してなかったら、負けたって、決まったわけじゃ、ないじゃないですか」

 彼はそうはにかんだ。

 でも、それから、別の道でがむしゃらに働いて、それに応じた金を得て遊んでみてもすごく虚しかった、と言った。仕事も成果を残せても、転々として、何年もずっと、そのことに追われているって。

 こういう時にスポーツの、格闘技の残酷な一面があるなと思う。数字で年齢でばっさりと切られてしまう。努力でどうにかなるものでもないってことを目の当たりにさせられる。まあ、何でもそうではあるが、肉体の衰えという制約の中で、ルールに則りその世界のプレーヤーと渡り歩こうだなんて、真剣にそれに向き合っている人間なら無理だって確信するはずだ。

 彼はちょっと疲れて欲しかったのか、慰めて欲しかったのか、単にぽろっと口から出てしまったのか、まあ、それらが混ざり合っていたのだと思うが、オレは、彼にそういうのオレ好きだよ、かっこいいと思うよと言った。

 友人は半笑いで「いやあ、全然かっこよくないっすよー」と少し自嘲的な表情をしたけれど、でも、そういう挫折したって逃げてしまったって自覚があって、プライドがあるなら、まだやれることがあるって、そう思った。


 オレも、自分が「一番」になりたい、って思っていることを、でも、オレはスポーツの世界で生きているわけではないし、そんなものが、オレの望む色々なものが目指す前からもう閉ざされていることに身を切るような虚しさと寂しさを味わいながらも、でも、そういう人、モノらに恥ずかしくない自分でいたいなとは思うって。同じ世界もステージもなくったって、自分自身にかっこつけることはできるんじゃないかって。

 毎日が祝祭だなんて無理だし、お祭りだっていつか飽きちゃうし。でも、楽しい瞬間は多い方がいい。自分のことを「まあ、いいんじゃねえのかな」って思える瞬間は多いほうがいい。

そんなんで、その時たまたま読み終えた本を一冊友人にあげた。それが写真付きのエッセイで良かったと思った。せっかくだから楽しめたほうがいい。あいてに楽しんでもらえたら。そう思える相手との時間を大切にできたなら。

 
 色々話していたら、友人の心も多少はほぐれたみたいで、笑顔が戻ってきたように思えた。「(勿論お世辞で)釈迦みたいっすね。釈迦って呼んでいいっすか?」と笑って言われて、オレは「釈迦ってオレも好きだけど、国も妻子も捨てて自分のエゴにこだわったクズだよ」と教えてあげた。

 別れる時に、また会うのが楽しみだってお互いに思えていて、オレもパワーをもらえた。ありがとう。

 やっぱ、良くない時こそ人と会う。人の作ったものに触れるって大事だなーって思った。キツイ時って精神的肉体的時間的金銭的に難しくって、つい楽な、いつものことを繰り返してしまって、そういう瞬間ってやっぱりあって当然だけれど、やっぱり新しいことを、好きなことを考えているから、オレもまだふらふらできるって、そう思うから。

 かっこつけをろくでなしをものづくりを逃走を、ふと、一人で電車に乗っていると、鈴木清順の『夢二』に出ていた、中年になり線が少し崩れた、熟れた果実という言葉も似合う沢田研二の助平な演技が頭をよぎった。ああいうの、いいなって思う。まあ、オレとは全然似た感じではないけれど、かっこいいっすよね、ジュリー!

 現代でもかっこよくてやらしいバンド、そして物悲しいチップチューン



 http://www.youtube.com/watch?v=qq0eFMEIXXo

キノコホテル<ノイジー・ベイビー>Short Ver.

http://www.youtube.com/watch?v=S1-VyHIx_SY

Pokemon Silver/Gold/Crystal - Goldenrod City