ジルコニアをまとう、裸の王様

 最近色々あって、気分が落ちているけど、落ちっぱなしじゃあしゃあないってことで、なるべく外に目を向けるようにしている。落ちてる時ほど新しいことをするのって辛いけど、でも、やってかないと。後悔する人生とか生活は、やっぱ嫌だなと思う。

 先日電車で3dsでダウンロードしたゲームギアのソフトをしていたら、隣りに座った20代の外国の男の子がマジでずっとガン見してきたから、
「ゲームするの?」と聞いたら、「おーイエス!(俺が今プレイしているのは)ファイアーエムブレム?」とノリノリで答えてきて、「ノー! シャイニング・フォース!」と答えたが、多分知らないだろう、けど彼はpsvitaを取り出してきて、俺もテンション上がって!「オーヴィータ! 欲しい! すごい!」
と言えば彼は自撮り写メとかを保存したのを見せてくれて(外国人の人って、日本人にもまして自撮りと仲間で撮るのが好きだと思う)あと俺のゲームスロットに刺さっていたのをみつけて、

「おーう! あつめてカービィ!」とか言って驚いていて、外国人の口から「集めてカービィ」という可愛らしくてちょいマイナーなゲームの名前が出たのも面白いし、わいわい騒いでいたら、向かいのお姉さんたちが笑っていた。

 以前友人と電車で友達に「クマ食べる?」と聞いて、「クマ?」と聞き返されたので、「クマしらねーの? ハリボー!(ドイツのグミ)」と取り出したら、周りのお姉さんに爆笑されていたことを思い出した。

 でも、こういう阿呆な感じ、結構好きなんだ。

 その子とは乗り換えで別れて、ハイタッチをした。こういうフランクでノリいいのっていいなーと思う。てか日本人(から)でハイタッチする人とかいないから、ちょい戸惑うけどね。でも、ちょい元気もらたし、自分も誰かにそういうのできたらなって思う

 新宿のエプソンのギャラリーでヘンリー・ダーガーの部屋の写真が展示されていたので見に行く。小さな展示だし、内容だって、(同一ではないにせよ)本で見たことがあるのだが、でも、やっぱり見ると感慨深いものがある。

 掃除夫として一生を過ごし、死後に膨大な絵と物語が発見されたダーガー。彼は正当な教育をウケておらず、美術もトレスやコピーとかコラージュで作られていた。ペニスの生えた少女たちが大人と殺し合うという『非現実の王国で』という物語を、一人、50年も書き続けた。

 後年、大家には「自分のモノはすべて処分してくれ」と告げていたが、大家がそれを捨てるには忍びないものだと判断して、自国だけではなく、日本にまでその作品が届いているのだ。

 彼の部屋にある、『非現実の王国で』の断片、可愛らしい雑誌や大量の絵具、そして、神様の像。

 愚かしいジャンクの山のきらめき。

 その貧しくも、本人にとっては輝きのある風景は、どうしても自分と重ねてしまうというか、多くの創作者はこういうつぎはぎの、キメラの神話と共に暮らしていかねばならないのだと思う。いつでも王国の中で暮らすわけにも、自分に魔法をかけ続ける、明晰夢の中で生きるなんてむりだけれど、その愚かしさを、大切にするためには、やっぱり健康とか最低限のことをしっかりしなきゃなと思う。

 いつでも、愚かしい王国の、王様でいられるように。